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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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ロークス連邦横断 盗賊討伐編

挿絵(By みてみん)





◼️ 盗賊


ロークス連邦に入り三日が過ぎた。


そのまま西へ進路を取りたいのだが、大陸最高峰の山脈も西に延びているため、北側に大きく遠回りする必要があった。


アフテンスラット皇国まで、少なくとも十日はかかる計算だった。


バストールは特に変わっていないように見えた。

少なくとも良くなっていない。


「なあ、バストールさんよ、いったんイストリア戻るか?」


「またその話か! 戻ったら何日遅れるんだ? アポーツの魔力消費が桁違いなんだろ?」


今の進行を支えているのは、外山の魔力となる。

魔力量が桁外れに多いのだ。


その外山であっても、アポーツを多用すれば枯渇するほど魔力を消費する。


ここでイストリアに戻れば、進行が遅れるのは明白だ。


そして、バストールに何度か声を掛けたが、バストールの答えは変わらなかった。


「このバストール、覚悟は揺るがん! 俺の事など放っておけ。一日でも早く進め!」


バストールの意思を尊重することとして、国境を越えても走り続けた。


なるだけ距離を稼ぐ為、街に入らず山脈に沿って進んでいた。


「和田っち、なんか軍隊が道塞いでるでやんす」


外山がゆっくりとTTタンクを停止する。

兵士が複数やってくるのが見える。


降りてきた和田にもその姿が見える。


「なんだ、この奇天烈な乗り物は!?」

「怪しいな、おい、通行証を見せてもらおうか」


兵士と指揮官らしき者三名が、口々に話している。


「こちらをどうぞ」


和田がギルド登録証と、ザルツにもらった通行証を見せる。


「なんと、ザルツの発行した通行証か!?」


ザルツの通行証を見た指揮官の目が変わる。


「あー、この前ソルの港町で頂いたものです」


「なるほど、ザルツはやたらと通行証を渡す奴では無いからな。何か特別な事があったようだな。良かったら聞かせてくれまいか?」


そこで和田が海龍の子が逃げ出し、それを保護した事を伝えたのだった。


「いや、これは我が軍の恩人であったか。申し遅れました、私はドールフと申しまして、ザルツとは同郷の友でしてな…」


そこからドールフはペラペラと語り出した。


ザルツとは良き友で良きライバルであり、ドールフは陸軍として活躍する事を選んだという。


「我々陸軍も、海龍のような守護神が欲しいのですよ。おっと、すみません無駄話を。実はあなた方を止めたのは、この辺りで大規模な盗賊が跋扈しておるのです」


ドールフが真顔で続ける。


「取締りを強化しておりましてな、一日も早く討伐できるよう動いておるのです。なかなか尻尾を掴めておらず、困ってまして…」


盗賊が出るとなれば、和田達も襲われる危険性は出てくる。


旅は急ぎたいが、大規模な盗賊なのであれば、遭遇する可能性は高いように思われた。


「和田にゃん、なんかあっち奥に相当いるにゃ」


葉山が先程からゴソゴソしてると思ったが、すでに感覚共有で確認済みのようだった。


「葉山、何人くらいかわかるか? あー、てる美も索敵お願いできるか?」


長野が頷くと、目を閉じて集中している。


「んー、僕が頼んだ虫があんまり頭良く無いにゃ、いっぱいいることしか見えない…」


「キミさん、多分二百超えてる」


二百超えの盗賊か。


「ドールフさん、二百超えるくらいがあっちの奥に展開してるみたいです」


「なるほど、私の麾下が百五十おります。なんとかなるでしょう」


◼️ 囮


「ドールフさん、我々も急いでいるのですが、大規模な盗賊がいるなら、落ち着いて旅もできません。協力させていただけないでしょうか?」


「いや、これは我々の仕事ですし、冒険者とはいえ、他国の方を巻き込むのは…」


しかし、正規軍とはいえ、数では劣勢だし、和田達としても安心して旅を進めたい。


「まあそうですね、なので我々が囮になって、誘き出しますよ」


和田の提案にドールフも頷く。


「なるほど、協力頂けると助かります。もちろんあなた方に、危険が及ばないようにしますよ」


急遽な事だが、今後の作戦会議となる。


この辺りの地形の説明と、どこからどこへ誘き出すか、合図はどうするかなど、詳細に打ち合わせる。


じゃあ手筈通りに、そう言ってお互い動き出した。


── 配置が完了したところで、外山、豊明、葉山、長野この四人が森の奥へ向かった


「ガラフ様、女二人連れの子供と爺さんを見つけやした!」


ガラフと呼ばれた男は、残りの酒をぐいっと飲み干す。


挿絵(By みてみん)


「女か、上玉か?」

「なかなかですぜ、爺さんとガキなら楽勝でさ。いきやしょう!」


ガルフは立ち上がり、馬に跨る。


「他に仲間がいるかもしれん、しばらく尾けるぞ」


ある程度の距離を置いて、ガルフ達が尾行をはじめる。


「動き出したわね、食いついたわ」


呑気に歩いているよう見えて、既に長野の索敵で補足されていた。


「なんか、唇お化けみたいな大男がいるにゃ」


ガルフの驚くほどの分厚い唇を見て、葉山は身震いしている。


道が切れて、少し森のなかへ入った。


「よし、ここでアポーツかけてもっと先に進むでやんす」


一気に五百メートルほど先に移動した。


「おい、やつら消えた? どこだ!?」


尾けてきたガルフ達は、獲物が消えたと騒ぎ出す。


「ガルフ様、あそこにいますぜ」

「どう言う事だ? なんであそこにいるんだ!?」


よくわからないが、このままでは逃げ切られるかもしれない。


「気がつく前に抑えろ! 逃げられちまう。全員で行け。後続の待機組も一気行くぞ」


そういうと、馬に鞭を入れ速度を上げる。


四人だと思い、十人もいれば大丈夫だと安心していたが、思わぬ状況に全員を投入するガラフ。


前方に岩の崖が立ち塞がってきたので、外山達が右に折れて、木々の中へ入り視界から消える。


「ヒャアッハァ、追いついて攫え!」


さらに速度を上げる盗賊たち。

しばらく走ると、またもや前面と右側にも壁ができており、左手は崖となっている。


右に折れたところで、外山が壁を作って閉じ込めに入ったのだ。


盗賊はまんまと、袋小路に入り込んでしまった。


「おい、女はどこ行った!? 行き止まりだぞ!?」


── ヒュン、ヒュン、ヒュン


挿絵(By みてみん)


突然、崖の上から矢が降り注ぐ。


「なんだと!?」


ガルフが見上げると、崖沿いにずらりと弓兵が並んでいる。


「くぅ、やられた! 引き返せ!」


悲鳴と怒号が飛び交う中、先頭は引き返そうとするし、後続は前進しようとするので、大混乱となって面白いように矢が命中する。


「小隊突撃!」


そこへドールフの号令で騎馬隊が突入する。

あっという間にガルフ達は倒され、捕縛されていった。


◼️ ウェスガルガンの野望


「いやあ、助かりました。見事に誘い込んでくれましたな! 完璧でした」


ドールフが満面の笑みで告げる。


「お役に立てたようで、何よりです。ところで、我々実は黒死教を追ってまして。ロークス連邦に黒死教っていますか?」


ドールフが真顔になる。


「黒死教? 今はおらんでしょうな。奴らはかつて色々な事件を起こしましてな。以来、ロークス連邦内では、黒死教の布教は禁止で、取締りの対象ですからな」


忌々しいと言う顔のドールフが一旦言葉を切った。

少し迷って口を開く。


「あくまで噂ですがね、なんでもウェスガルガン帝国と繋がりが深いと言われてまして…」


「どんな繋がりがあるんです?」


「ウェスガルガンは、大陸統一に野心があって、そのための暗躍に黒死教が絡んでいるという噂です」


和田が頷いて、さらに質問をする。


「なるほど、その黒死教がイストリアに固執理由ってなんだと思いますか?」


ドールフが少し考え込んで答える。


「そうですな、例えば、貴殿のすぐ後ろで誰か騒いでいたら、あなたはそちらが気になりますね?」


もちろんだと、和田が頷く。


「その時に、私があなたに襲い掛かったら? あなたは、どちらにも気を付けて相手をする必要があるでしょう?」


その答えにハッとする和田。


「そうか、イストリアが没落したり、また無法地帯に戻れば、サウドレシグやキレスジレドはそちらに目を向けるのか、その隙にウェスガルガンが動くと…」


和田の答えにドールフが満足気に頷く。


「そう、その通りです。ウェスガルガンが動きやすい状況を作りたいのでしょうな」


討伐の協力の謝礼として、ドールフからも通行証をもらう。


やはり、陸路であれば陸軍のものの方が良い、との事だった。


ドールフも和田も、互いに礼を交わし、それぞれの進む方向へと出発する。


「ではワダ殿、ご武運を!」


ドールフを見送り、TTタンクを走らせる。

一日も早くアフテンスラットへ辿り着かねばならない。


最適なルートをドールフから仕入れたが、それでも国境まで七日はかかるであろう。


バストールの事も気掛かりである。


残り時間を嫌でも意識させられ、決意を新たにする和田であった。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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