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■第18話 「消すのは真実じゃない――“見せ方”を変えるだけ」


 ――戦いは、もう始まっていた。



 夜。


 白瀬家のリビング。


「……来たわね」


 近藤絵莉が腕を組んで立っていた。



「……すみません」


 舞衣が頭を下げる。


「謝るのは後」


 即答。


「今は対処が先」



「……これ」


 絵莉がタブレットを見せる。


 画面には――


 あの写真。


 そして。


「“国民的女優・白瀬舞衣、謎の同年代男性と親密写真”」


 見出し。



「……っ」


 息が詰まる。



「まだ小さいサイトだけど」


 絵莉が言う。


「時間の問題で拡散する」



「……どうするんだ」


 俺が聞く。



「消す」


 即答。



「……そんな簡単に?」



「簡単じゃない」


 冷静に言う。


「でもやるのが仕事」



「まず」


 指を立てる。


「元を潰す」



「元?」



「最初に上げたアカウント」


 画面を操作する。


「これ」



「……一般人?」



「いいえ」


 首を振る。



「半分プロ」



「……は?」



「こういう“リーク屋”はいるの」


 淡々と説明する。


「小さいネタを流して、拡散狙う人間」



「……」


 怖い世界だ。



「でも」


 絵莉が笑う。


「こっちも慣れてる」



「今、事務所が動いてる」



「……」



「アカウントは削除される」



「……マジかよ」



「それだけじゃない」


 さらに続ける。



「次に」


 指を二本立てる。



「“別の話題”をぶつける」



「……は?」



「注目を逸らすの」



 タブレットを見せる。



「明日」



「舞衣の新作映画、情報解禁」



「……」



「大きい話題を被せる」



「そうすれば?」



「小さいスキャンダルは埋もれる」



 ――なるほど。



「……すげえな」



「これが仕事」


 あっさり言う。



「でも」


 表情が少しだけ変わる。



「一番大事なのはここから」



「……?」



「あなた」


 俺を見る。



「……俺?」



「もう外歩くとき、気をつけて」



「……」



「次撮られたら終わり」



 ――重い。



「……分かった」



「あと」


 絵莉が舞衣を見る。



「距離」



「……」



「今まで以上に気をつけて」



「……はい」



 ――“夫婦なのに距離を取る”。



 それが現実。



 その夜。



「……大丈夫なのか」


 部屋。


 二人きり。



「……多分」


 舞衣が答える。



「多分って」



「絶対じゃない」


 正直な答え。



「……」



「でも」


 少しだけ笑う。



「やるしかないでしょ」



「……ああ」



「ねえ」



「なんだ」



「怖い?」



「……」


 一瞬、考える。



「……正直」



「うん」



「めちゃくちゃ怖い」



「……そっか」



「でも」


 続ける。



「離れる方が無理だ」



「……」



 舞衣が少しだけ目を細める。



「……同じ」



 小さく呟く。



「……なら」



 一歩近づく。



「一緒に耐えよ」



「……ああ」



 その距離は、


 近いのに――遠い。



 触れられない。



 でも。



 確かに“隣”にいる。



 翌日。



「……消えてる」


 教室。



 和真がスマホを見ながら言う。



「例の記事」



「……ほんとか」



「ああ」



「完全に消えた」



 ――早すぎる。



「……すげえな芸能界」



「だな」



 でも。



「……これで終わりじゃない」



 和真が言う。



「……ああ」



「次はもっとでかいの来るぞ」



 その通りだった。



 一方。



「……なるほどね」


 スマホを見ながら呟くのは――



 城之内弥生。



「綺麗に消した」



「さすが」


 柚莉愛も言う。



「でも」



「逆に怪しい」



 二人が笑う。



「……次は」



 弥生の目が鋭くなる。



「もっと決定的なの、欲しいわね」



 ――終わっていない。



 火は消えた。



 でも。



 火種は、確実に残っている。



 そして――



 それを狙う者たちも。




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