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■第15話 「守るための告白――それでも、壊したくないから」


 ――もう、限界だった。



 旧校舎の教室。


 全員が揃っている。


 蒼葵、七瀬、弥生、柚莉愛。


 そして――和真。



「……もういいでしょ」


 七瀬が言う。


「ここまで来て隠す意味ある?」


「……」


 返せない。



「ねえ」


 蒼葵が一歩前に出る。


「さっき言ったよね」


「……」


「“関係ある”って」


 逃げ場はない。



「じゃあ何?」


 七瀬が続ける。


「恋人?」


「……それとも」


 柚莉愛が笑う。


「もっと面白い関係?」



「……」


 沈黙。


 空気が重すぎる。



 その時。


「……言う」


 静かな声。



 白瀬舞衣。



「……おい」


 思わず止める。


「やめろ」


「大丈夫」


 小さく言う。


「全部は言わない」


「……」


「でも」


 真っ直ぐ前を見る。


「これ以上、疑われるのは嫌」


 ――覚悟。



「……聞かせて」


 蒼葵が言う。



「……私たち」


 一拍。


 そして――



「家族なの」



 ――空気が止まる。



「……は?」


 七瀬が固まる。


「家族?」



「……親が再婚したの」


 舞衣は続ける。


「最近」


 嘘じゃない。


 でも――全部じゃない。



「だから」


 視線を落として、


「一緒にいることが多い」



「……」


 蒼葵が黙る。


 考えている。



「……それって」


 和真が口を開く。


「義理の……」


「うん」


 舞衣が頷く。



「……はあ!?」


 七瀬が声を上げる。


「そんなの聞いてない!」


「言ってないから」


 当然の返し。



「……なるほど」


 蒼葵が小さく呟く。


「だから距離が近いんだ」


 納得しかけている。



「でも」


 七瀬が言う。


「それだけ?」


 鋭い。



「……それだけ」


 舞衣は言い切る。



 ――ギリギリのライン。



「……」


 沈黙。


 数秒。



「……まあ」


 和真が息を吐く。


「納得はできる」


 その一言で、空気が少し緩む。



「え、ちょっと待ってよ」


 七瀬が食い下がる。


「それだけであんな顔する?」


「どんな顔」


 舞衣が返す。


「……」


 言葉に詰まる。



「……まあいいや」


 七瀬が肩をすくめる。


「とりあえずはね」


 完全には信じていない。



「……」


 蒼葵も同じだった。


「……一応、理解はした」


 でも。


「まだ何かあるよね」


 見抜いている。



「……」


 答えない。


 それが答え。



「ふふ」


 弥生が笑う。


「上手いわね」


 小さく拍手する。


「全部は言ってない顔」


 ――見抜かれてる。



「でもいい」


 柚莉愛も言う。


「とりあえず筋は通った」



「じゃあ今日はここまで」


 弥生が言う。


「また観察させてもらうわ」


 不穏すぎる。



 全員が少しずつ解散していく。



 残ったのは――


 俺と、和真。



「……なあ」


 和真が言う。


「今の」


「……」


「全部じゃねえよな」


 ――核心。



「……ああ」


 否定しない。



「だよな」


 小さく笑う。



「……なんで分かるんだよ」


「分かるわ」


 即答。


「お前の顔見てりゃ」



「……」


 沈黙。



「なあ伊織」


 少しだけ真剣な声になる。


「これ、やばい状況だぞ」


「……分かってる」


「学校も」


「……」


「芸能界も」


 全部見えてる。



「……それでも隠すんだろ?」


「……ああ」



「……そうか」


 少しだけ間を置いて、


「じゃあ俺も決める」



「……何を」



「味方になる」



 ――一瞬、言葉が止まる。



「……は?」


「だから」


 軽く言う。


「お前の味方」



「……いいのかよ」


「よくねえよ」


 即答。


「めんどくせえし」



「じゃあなんで」



「親友だからだろ」


 それだけ。



「……」


 胸が熱くなる。



「でもな」


 和真が続ける。


「一つ条件」


「……何だよ」



「絶対、後悔すんな」


 真っ直ぐな目。



「……」


 その言葉に。


 迷いはなかった。



「……しない」



「ならいい」


 軽く笑う。


「最後まで付き合ってやるよ」



 ――味方ができた。



 完全な孤立じゃない。



 でも。


 それでも。



 蒼葵は疑い続ける。


 七瀬は奪いに来る。


 弥生は見抜こうとする。


 柚莉愛は内側から崩す。



 そして――


 秘密は、まだ“半分”しか守れていない。



 それでも俺たちは、


 この関係を守ると決めた。



 ――どんな代償を払ってでも。




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