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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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アフテンスラット皇国 時の牢獄編

挿絵(By みてみん)






◼️ 嘆きの雫とは!?


「またあそこに行くのかよ…つくづく因縁だな」


バストールが呟く。

葉山と外山の疲労が激しく、一旦休んで移動する事にした。


"常世の平原"の濃い霧はなかなか晴れない。

夕方くらいだと思うが、かなり暗い。


一同手を繋いで焚き火を囲んでいる。


挿絵(By みてみん)


「うちらに"嘆きの雫"の完全な抽出はできない、そう黒死教のやつは言ってたな?」


「まあ、そうじゃな、まずは"嘆きの雫"とはなにか、それを話す必要があるな」


和田の問いに、大賢者/ワーラットが葉山の肩の上で、みんなをぐるりと見回す。


こうして見ていると、ただの可愛らしいネズミなのだが。


「そもそも、この話はかなり昔に遡る…」


この大陸に国境がなく、全てが一つの国であった頃、善王と呼ばれたグウォール大帝は、善政を敷き民のための政治を行った。


ただ、一つの欠点は、自分の治世を永劫に続けたい、日々それを神に祈った。


ある日、旅の魔術師が不老不死の法を知ると聞くと、城に召し上げ、その秘法を探った。


魔術師が言うには、とある時を司る洞窟に不老不死の雫が垂れている、そう言うのだった。


そこからグウォール大帝の雫探しが始まるのだが、三十年に及ぶ探索でも手掛かりすら掴めなかった。


やがて寝たきりとなったグウォール大帝は、自分の息子に雫を手にせよ、雫はまだか、そう叫び続けた。


そして、最後に叫んだ言葉がこの由来となる。


『ああ、神よ…何故私に雫を下さらないのか…』


そこから、この見つからぬ不老不死の雫を"嘆きの雫"と呼ぶようになった。


「なんか、どこかで聞いたような話しでやんすね」


まあ、神話や言い伝えなんて、どの世界でも同じようなものかもしれない。


「まあ、この話を知っておれば、だいたいが"時の雫"との繋がりを考えるじゃろう。まあ、あまりに昔の伝承ゆえ、一般的に知られておらんがな」


大賢者/ワーラットが腕を組んでうんうんと頷く。

葉山が大賢者/ワーラットの頭を指で撫でる。


「可愛いのにゃ!」

「やめんか、ワシもそろそろ苦しい、魂の固着が強くなってきておる…」


確かに、以前に比べ元気が無いようだ。


「んー、つまりは再度、"時の牢獄"に行かなきゃって事だな」


和田がまとめに入る。


「うむ、行かねば何も進まん…ワシは少し横になる、あとは頼んだ」


そう言うと、大賢者/ワーラットは葉山の皮袋に潜り込んだ。


◼️ 時の牢獄へ


翌日も濃霧は晴れなかった。

すっきりとしない、誰も口にはしないがそう思っているようだった。


目的ははっきりしているが、決め手に欠けるそんな感じだ。


「なあ、バストールさんよぉ、以前”時の雫”を手に入れた時って、どうだったんだ?」


ウォーハンマーの手入れをしていたバストールが、一瞬手を止めたが手入れをしながら口を開く。


「一言で言うなら最悪だな」


続けてウォーハンマーを布で拭き続ける。


「”時の門番”は倒しても倒して再生してくる、俺もハルアットも、ラーリニアもクタクタだった」


嫌なことから気を逸らしたいのか、ウォーハンマーをの手入れに力が入る。


「俺らは不死身ではないが、相手は不死身。この状況わかるよな? 勝ち目なんかないんだ。だからラーリニアが死霊になって、”時の門番”を縛り付けた」


そこでようやく手を止めて、和田のほうへ振り返る。


「三百年だ。三百年も死霊となって……」


そのラーリニアも、黒死教に利用されたのだった。


「悪いな、あんまり思い出したくない話ってのは知ってる。でももう一回”時の門番”とやりあうんだよな?」


「小僧、”時の門番”は不死身だ。どうやっても倒すことができん。正直ラーリニアもいない今、手が思いつかんな」


バストールにすらこう言わしめる”時の門番”とは、今から思いやられる。

だが、はいそうですかと諦めるわけにもいかないのだ。


困難しかないとわかっているが、”時の牢獄”へ向け出発を開始した。

”時の牢獄”はアフテンスラットの最西端にある。


今いる”常夜の平原”は、アフテンスラットの中央に位置する皇都メジャナの南になる。


そこから馬車で十日行程というから、TTタンクであればもっと早いはずだ。


「和田くん、君はなぜ”時の牢獄”へ行くのかね?」


外山に運転を任せ、車内にいる豊明が和田に尋ねる。


「いや、なぜって、”時の雫”が必要だからですよ」

「ふむ、ではどうしてそんな深刻な顔をしているんだろう?」


え、と驚いて豊明を見る和田。


「豊明さん、話聞いてましたよね? 勝ち筋が見えない、かといって行かないという選択はできない、だから悩んでます」


「では、和田くんは、勝ち目がないが、とにかく行くと?」


和田が少し考え込んで口を開く。


「はい、そういうことになります」

「ダハハハ、いつになく弱気なんですぞ!」


そう言って、豊明が和田の肩に軽くパンチをする。


「最初から勝てないと決めて行動しても、いい結果なんて生まれない」


豊明がまっすぐに和田を覗き込む。


「大丈夫。この豊明、人生で一度も負けたことがない。負けた、そう思ってないからですぞ!」


「ぷっ、豊明さん、それなんすか。思い込みってやつですよね」


吹き出した和田の肩を、豊明がポンポンと肩を叩く。


「なんでも、考え方次第、気持ち次第、とういうことですぞ!」


和田は少しだけ吹っ切れた、そんな顔つきになっていた。


■ 時の門番


強風と波の音が大きく、会話もままならない。

和田達は海に突き出した断崖の中腹にある岩棚にいた。


ぽっかりと空いた洞穴で、人によって付け加えられた入口の補強があった。


「よし、じゃあ行くぞ、みんな気を抜くなよ」


和田が全員を見回す。


「小僧、この洞窟はたいして深くもない。少し行けば”時の門番”に出くわすからな」


バストールは引き返すなら今だぞ、そう言いたいのかもしれない。


静かに頷いた和田は、一人奥へと進み始める。

和田に続いて、みんなも奥へと進んでいった。


人が三人ほど並んで通れるほどの広さで、感覚として十五分ほどだろうか?


少し広い広場のような場所に出た。

ぼんやりと淡い青で照らされた影が見える。


「小僧、あれが門番だ。ゴーレムだな。もう少し近寄ると、起き上がってくるぞ」


バストールが囁く。


「一旦起きると、あとは際限なくくるからな、それだけ覚えておけ」


和田が静かに頷く。


「よし、じゃあ効果あるかわからないが、壁で取り囲んで見よう」


和田からの言葉に外山が進み出る。


── ゴゴゴゴゴゴッ


三重の壁が"時の門番"を取り囲む。

特になにも起きない。


静かなまま少し経つ。


── ガゴッ


壁が粉砕され、ゴーレムがでてきた。

土のような茶色だが、人工的な艶々した表面でもある。


「小僧、もう寝た子が起きた。あとは力の限りやるしか無い。その間になにか考えろ!」


ウォーハンマーを振りかぶり、バストールが突撃する。


── ガッガン


挿絵(By みてみん)


ウォーハンマーがゴーレムの腹にヒットし、粉々に飛び散る。

それなりに力はあるようだが、強さは特に感じられない。


パラパラと崩れ落ちた破片が、ズズッと動き出して元通りになっていく。

バストールも、完全に戻るまで待たず、すかさずハンマーを叩き込む。


ここからは、バストールのいうように、ひたすら同じ事の繰り返しだった。


── ハアハア


バストールは滝のような汗と、肩で息をしている。

いや、バストールだけではない。


和田をはじめ全員が同じで、疲れ果てていた。


「小僧、どうするんだ? これじゃ全員動けなくなるぞ」


バストールが叫ぶ。

和田も色々やってみた。


英雄の右手を使ってみた。

胴体を貫通しドサッと倒れるが、すぐに復元する。


完全回復するなら、回復させてみよう、増山のヒールはどうだ?

だが、やってみても、何も起こらなかった。


葉山のテイムも試みたが、そもそも生物でないため最初から無理があった。


万策尽きたかと思われた。

みんなの動きが鈍くなり、ミスが目立ち始める。


「うわ、間に合わないでやんす」


外山がよろけて、魔法が間に合わない。

ゴーレムが外山を包み込む。


何が起こったのか、外山は動かなくなった。

呼吸は止まっていない、だが白目をむいている。


外山を助けようと、増山が手を伸ばすが、ゴーレムに捕捉された。

同じように、どさりと倒れ込む。


「ちくしょう!」


バストールがハンマーを振り続けるが、大振りしたところをゴーレムが包み込む。


どさりと倒れるバストール。


次にゴーレムが豊明に向け動き出す。

残るは、豊明、長野、葉山、そして和田だ。


「ダハハハハ、鬱陶しいですぞ!」


豊明はゴーレムをガッチリと掴むと、そのまま奥へ駆け出した!


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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