↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/63

アフテンスラット皇国 嘆きの雫編

挿絵(By みてみん)





◼️ 豊明無双


「ダハハハハ、おらおらおらおら」


笑いながら走るスピードを落とさない。


「なんだって、豊明さんは倒れないんだ?」

「スキルじゃ無いかって、ハルにゃんが言ってる」


これまでの深刻さが嘘のようで、和田は半笑いだ。


ゴーレムが触れると倒れ込むのは、何かしらの干渉が起こっている、そう大賢者が予想しているという事だった。


豊明だけ大丈夫ということは、その可能性は大きい。


「葉山は倒れてる仲間を見ててくれ、てる美は念のため隠密で一緒に豊明さんを追うぞ」


豊明を追って走り出す和田達。

豊明の背中が見えてきた。


その先に一際大きな鍾乳石が天井から下がり、先端には雫が溜まっている。


雫の下には、ちょうど洗面器ほどの窪みがあり、彫刻のような飾り見える。


明らかに何者かの手が加わっていた。


その窪みに取り付いた豊明は、ゴーレムを掴んだまま雫を手で掻き出している。


じゃぶじゃぶと掻き出すと、底が見えてくる。

キラリと光るビー玉のようなものが出てきた。


挿絵(By みてみん)


「たぶん、これなんですぞ!」


── バリバリッ


そのビー玉のような玉を取り出すと、思い切り踏みつけた途端、音を立てて砕け散る。


すると、豊明を掴んでいたゴーレムがどさりと落ちる。


「豊明さん! なんでわかったんですか!」


後から追いついた和田が、息を切らしながら笑う。


「いやー、その雫に近寄ろうとすると、ゴーレムがグイグイ力を入れてきたから、確信したんですぞ!」


隠密を解いた長野も姿を現す。


「ほんとに、頼もしい先輩ですこと」


しかし、肝心の雫はほとんど掻き出されてしまった。


「溜まるまで、しばらく待たないとな」

「まあ、疲れたし、みんなも休んだほうがいいですぞ!」


そう話していると、バストールを始め倒れていた仲間がやってきた。


「小僧、いったいどうなった? 最初に”時の門番”を破壊したところから、全く覚えてないぞ……」


バストールの言葉に、他の倒れていた仲間も頷いている。


「あれだけやったのに、覚えてないのか。ゴーレムに触られたらみんな倒れていって……」


これまでの経緯を和田がみんなに説明した。


「いずれにしろ、そんなところにコアがあるとはな、俺には全く想像もつかんな」


バストールがしみじみと語る。


「雫が回収できるほど溜まるのは、もうしばらくだな。それまで休憩だ」


── ピィィィィン


和田がそこまで話したとき、耳鳴りのような音が鳴り響いた。


気が付くと、洞窟から満点の星空へと変わり、焚火がパチパチと音を立てている。


焚火の前には、子供が一人座っている。

薪を折ると焚火に投げ入れる。


「あ、あの子って… 私に力を与えてくれた子だわ。なにか変ね、前は光っていたのだけど」


長野が疑問を口にする。

その子供は真っ黒なオーラを纏っている。


「オマエ、ワダ…ジャマモノ」


子供が立ち上がって、和田のほうへ歩いてくる。

それと同時に、和田は体が金縛りのように動けなくなる。


そして、バタっと倒れる。

睨まれただけだった。


”時の門番”は包み込んできたが、ただ睨んだだけで同じ効果があるようだ。

バタバタと倒れていく。


「あの子じゃないの? 何をしてるのか知らないけど、みんなを守らなきゃ」


長野が和田をはじめ、仲間の顔を思い出す。


── シャキーン


金属的な音とともに、魔法陣のようなものが地面に浮かぶ。

くるくると光がめぐり、光が煙のように舞い上がる。


シャボンのような半球が、輝く魔法陣から全員を包み込む。


「ナンダ、ドウシテ?」


子供が長野をみて驚いている。


「こいつは……」


和田は動けるようなったと同時に、右手が光を帯びてくる。

右手にひっぱられるように、走り出す。


和田はよくわからないが、直感に従おうと決めた。

守りの半球を飛び出ると、右手で黒い子供に触れた。


ビクッとのけ反る子供。


「ウアアアアアアアアアッ」


叫んだ後に、ガクッと座り込んだ。

黒いオーラが少しずつ薄くなっていく。


■ 時の支配者


何が起こっているかわからないので、うかつに動けない。

みんなが子供に注目している。


そして、黒いオーラは消え失せ、今度は真っ白に光りだす。

光が強くなったそのとき、子供が立ち上がる。


「長野てる美さん、ひさしぶりだね。ごめんね、この前は時間がなくて名乗れなかったね。ぼくはウェス。時の支配者、らしいんだけどね。よくわからないんだ」


悲しそうな表情のウェス。


「時の支配者? どういうことなの?」


長野がウェスに語り掛ける。


「見たでしょ? 真っ黒なぼくを。あの力は、今和田さんの力で抑え込まれてるんだ。だから、あまり時間がないんだ。でも、説明しなきゃね」


頷いてウェスが語りだす。


この大陸がいつできたのかわからないが、そのはるか遠い昔のこと。

この洞窟でウェスは目覚めた。


連れてこられたのかもしれない。

母親も、友達も、どこにいったのだろうか。


なぜ、こんな洞窟に一人いるのだろうか?


わからないが、何をするのかはわかっていた。

いや、自然と頭の中に見えてきていた。


大きな巻物がごろりと転がって、羽のペンがサラサラと勝手に動いて、いつの間にか絵ができている。


絵は勝手に動き出し、映画でも見るように物語が展開する。

ウェスはそれを見ていた。


物語には主人公や正義の味方、そして悪役が必要なのだ。

それをウェスがちょんと触ると、思い通りのものが誕生した。


そうやって、物語を創ってきたのだという。


最初は面白くて、夢中で物語を作ってきたのだけど、ある日自分の家族のことや、友達のことを思い出す。


すると、頭が痛くなって何も考えられなくなって、すべてを忘れた。

そしてまた物語を創ることに没頭する。


どれだけ時間を物語を創ることと、昔のことを思い出すことの繰り返すことに費やしたか?


ウェスはとても怖くなった。

母親に会いたい、友達に会いたい、そう強く思ったのだった。


すると、するりと流れ落ちた。

なんだろう、辺りを見回すと、白く輝いている自分の手足が見えた。


そして、真っ黒な煙のようなものに包まれたもう一人の自分。


怖くなって白いウェスは逃げた。

物陰に隠れ、黒いウェスのことを見ていた。


黒いウェスは、ウェスガルガンの皇帝を作りだし、黒死教を作り出した。

そうやって、悪いものだけを創るようになってしまったのだ。


白いウェスは力が弱かった。

でも、やらなきゃいけない、そう思っていた。


力を振り絞って、何かを創った。

そのとき、白いウェスは大賢者の部屋の扉を開ける和田の姿を見た。


「そうなんだ、僕が君たちをこの世界に創ったんだ」


疲れ切ったような表情の白いウェス。


「大丈夫なの? とても疲れてるみたいだけど」


長野が心配そうに白いウェスに手を伸ばす。


「ありがとう、長野さん。でもね、ぼくに触れてはだめだよ。うん、それに急いだほうがいい。黒いウェスをずっと抑えておけないんだ」


そういうと、白いウェスが小さいビンを手渡す。


挿絵(By みてみん)


「このビンに”時の雫”を入れたらいいよ。呪いはかからないからね」


長野がビンを受け取る。


「早く行くんだ。ぼくたちはここを出られないし、きみたちの時を止めることはできるけど、それ以上のことはできないから安心して」


長野はビンを持ったまま立ち止まっている。


「あなたを助けたいと思うんだけど、どうすればいいの?」


「ありがとう、きみは優しいんだね。でも、大丈夫だから、きみたちのおかけで、ぼくも力を取り戻したから」


── 白いウェスが手を振っていた


「一つだけお願い。どうかウェスガルガンを……」


── ピィィィィン


最後に白いウェスが悲しそうな顔をしていた。

ウェスガルガンを倒してくれ、そう言いたかったんだろうか?


だが、耳鳴りのような高い音が聞こえ、洞窟へ戻っていた。


「よし、雫を汲んで帰ろう!」


和田がいつまでも立ち尽くす長野を促し歩き出す。


「和田くん! 急がなければ、コアが復元してきている! ゴーレムが復活する前に出るんですぞ!」


雫の溜まる部分を確認していた豊明が叫ぶ。

長野の手を取ると、和田は走り出した。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n8527mg/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。