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■第13話 「観察開始――女優と親友、内と外からの包囲網」


 ――終わった。


 そう思ったのは、朝の校門をくぐった瞬間だった。



「ねえ、あれってさ……」


「え、マジで?」


 ざわつき。


 明らかにいつもと違う空気。


「……なんだ?」


 嫌な予感しかしない。



 その原因は――


「おはよう」


 校門の前に立っていた。


 明らかに場違いな存在。


 圧倒的なオーラ。



 城之内弥生。



「……は?」


 思わず声が漏れる。


「なんでいるんだよ……」


「観察」


 即答。


「昨日言ったでしょ?」


 笑っているのに、目が笑ってない。



「え、誰あれ!?」

「女優じゃない!?」

「やば……本物……」


 周囲が一気に騒ぎ出す。



「神谷くん」


 弥生が手を振る。


「……」


 終わった。


 完全に。



「なんで呼ぶんだよ!」


「だって対象だもの」


「対象にするな!」


「面白いし」


 軽い。


 けど中身は重い。



「……伊織」


 横から声。


「……蒼葵」


 最悪のタイミング。


「何これ」


 弥生を見る。


「説明して」


「……できない」


「でた、それ」


 完全に呆れている。



「へえ」


 弥生が蒼葵を見る。


「この子が幼馴染?」


「……誰?」


 蒼葵が警戒する。



「城之内弥生」


 さらっと名乗る。


「……え?」


「……は?」


 蒼葵、フリーズ。



「嘘でしょ」


「本物?」


 ざわつきがさらに広がる。



「ちょっと伊織」


 蒼葵が小声で詰め寄る。


「どういうこと!?」


「だから言えないって……!」


「いやもう言えよ!」


 正論。



「ねえ」


 弥生が割って入る。


「あなた、いい目してる」


「は?」


「観察対象として」


 ――敵認定。



 その時。


「神谷くん」


 また声。


「……七瀬」


「何その状況」


 完全に修羅場。



「ねえ」


 七瀬が弥生を見る。


「この人、何?」


「観察者」


「意味分かんない」


「でしょ?」


 会話が成立していない。



 さらに。


「……伊織」


 静かな声。


 振り向く。



 白瀬舞衣。



「……」


 完全に終わった。


 全員集合。



「……すごいね」


 弥生が笑う。


「全員揃った」


「やめろその言い方!」



 空気が張り詰める。


 完全に“戦場”。



 その時。


「ちょっとちょっと〜」


 明るい声。


 場違いなほど軽いトーン。



「……あ」


 舞衣が小さく反応する。



「久しぶり、舞衣」


 現れたのは――


 清水柚莉愛。



「……柚莉愛」


「会いに来ちゃった」


 にこっと笑う。


 でも。


 その目は――鋭い。



「え、また増えた!?」

「誰!?」

「芸能人多すぎだろこの学校!」


 もう収拾がつかない。



「で?」


 柚莉愛が周囲を見て、


「何この状況」


 そして。


 俺を見る。



「……へえ」


 一瞬で、空気が変わる。



「この子?」


 舞衣に聞く。


「……」


 舞衣が黙る。


 それだけで。



「なるほどね」


 柚莉愛が笑う。


「分かりやす」



「ちょっと待て」


 俺が口を挟む。


「何が分かるんだよ」


「全部」


 即答。


「顔に出てる」


 ――終わった。



「ねえ舞衣」


 柚莉愛が近づく。


「珍しいね」


「……何が」


「そんな顔するの」


 じっと見つめる。


「完全に“女の顔”」


 ――空気が凍る。



「……」


 誰も言葉を出せない。



「ねえ神谷くん」


 今度は俺に。


「だっけ?」


「……」


「あなた」


 一歩近づく。


「何したの?」


 ――怖い。



「してねえよ!」


「へえ?」


 疑いの目。



「ふふ」


 弥生が横で笑う。


「やっぱり面白い」


「だから観察って言ってんでしょ」


 柚莉愛も笑う。


 ――最悪のコンビ。



「……伊織」


 蒼葵が小さく言う。


「これ」


「……ああ」


「もう無理じゃない?」


 正論すぎる。



「ねえ」


 七瀬が一歩前に出る。


「もうさ」


「……」


「全部言えば?」


 ――核心。



「……」


 沈黙。


 完全に詰み。



 その時。


「……ダメ」


 舞衣が言う。


 小さく。


 でもはっきり。



「……え?」


 全員が見る。



「言わない」


 真っ直ぐに言う。


「何があっても」


 その一言に。


 覚悟が乗っていた。



「……へえ」


 弥生が笑う。


「そこまで?」


「うん」


 即答。



「面白い」


 完全にスイッチが入った。



「いいよ」


 柚莉愛も言う。


「じゃあ暴く側に回る」


 ――内側の崩壊確定。



 蒼葵。


 七瀬。


 弥生。


 柚莉愛。



 四方向からの包囲。



 そして俺は、


 その中心に立たされていた。



 ――もう、逃げ場はない。




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