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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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アフテンスラット皇国 マズルフ狂乱編

挿絵(By みてみん)





■ 仲間への想い


「ウオォォォォォォォッ!」


バストールの雄叫びが響き渡り、ウォーハンマーを中心に暴風が乱舞する。


「この一撃はユウノシンの一撃!」


── バフッ、シュゥゥゥゥゥゥッ、ドドドドォォォォン


特大の風魔法を帯びた一撃が繰り出され、着弾した辺りのフードが数人吹き飛んだ。


「この一撃はラーリニアの一撃!」


── バフッ、シュゥゥゥゥゥゥッ、ドゴォォォォン


挿絵(By みてみん)


先ほどと同じくらいの一撃がさらに数名のフードを吹き飛ばす。


「食らいやがれ! 満足とはいかんが、大分スッとしたぜ。二人のためにも、もっと盛大に行くからな。最後はお前らを壊滅させる!」


バストールが凄みのある笑顔を浮かべている。

それと対照的に、豪華なフードの男とその周囲は狼狽していた。


「マズルフ猊下、どうかお下がりください!」

「あれはもしや!? あの、ドワーフなのか?」


黒死教の最高権力者である、マズルフ自ら出向いてきていた。

周囲の信徒が慌てて前線から下げようとしている。


「やつは動くこともできなかったはずでは? く、そうか、エルダードラゴンが絡んでおったのか。理を断ち切られれば、感知することもできん…」


「マズルフ猊下、ここは危険です!」


百二十名揃えていた魔法に優れた信徒が、もう半分に減っていた。

バストールの出現が想定外であり、ここまでの破壊的な攻撃はないと安心していたのだ。


「お、おのれ許さんぞドワーフ、大賢者め!」


豪華なフードを翻し、マズルフが後ろへ走る。


「あと少しでよい、者ども時を稼げ!」


走りながらさらに指示を出すマズルフ。

その間にも、バストールの斬撃が襲い掛かっている。


その言葉に、残り少なくなった信徒が集まり呪文を唱える。

結界が構築され、信徒の周囲に深い闇が形成される。


「闇の結界はそこまで持たんな、急ぎ召喚せねば…」


マズルフは何事か呪文を呟くと、空に向けて闇の玉を飛ばした。

ウェスガルガン方向へ凄まじい速度で飛び去る闇の玉。


── ドゴォォォォン


闇の結界がバストールの斬撃をなんとか凌いでいる。

だが、結界を展開する術者が、フラフラしていた。


「マズルフ猊下、もう結界が持ちません!」


限界が近いようだった。

空を注視していたマズルフが、少しだけ安堵した様子を見せる。


「でかした、間に合ったようだな」


黒い塊のようなものが、空に点々と表れている。


「ちっ、結界張りやがったから、なかなか崩せんな…」


いっぽうで、斬撃を打ち込んでいたバストールだが、さすがに疲れてきていた。

そこに索敵に出ている長野が前線へ現れる。


「空から何か来るわよ! 気を付けて!」


その報告を入れると、再び隠密に入って長野が消える。

長野には継続して索敵の指示が出ていたためだ。


「おい、バストールさんよ、あれなんだ?」

「ん? おいおい、ありゃ飛竜(ワイバーン)じゃねぇか?」


和田の指さす先を見たバストールが答える。


「この平原じゃ、かなり不利だぞ。俺らは逃げ場が無いが、奴らは狙い放題だからな」


バストールが少し思案する。


「小僧、ここは癪だが、一旦下がるぞ」


バストールの行動は迅速だ、退くときは直ぐに退く。

百戦錬磨の経験からくる行動なのだろう。


■ 飛竜(ワイバーン)来襲


── キィィィィッ


一転、和田達は守勢に回ることとなる。

絶え間なく襲来するワイバーンに翻弄されていた。


ワイバーンが五十匹は飛んでおり、空を埋め尽くすように見える。


素早いことこの上なく、高度もあるため矢も届かず、魔法も当たらない。

バストールは独り壁を出て、なんとかワイバーンを落とそうと奮戦している。


だが、バストールの攻撃も当たらず、傷が増えていくだけであった。


── キィィィィッ

── ガシュッ


ついにバストールの肩口に、ワイバーンの爪が食い込んだ。

鮮血が噴き出すバストール。


すかさず和田が壁から飛び出て、バストールを壁の内側へ引っ張り込む。


「タエちゃん、バストールにヒール頼む!」


必死の形相で和田が叫ぶ。

増山のヒールが発動し、バストールの傷が治癒していく。


── ワイバーンの猛攻で流れが変わった


「まあ、これでは奴らも手も足も出んわ! この平原を選んだからには、最適な攻撃方法を用意しておかんとな」


「さすがはマズルフ猊下!」


満足そうに笑うマズルフに、信徒も安堵の表情を浮かべている。


「よし、やつらの壁もワイバーンが崩してくれよう。残りの術者を集めておけ、壁が崩れたら魔法を打ち込んでくれよう!」


── ワイバーンの来襲に、葉山が動いた


壁から少し這い出して、ワイバーンの一匹にテイムを試みる葉山。

精神を集中するが、ワイバーンは呼びかけに応えない。


どうやら精神を操作されているようだ。


「これはダメにゃ!」


── ギィィィィ


壁に戻ろうとした葉山にワイバーンが襲い掛かってきた。


── ロークス連邦北部の海で、ホストルとホストラーダが帰還中


和田達とソルの港で別れた後、ファディの訓練を実施していたのだった。


ロークス連邦近海だと、海流の流れや荒れ具合が厳しいため、南の穏やかな海を選んで訓練をしていた。


獲物との戦い方など、ファディに見せながら訓練し終えた一行は、ロークス連邦への帰路となる航海をしていた。


(ザルツはなんだか浮かない顔をしているわね)


ホストルはそんな風に見ていた。

もちろん、理由には心当たりがあったわけだが。


ただ、葉山とのような完全なコミュニケーションは取れないので、いつもホストルはザルツを眺めているだけだった。


そんな時だった。

急にホストルの心がざわついた。


ホストルが海面に出て”止まる”の合図を送る。

合図を受け取ったホストラーダが帆を畳んで速度を落とす。


ホストルとザルツは意思疎通はできないが、簡単な合図は決めてあった。


(どうしたのかしら? これは…懐かしき子に危機が迫っているようね…)


ホストルが葉山の心に同調し、詳細を探っている。


(ワイバーンに襲われているようね。下等な種族が我が友に傷を付けることなど許さないわ)


ホストルがさらに深い集中に入る。


── 襲われる寸前の葉山


(しっかりしないさい、懐かしき子よ! あなたは誇り高き海龍の友。下等なワイバーンなど、退けてしまいましょう。さあ、立つのです)


(え、ホストル!? どうして!?)


(あなたのことはわかると伝えたはずです。これから海龍の加護を与えましょう。もう何も心配はいらないのですよ)


その言葉が終わるや、葉山の身体が金色に光輝く。

襲い掛かろうとしていたワイバーンは、慌てて飛び去った。


葉山の光は強くなると同時に、空に急速に暗雲が立ち込める。

暗雲のあちこちで、チラチラと稲光が見える。


── ドドドドォォォォン


いきなり、雷鳴が轟く。

その瞬間に数匹のワイバーンが雷に打たれ落ちてゆく。


挿絵(By みてみん)


明らかにパニックに陥るワイバーンたち。

さらに、葉山からあふれる神々しい海龍のオーラに気圧されている。


シーサーペントは上位の種族であり、ワイバーンなどはとても敵うような力はない。

力の差は歴然で、上位の龍種族に逆らうものはいないのだった。


── ギィィィィ


ワイバーンが少しずつ離脱していく。


── ドドドドォォォォン


雷鳴も轟いて、ワイバーンが雷に撃たれ行く。

そうこうしているうちに、すべてのワイバーンが逃げ散っていった。


「マズルフ猊下! これはいったい!?」

「……」


信徒の言葉に言葉も発せず、マズルフは茫然と空を眺めている。


── 雷鳴に驚く和田達


雷鳴が激しいため、壁に隠れていたが、恐る恐る顔を出す和田。

光り輝く葉山が見えるが、何が起こっているのか全く理解できない。


(懐かしき子よ。さあ、これで大丈夫ですよ)


(ホストル! ありがとにゃ!!)


葉山は見えるはずもないのだが、ちゃんとロークス連邦のホストルのほうを向いて微笑んでいた。


和田以外の他の面々も、恐る恐る壁を出てきていた。


「ホストルが助けてくれたにゃ!」


出てきた和田達に、葉山が満面の笑みでドヤ顔していた。


「まあ、凄いんだけど、冷静に考えると葉山の力じゃないよな?」

「ちょっと和田にゃん、いつも私に厳しくない?」


ワイバーンの襲来を退け、みんなの顔にも余裕が戻っている。


「さて、最後の仕上げと行こうか!?」


バストールがウォーハンマーを肩に掛けて歩き出していた。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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