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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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魂の行方

挿絵(By みてみん)





■ 解毒薬


「なあ、いつになったら大賢者さん起きるんだ?」


和田がハルアットを見つめながら呟く。


挿絵(By みてみん)


”嘆きの雫”の完全版を手に入れた後、アポーツで王都へ帰還すると、意識の途切れそうになる大賢者/ワーラットは、なんとか解毒薬の作成法を話し終えた。


だが、そのままバタリと倒れてしまった。

そこから王宮の薬師が呼ばれ、解毒薬の作成が至急開始されたのだった。


出来上がった解毒薬が投与され、土気色だった肌は瑞々しさが戻り、正常な肌色となった。


呼吸も安定し、あとはいつ起きるのか?

そんな状態が三日も経過したのだった。


「さて、私にはよくわかりません。見た限りでは、いつ目覚めても不思議ではないと思うのですが……」


王宮のお抱えの医師も困惑している。


和田としても、この世界の医療レベルが不明だが、自身も医療知識がないので医師の言葉を否定もできない。


「和田にゃん、ちょっと話があるんだけど……」


葉山が和田を呼び出す。

病室の外に出ると、葉山が口を開いた。


「ハルにゃんが、たまにいるように思うんだけど、チュー吉から離れられないって、そいういう思考だけがわかる感じにゃ」


「それって、戻れないってことだよな。遅かったのか」


「でも、弱くなってるけど、確実にハルにゃんの存在は感じるにゃ。チュー吉も同じように弱くなってる」


ハルアットもワーラットも、意識を失って寝込んでいる状態だが、まだ意識はあるということはわかった。


だが、弱りつつあることも事実であり、早急に何か手を打つ必要がある。


「苦労して材料全部集めたってのにな」


和田が無念そうにハルアットを振り返った。


■ 代償


レッドアイの拠点では、ハルアットの件で様々な議論が行われていた。

だが、決定的な答えは見つからない。


このような話は、やはりハルアット頼みになっていたことが大きい。

魔術や儀式のこととなると、ハルアットの右に出るものはいない。


そもそもが魂魄移送なる奥義のことを、知る者がいないのだ。

誰も何も言えなくなり、沈黙が辺りを支配していた。


── コンコン


そのとき、ノックの音が響き渡る。


「はい、どなたでしょうか?」


長野が扉を開くと、司祭が立っている。


「私は宮廷魔術師をしております、カーリと申します。魂魄移送についてお話に参りました」


和田がカーリを中へ招き入れる。


ハルアットの意識が戻らないため、宰相ワンジヤンスへ魂魄移送について、何かわからないか依頼していた。


「わざわざお越しいただきありがとうございます。何かわかったのでしょうか?」


カーリは一礼すると話出した。


「ハルアット様は希代な魔術師でもあり、我々の想像をはるかに超える存在です。そのハルアット様が奥義とおっしゃる儀式ですから、申し訳ありませんが、私には詳細が分かり兼ねます」


宮廷魔術師と聞いて、一同期待していたのだが、瞬時に落胆する。


「ただ、少しだけ補足ができればと思い、聞いていただければと思います。まず、奥義の発動は簡単なものではございません。おそらくですが、ハルアット様は何かを捧げられているはずです」


「つまり、どういうことなんだ?」


カーリの言葉に和田が疑問を挟む。


「奥義ともなりますと、何か触媒であったり、依り代であったり、生贄であったり、術の内容や系統にもよりますが、必ず何等かの代償が必要になるのです……」


「ありがとうございます。カーリさん、続けてください」


カーリも理解してもらえるように、言葉を選んでいるようだ。


「もしも、ハルアット様が捧げた代償がなにかわかれば、そこから解決策がみつかるかもしれない、そう思うわけです」


その言葉にすっと進み出る豊明。


「なるほど、和田くん当時の状況を事細かく教えてほしい。全部の事実を並べて、もう一度議論するんですぞ」


諦めたらそこで終わりだ。


あとどれくらい時間があるか不明だが、できることはなんでもやるしかない。


── 暗殺行為が行われた時のことを回想する


「あの時、最初に異変に気が付いたのは俺だけだな。変な奴が近づいてきて、ダガーをいきなり……」


和田が思い出して身震いする。


「あっという間でやんした。それくらいの短い時間だった」


「そうね、和田殿も、タク殿も、反応はできても間に合わなかったし、私もヒールをすぐに掛けたのだけど、遅かった」


増山と外山が俯きながら話している。


「僕はあの時、チュー吉が騒いでいたから、全然気が付かなくて……」


葉山が申し訳なさそうに話す。


「なるほど、つまり何かを捧げるにしても、特別なものが用意できる時間もないんですぞ」


豊明がまとめる。


「葉山くん、そのチュー吉は何を騒いでいたんですぞ?」

「何か嫌がっていた、何かが来るって騒いでたんだ」


葉山の答えを聞いても、特に何も思い浮かばない豊明。


「あ、そういえば、今もなんだけど、たまにハルにゃんが”ウェス様、この命を…”って、うわ言というか、その言葉がよく聞こえてるかも」


その言葉に和田が反応する。


「そういえば、ウェスに呼ばれた時、大賢者さん何も言わなかったな」


和田の言葉を吟味するように豊明が唸る。


「和田くん、これは魂の固着とは関係ないかもしれないですぞ」

「豊明さん、どういうことですか?」


和田の問いに少し考え込む豊明。


「ウェス君と大賢者殿との間に、何か他の契約めいたものがあるのではないかと思うんですぞ」


もし、そういうことがあったとして、どうすればいいのか?


「じゃあ、また”時の牢獄”に行くでやんすか?」


「いや、あそこに行ったから再度ウェスに会えると限らない。あのとき、俺たちはどこかに瞬間移動させられたからな」


外山の問いに答える和田。


「ダハハハ、瞬間移動! そうなんですぞ、アポーツならいった場所には移動できるんですぞ!」


「ん、だから”時の牢獄”へ行っても、ウェスがどこにいるかわからないって」


豊明の意図が和田には伝わっていない。


「だから、あの時我々はウェス君に呼ばれて、確かにウ(・)ェ(・)ス(・)君(・)の(・)と(・)こ(・)ろ(・)に(・)行(・)っ(・)た(・)んですぞ?」


「そうか、だから行ったところだから、呼ばれたとしても実際に行った場所だからでやんすね!」


豊明の言葉に外山が反応する。


「いやいや、ちょっと待てって、あそこはどちらかというと、なんて言ったらいいんだろうな? 精神世界みたいな。実在しない場所なんじゃないのか?」


豊明の推測はもっともかもしれないが、和田も慎重にならざるを得ない。


一番最初にアポーツで移動したときも、検証をちゃんとして安全を確かめたのだ。


だが、今回は検証する方法がない。

ぶつけ本番になるからだ。


みんな黙って外山を見つめた。


「ノンノン、心配は無用。小生はやるでやんすよ。もう迷ってる時間もないでやんしょ?」


「タク! もちろんだ。お前独りでやらせん、一緒に行くですぞ!」


外山と豊明が、二人盛り上がっている。


「誰もやめろと言わないし、行くなら俺もいくさ」


和田の言葉に、他のメンバーも頷いた。


■ ウェス再び


「いいでやんすか!」


外山が叫ぶ。


「みんな覚悟はできてる。いつでもいいぞ」


和田の言葉に、みんなが頷く。

外山が静かに目を閉じると、周囲の空気が震える。


── シューン


周りが膨張したような感覚の後、急に収縮する。


── ドサッ


地面に着地した。

満点の星空と、パチパチと火の爆ぜる音。


白く光るウェスが、焚火に薪を投げ入れる。


「やあ、また会ったね。といっても、来るって知ってたけどね」


ウェスがニコリと笑う。


「あのさ、大賢者さんの解毒薬を与えたんだけど、意識が戻らないんだ。何か知っているよな?」


焦れるように和田が問いただす。


「そうだね。ぼくが創った物語だからね」


焚火を棒でかき回し、火を調整するウェス。


「いいよ。ちゃんと話そうか。話聞きたいんだよね?」


── バタッ


その時、外山が倒れる。


「タク!」


豊明が駆け寄り、外山の肩を揺する。


「ああ、大丈夫だよ。外山さんは、魔力を使い果たしたんだよ。ぼくの精神世界まで瞬間移動とか、よくやったね? 外山さんじゃなきゃ、無事では済まなかったと思うよ」


相変わらず落ち着いた声で、焚火をかき回す。


「ここはぼくの中の世界だから、思い通りさ。君たちの世界に直接手を出せないけど、ここはぼくの思い通りさ。外山さんはゆっくり寝てたら回復するから」


── パチン


ウェスが指を鳴らすと、辺りは明るい部屋に変わっていた。

窓の外にはよく晴れた空と、どこまでも続く青い海が見えている。


挿絵(By みてみん)


「さあ、何が聞きたいんだい?」


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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