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■第16話 「写された現実――“ただの家族”では済まされない距離」


 ――それは、何気ない一枚だった。



 翌朝。


「ねえ見た?」


「やばくない?」


「これ、誰?」


 教室がざわついている。



「……何だよ」


 席に着いた瞬間、視線が集まる。


 嫌な予感しかしない。



「神谷」


 和真が低い声で言う。


「……ちょっと来い」


「……ああ」



 廊下。


 人目を避けて。



「これ」


 スマホを差し出される。


「……」


 画面を見る。



 ――凍りついた。



 そこに写っていたのは、


 俺と――舞衣。



 夜。


 家の前。


 距離が近い。


 あまりにも近すぎる。



「……なんだこれ」


 声が震える。



「ネットに上がってる」


 和真が言う。


「小さいまとめサイトだけどな」



「……」


 最悪だ。


 完全に。



「……これ」


 和真が続ける。


「“義理の姉弟”って情報と一緒に出てる」



「……は?」



「誰かが調べてる」


 真顔で言う。


「しかも中途半端に当たってる」



 ――終わる。



「……誰だよ」


「分からん」


「でも」


 一歩近づく。


「時間の問題だ」



「……」


 頭が真っ白になる。



「伊織」


「……」


「まだ拡散は小さい」


「……」


「今ならギリ止められる」



「……どうやって」


「それは――」



 その時。


「神谷くん」


 声。


 振り向く。



 西宮七瀬。



「……見たよ」


 スマホを見せてくる。


 同じ画像。



「……」


「これさ」


 一歩近づく。


「“家族”で済む距離じゃないよね?」


 ――核心。



「……」


 言葉が出ない。



「ねえ」


 さらに詰める。


「これがバレたらどうなるか、分かってる?」


「……」


「終わるよ?」


 静かな声。



「……」


 分かってる。


 全部。



「ねえ神谷くん」


 七瀬が言う。


「今ならまだ間に合う」


「……何が」



「私と付き合って」


 ――は?



「は?」


 和真も同時に声を出す。



「カモフラージュ」


 真顔で言う。


「私が彼女ってことにすれば」


「……」


「この写真も誤魔化せる」



「……ふざけんな」


 即答。



「ふざけてない」


 七瀬は真剣だった。


「本気」



「……」


「だってさ」


 小さく笑う。


「守りたいんでしょ?」


 ――図星。



「……」


 言葉が詰まる。



「なら」


 さらに近づく。


「私使いなよ」


 ――危険すぎる提案。



 その時。


「……それはダメ」


 静かな声。



 振り向く。



 白瀬舞衣。



「……」


 空気が変わる。



「……なんで」


 七瀬が言う。



「それじゃ意味ない」


 舞衣は言う。


「嘘を重ねるだけ」



「でも守れるでしょ?」


「守れない」


 即答。



「……」


「それは」


 一歩前に出る。


「関係を壊す」



「……」


 七瀬が黙る。



「……ねえ」


 舞衣が言う。


「これ以上、巻き込まないで」


 ――珍しく強い。



「……ふーん」


 七瀬が小さく笑う。


「やっぱりね」



「……何が」



「本気じゃん」


 舞衣を見る。


「完全に」



「……」


 否定しない。



「……ねえ伊織」


 和真が小さく言う。


「時間ねえぞ」


「……」



 その時。


「……やっぱり来たか」


 低い声。



 振り向く。



 城之内弥生。


 そして――


 清水柚莉愛。



「……見た?」


 柚莉愛がスマホを見せる。


 同じ画像。



「これ」


 一歩近づく。


「完全にアウト一歩手前」



「……」



「ねえ舞衣」


 弥生が言う。


「どうするの?」


 冷静な声。



「このままだと」


 一拍。



「あなた、終わるよ」



 ――芸能界の現実。



「……」


 舞衣は黙る。



「選びなさい」


 弥生が言う。



「隠すか」



「切るか」



 ――残酷な二択。



 空気が止まる。



「……」


 舞衣はゆっくりと、


 俺の方を見る。



「……」


 目が合う。



 その中にあったのは――


 迷い。


 覚悟。


 そして。



 “選択”。



 ――すべてが、崩れ始めていた。




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