■第19話 「届いた答え――偶然じゃ、もう誤魔化せない」
――違和感は、ずっとあった。
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「……」
放課後。
静かな図書室。
水瀬蒼葵は、一人で考えていた。
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「家族、ね……」
小さく呟く。
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確かに辻褄は合う。
距離が近い理由。
隠していた理由。
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「……でも」
ページをめくる手が止まる。
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「それだけじゃない」
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あの表情。
あの空気。
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「……あれは」
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“家族”じゃない。
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確信に近い違和感。
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「……なら」
立ち上がる。
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「証拠、取りに行く」
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――決めた。
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その頃。
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「ねえ神谷くん」
教室。
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「……七瀬」
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「今日さ」
笑う。
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「空いてる?」
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「……」
嫌な予感しかしない。
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「最後のデート」
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「は?」
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「これで決める」
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――また来た。
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「……断る」
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「ダメ」
即答。
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「今回は絶対」
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「……」
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「逃げないで」
真っ直ぐな目。
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「……」
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断れない。
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「……分かった」
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「やった」
嬉しそうに笑う。
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でも。
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その裏にあるのは――
覚悟。
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一方。
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夕方。
白瀬家。
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「……伊織くん、今日帰り遅いの?」
舞衣が聞く。
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「……ああ」
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「……七瀬?」
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「……」
図星。
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「……そう」
少しだけ間が空く。
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「……行っていいよ」
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「……」
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「その代わり」
一歩近づく。
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「ちゃんと帰ってきて」
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「……当たり前だろ」
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「……うん」
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その言葉が、妙に重い。
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そして――
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夜。
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駅前。
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「……来たね」
七瀬が立っていた。
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「……」
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「今日はさ」
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「……」
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「全部、決めるから」
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覚悟の顔。
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一方その頃。
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蒼葵は――
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白瀬家の前にいた。
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「……ここ」
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調べた。
住所。
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「……ほんとに来ちゃった」
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でも。
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「……これで分かる」
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呼吸を整える。
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「……」
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その時。
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ガチャ。
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扉が開く音。
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「……」
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中から出てきたのは――
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白瀬舞衣。
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「……え?」
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蒼葵と目が合う。
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数秒。
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「……水瀬さん?」
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「……白瀬さん」
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沈黙。
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逃げ場なし。
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「……どうしてここに」
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「……」
言えない。
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でも。
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視線が動く。
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家の中へ。
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そこに――
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見えた。
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玄関。
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靴。
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二人分じゃない。
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“生活している数”。
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そして。
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壁にかかっていた――
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写真立て。
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そこに写っていたのは。
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――二人。
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距離が近い。
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あまりにも自然な距離。
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“家族写真”以上の何か。
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「……」
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理解した。
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「……そういうこと」
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小さく呟く。
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「……違う」
舞衣が言う。
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「違わない」
蒼葵が遮る。
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「……もう分かった」
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顔を上げる。
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その目は――
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完全に“確信”していた。
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「……あなたたち」
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一歩前へ。
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「ただの家族じゃない」
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――終わった。
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同時刻。
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「ねえ」
七瀬が言う。
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「最後に聞く」
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「……」
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「私と、あの人」
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「どっち選ぶの?」
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――究極の二択。
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そして。
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二つの場所で、
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同時に。
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“真実”が、暴かれようとしていた。
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もう、誤魔化せない。
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もう、戻れない。
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秘密は――
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限界を迎えた。
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