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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第三部

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蹂躙の港

挿絵(By みてみん)




■ 伝令


街道の遠くから馬が駆けて来てくる。


乗っている兵士らしき人物は、滑り落ちそうになりながら必死に手綱を握る。

よく見れば身体中に傷があり、肩には矢が刺さっていた。


兵の格好から、イストリアの兵であることがわかる。

味方の兵で間違いなかった。


城門の衛兵が止まれと声を掛けるが、城門の手前で乗っていた兵士がドサっと落ちる。


「おい、しっかりしろ!」


落ちた兵士へ駆け寄る衛兵。


「ソ、ソルに敵襲が……」


そこまで伝えると、兵士は気を失った。


「なに、それは本当か!?」


伝令の兵士を揺さぶるが、よほどの疲労と安心からなのか目覚めることはなかった。


「まだ息はあるな、すぐに治療の手配と陛下への報告をせねば」


伝令を抱き起し、衛兵が慌ただしく動き出した。


■ 緊急軍議


「これより緊急の軍議を開催する。陛下に代わり、このワンジャンスが議事進行を仰せつかっております。まずは、伝令の持ち帰った情報をみなに共有をするように。エイホリック将軍、そなたから説明を頼む」


こほん、そう咳払いをすると、やや太り気味の男が立ち上がる。


「では、このエイホリックより共有しますかな。えー、まず伝令は、ソルの衛兵でありました。なんでも、ソルが海賊の襲撃を受け、かなりの部分を占拠されているとのことであります」


そこまで説明すると、エイホリックは皆を見回した。


「住民への被害は不明ですが、ある程度の住民は避難をしているようです。ただ、占拠されていることも事実でありますが、ご存じの通り我らの隣国には敵はおらず、ソルには駐屯している兵力もございません」


そこまで語ると、会議室にざわめきが広がる。


「静粛に、なるほど。では現状の詳細は掴めておらぬ状況でよろしいか?」


ワンジャンスの問いにエイホリックが頷いた。


「はい、その通りでございます。そこで、このような時こそ、アサギリ隊にお願いしたいのですがな」


フンと鼻を鳴らしながら、エイホリックが和田を見る。


「ワダ殿、いかがですかな。アサギリ隊を動かせますか?」


ワンジャンスはエイホリックとは違い、目に願いが滲み出ている。


「ご存じの通り、朝霧隊は対ウェスガルガンの諜報活動中ですので、今すぐの出動は難しい状況です」


そう言って和田が困ったと、外山に視線を向ける。


(外山:和田っち、大丈夫まかせるでやんす)


外山からアポーツ通信が飛んできた。

耳に掛けてあるアポーツデバイスがチリリと反応する。


和田の頭に声が響く、これは豊明と外山が研究の末に発見した、アポーツを魔石に封印し、声をやり取りする技術だ。


また、同時に頭の隅に字幕も表示され、誰からの通信かの識別もできる。


現代の日本人なら、トランシーバー+チャットのようなシステムと理解できるはずだ。


ただ、頭の中で響くような感覚なので、声に出さずして使うことができる。


使い方は、単純に届けたい人物へ向けて話すだけだ。

アポーツの特性上、知っている人物同士でなければこの通信は成立しない。


悪ノリが過ぎる豊明と外山によって、アポーツデバイスはイヤホンのような外見に造形されていた。


「ですが、緊急時です。至急手配をしまして、状況の判明にご協力しましょう」


おお、と安堵の声が上がる中、独り椅子を蹴り倒さんばかりの勢いで立ち上がる人物があった。


「小僧、そんなチンタラしてないで、ソルに俺をアポーツで送れば終わるだろうさ」


バストールが勢いよく机を叩く。


「バストール殿、親衛隊が動くような場面ではございません!」


やれやれと、ワンジャンスがバストールを窘める。


── 大賢者が目覚め、軍の顧問としての関与から三年の月日が経過していた


軍の再編の中で、以下の編成が行われていたのだった。


近衛騎士兵団長に和田が就任した。

副団長には長野が就任し、隠密索敵の朝霧隊・隊長兼任だ。


親衛隊は隊長バストールで、王の警護に当たる。


後方支援部隊統括は豊明が就任し、同じく部門の魔道部隊・隊長 外山、回復部隊・隊長 増山が就任した。


そして、遊撃隊・隊長は葉山だ。


大きく軍に関与することになった和田達だが、今ま対ウェスガルガン対策に奔走していたのだった。


偉そうにふんぞり返る小太りの将軍がエイホリック。


エイホリックはイストリア軍の総勢三万を統括する将軍であった。


この人事には賛否があるのだが、平和で弱小であったころより軍に従事してきたエイホリックの能力を疑問視する声が多くあった。


だが、悩んだ末に国王は今までの功績を重んじ、軍の拡大後もエイホリック続投を決定した。


表立って誰も何も言わないが、エイホリックの評判はどちらかというと”無能な将軍”という噂も聞かれるほどだった。


(豊明:和田くん…)

(和田:豊明さん、どうしました?)


(豊明:ダハハハ、面倒なことになったんですぞ。ここは葉山君を送れば良いかと。朝霧隊を動かすことには反対しますぞ)


(和田:豊明さん、了解です。オーバー)


無線のルールみたいに、終了はオーバーで完了した。


「では、さっそく遊撃隊を出します。その結果もすぐわかりますので、その結果次第で朝霧隊の投入を決めたい。それでよろしいでしょうか?」


和田がワンジャンスとエイホリック両方へ同意を取るように頷いた。


「もちろんです、今はいち早く情報が欲しい、すぐにお願いできますかな? エイホリック将軍も、異存はございませんかな?」


ワンジャンスが立ち上がり、和田に一礼し、エイホリックにも同意を取った。


「ふん、まあそうですな。ただし、すぐに確認していただきたい」


不服そうにエイホリックが渋々同意する。


挿絵(By みてみん)


「では、我々は今すぐに実行に移ります。失礼します」


和田に続いて、豊明、外山、増山、そして葉山が退室して拠点へと向かった。


■ 近衛騎士兵団拠点


「メタボリックがうるさいのにゃ!」


「エイホリック、な」


怒り狂う葉山に、和田がいつもの事だと無表情で突っ込む。


「和田君、多分これはウェスガルガンの揺さぶりなんですぞ」


「まあ、そうでしょうね。今サウドレシグを通って軍を動かせないから、海路で来るしかないから、海賊を装うしかないですよね……」


イストリアの軍事面はかなり貧弱だ。

もともと平和主義を公言していたこともあり、形程度の軍しかいなかったのだ。


そこにきて、ウェスガルガンの宣戦布告があり、大慌てで整備に入ったのだった。


「タク、遊撃隊をソルへ動かして欲しい」


「了解でやんす」


さっそくアポーツの準備を開始する外山。

遊撃隊を葉山と配下含め移送する予定だった。


「葉山、お前らだけで問題ないか?」


「海賊にゃん? 僕らだけでも制圧もできそうだけど…」


和田の問いに、葉山は簡単だと言わんばかりだ。


「いいか、くれぐれも偵察を優先だ。勝手に手を出すなよ? 必ず結果をこちらに返すこと!」


「はいはいはーい」


和田の注意もどこ吹く風で、隊長となった今も、葉山は変わらず軽かった。


近衛騎士兵団の拠点は、城門の一角の砦を割り当てられおり、数百人は居住できる広さがある。


城門の上にもスペースがあり、そこに葉山と配下がテイムしたマッドライノにまたがり、勢ぞろいしている。


「タクにゃん、早くしてー」


「小生、タクシーじゃないでやんすがね……」


ぶつぶつと呟きながら、外山がアポーツの準備をしている。


遊撃隊を囲むように、アポーツリングを装着する。


これも豊明と外山で開発した、伸縮自在な魔法のゴムのようなもので、アポーツが二回分記憶される。


外山がいなくてもアポーツが可能となる画期的な技術だった。


「よし、これでいいでOK。好きな時に行けるでやんす!」

「よーし、みんな行くにゃ!」


アポーツリングが光り輝き、ブーンと低い音が唸る。


── チリチリ


挿絵(By みてみん)


空気が震えると、葉山達遊撃隊が消失した。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n8527mg/

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