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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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侵略の兆し

挿絵(By みてみん)






■ 真実


「俺らが来ることを知ってるなら、何を聞きたいかもわかるよな?」


ウェスの目をみつめ、和田が静かに言う。


「そうだね、もちろんなんだけどね。どうしようかな」


ウェスの態度は煮え切らない。


「大賢者さんだよ、お前との間に何かあったんだよな? 話してくれよ」


和田がウェスの肩を掴み、目を覗き込む。


「うーん、仕方ないね。言うなって口止めされたんだけどね」


ウェスはまだ何か言いたそうだが、意を決したように話し出した。


「わかったよ、じゃあ話すよ」


ウェスが渋々話し出した。


ハルアットが暗殺の刃に倒れたあの日、邪悪な毒の影響もあり意識が失われた。


ウェスにとって、ハルアットは大事な物語の主要人物であり、その周囲の仲間も同様だった。


直接ウェスからの介入はできないが、ハルアットの意識が肉体から離れたタイミングで、ウェスが接触したという。


ウェスはこれから起こることを、ハルアットに伝える。

ハルアットすらも予測できない未来を。


このままでは、恐らくバストールも命を落とし、異世界からやってきた和田達の仲間も無事ではない未来があることを伝える。


『ウェス様、ワシにどうしろと?』


ハルアットがウェスに尋ねる。

この時は黒いウェスの力が強く、白いウェスはできることが少なかった。


ウェスができることをハルアットに提案したという。


ハルアットの残りの時間と、一部の記憶との引き換えに、バストールと和田達を救うことができる、と。


『なんじゃ、そんなことでよいのですかな? この老いぼれは、もう三百年の前に、この命は捧げておりますれば。好きにしてくだされ』


ハルアットは即答したのだった。

ただ、このままハルアットがいなくなれば、導き手がいなくなる。


エルダードラゴンも、黒死教との決着も、ハルアットの存在は不可欠だった。

なので、ワーラットへ魂を移送した。


「ハルアットさんには、くれぐれも言うな、特にバストールには絶対、そう言われたんだけどね。どうしようかな」


ウェスは本当に困った顔をしていた。


■ 怒りのバストール


── ダン!


挿絵(By みてみん)


「ふざけんな!」


バストールが机を叩いてウェスのほうへ身を乗り出す。


「どいつもこいつも、全く死に急ぎやがってよ。最後まで俺に残れってか!」


バストールのこめかみには血管が浮き、顔を真っ赤にして怒鳴る。


「まあまあ、バストールさん、落ち着いてよ」


ウェスがとりなすが、バストールはウェスに掴みかかるような勢いだ。


「取り消せ! というかな。俺はエルダードラゴンに呪いを解呪されたんだよな? なら、本来の俺の寿命がまだ残ってるよな? 百五十年はよ」


ウェスがちょっと考え込む。


「そうだね。呪いがかかったときが五十歳くらいだった? なら、ドワーフならそのくらい行けそうだね」


「なら、取り消せよ。俺の寿命をくれてやるから、ハルアットを戻せ」


バストールの勢いに押されたウェスだが、落ち着いて答える。


「ややこしいなぁ。だって、ハルアットさんのおかげでエルダードラゴンに解呪してもらったんだよ? なのに、それで得た命を使うから取り消せって……」


「あ? そんなもん、寿命は寿命だろう? 何が違うんだ? 百五十年分くれてやるって言ってるんだ!」


少しウェスが考え込む。


「はあ、もういいよ。わかった! ここまで来たら仕方ないよね。それにハルアットさんいないと困るしね。じゃあ、いいよ。今回特別だよ?」


ウェスの答えに、ふんとドヤ顔のバストール。


「ただね、そうなると確実に約束してもらわないとね」


ウェスが一同を見回す。


「すべてが終わったその時には、ぼくを消滅させて欲しいんだ」


みんなが、びっくりしてウェスを見る。


「もう、この世界にぼくの物語なんて必要ないんだ。あ、ぼくだけじゃないよ、黒いほうもね」


誰も何も言えなかった。


「もう、この世界の人たちは自分たちでなんでもできるはずなんだ。どうしてぼくがここに来たのか、何のためにいるのかそれはわからない。でもやらなきゃいけないことが頭に入ってくる。それがもうなくなってきたんだよ」


そこでウェスが和田を見つめる。


「つまり、もう役目は終わったんだと思う。それに、もうぼくは飽きちゃったよ」


ウェスの告白に、返す言葉が見つからない。


「そんなことできるのか? 俺たちに?」


和田がようやくそれだけ答える。


「そうだね、やってもらわないと困るね。でも、きっとその時はもっと先になるかな。それまで覚悟決めてよろしく頼むよ」


簡単なことだからとでも言うようにウェスが笑う。


── パチン


またウェスが指を鳴らすと、全員の目の前が暗くなった。


■ 凶報


「え、どういうことなんだ?」


── ドサッ


ウェスが話し終えた直後、和田が気が付くと拠点に戻っていた。

外山がソファーで寝ている。


みんなも同じような状況で、キョロキョロしている。

ウェスが全員をもとに戻したのだろう。


「しかし、なんだか途方もないことになってきたな」


和田がつぶやく。


「和田くん、もうここまで来たら突き進むだけですぞ!」

「豊明さんはブレないっすね」


豊明の言葉に、和田も苦笑する。


「俺はちょっとハルアットのところに行ってくるぞ」


バストールは拠点を出ていった。

ウェスがハルアットを戻すことを約束したが、具体的にいつなのかわからない。


「ワダア様、いらっしゃいますか!」


扉の外から呼びかけがあったので、長野が扉を開ける。


「よかった、お戻りのようですね。何回も確認しておりました。緊急にご相談したいことがあるので冒険者ギルドまでお越しいただきたいのです」


── 緊急の呼び出しとのことで冒険者ギルドへ向かう


「緊急ゆえ、単刀直入に用件からお伝えします。実は……」


冒険者ギルドで待ち受けていたロンギスタンが語る。

ウェスガルガンからの宣言が届けられたというのだった。


その宣言の内容というのは、ウェスガルガンはグウォール大陸全土へ向けての宣戦布告を発令するとともに、各国への降伏も勧告するというのだった。


「ウェスガルガンがついに侵略を始めるようですな」


苦虫を嚙み潰したようなロンギスタン。


挿絵(By みてみん)


「イストリアは直接国境を接してないが、この大陸では一番弱い位置づけなんだよな?」


和田がロンギスタンに確認する。


「はい、わが国は新興国であり、国力も他国に比べかなり貧弱といえます」

「何か具体的な動きはあったのかな?」


ロンギスタンの答えに、和田がウェスガルガンの動向を確認する。


「動きは掴めていません。ただ、サウドレシグとの国境付近で不穏な動きが確認されています」


そこまで話すと、ロンギスタンが和田に向き直る。


「戻って早々で申し訳ありませんが、サウドレシグとウェスガルガンの国境付近の調査をお願いできませんか? 迅速に確認ができるのは、レッドアイのみなさんしかいないのです」


和田はロンギスタンに頷く。


「今はちょっと回復できてないメンバーがいるので、明日には出発できるかと」


外山がまだ意識を回復していないので、迅速に動くならアポーツが外せない。


「わかりました。この件は国王直々に仰せつかっております。準備含め私も協力致します。どうかよろしくお願いいたします」


── いっぽうハルアットを訪ねるバストール


ハルアットは顔色も変わらず、定期的に胸も上下している。

いつでも起きそうな状況に見える。


(ハルアットめ、全くこいつはいつもいつも、俺に黙ってなんでも決めやがって……)


しばらくハルアットを見つめているが、まだ目覚めることはないようだ。


── ピクッ


その時、わずかにハルアットの手が動いた。


「おい、ハルアット、起きろよ」


ハルアットの動きを見たバストールが肩を揺する。

本当に起きるのか?


ウェスは戻すと約束したわけで、嘘をつくとも思えない。

しばらく目を覚ますまで待つしかないようだった。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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