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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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フードの奇襲!?

挿絵(By みてみん)




◼️ 森の奥から


砂漠の中を砂煙をあげ、TTタンクが駆け抜ける。

先程アポーツからの乗り換えで、ロークス連邦へ向け北上している。


計算では三日ほどでロークス連邦国境に着く想定だ。


バストールの額には玉の汗が吹き出しており、息も上がっているように見えた。


「大丈夫なのか?」


バストールの肩に和田が手を置く。


「小僧に心配されるほど弱っておらんわ」


まだ減らず口が出るくらいであるから、大丈夫なのだろうか?

こればかりは本人しかわかるまい。


「小僧、不本意ながらこの後の事、お前に任せるからな」


少し息が荒く、熱があるのか顔が赤いが、まだ元気はありそうだ。


「いや、あんたなら、しぶとく生き延びるだろ?」


和田も冗談めかして返すが、バストールも弱々しく笑うだけだった。


アップダウンがあるが、さほど揺れも無く快調に進む。

魔力電池も一日は余裕で持つので、安心して旅ができる。


ロークス連邦国境まで、あと半日というところだった。


「和田っち、なんか進めなくなってるでやんす」


すでに砂漠は抜けており、国境側の山脈へ続く、あまり状態の良くない道路で両側は深い森だ。


止まったTTタンクの前の道が、巨大な木や岩で塞がれている。


挿絵(By みてみん)


「何だこりゃ、崖も無いしどうしてこうなる?」


降りてきた和田が塞がれた道路を見て呟く。


「てる美、索敵お願いできるか?」

「わかったわ」


長野が目を閉じて意識を集中する。

最初はよくわからないが、徐々に人の気配が探知できた。


「んー、これ何となく嫌な感じ… えっと、反応が、両側に複数感じるわね」


やはり待ち伏せからの奇襲なのか?


長野の索敵スキルは、詳細までは把握できないが、感じとった内容から、敵か味方はわかる。


「じゃあすまんが、隠密で木の上にでも潜んでてくれ」


他に聞こえないように、長野だけに囁く。

頷いた長野は静かに姿を消した。


「皆んな奇襲に備えろ!」


全員が外に出る。

外山がTTタンクを小さくして荷物に仕舞う。


「タク! 壁を作れ!」


豊明の指示に、外山が無言で従う。


── ザザザザッ


豊明、葉山、外山の後衛部隊を壁が覆う。

しゃがんでいた葉山が何か呟いてる。


── ブーン


数匹の羽虫が飛び去った。

葉山は目を閉じて、羽虫の感覚を追っていた。


長野も隠密スキルを使い、静かに移動している。


── サソリ!


長野と葉山が同時に心の中で叫ぶ。

以前砂漠で見た暗黒蠍を、二人は同時に見つけていた。


「和田にゃん、砂漠にいた暗黒蠍がたくさんいる!」

「なんだと、なんでこんなところに…」


以前はサンドワームのおかげで、かなり助かったのだが、今回は期待もできない。


ここまで砂漠から連れてきたのだろうか?

いずれにしても、暗黒蠍が自発的に来るわけはないので、やる事は決まった。


こんな事をやるのは黒死教しか考えられない。


「術者をやるしかないな。そうすれば、蜘蛛の子を散らすじゃないが、サソリも散らせるだろう」


◼️ 暗黒蠍再び


── すぅぅぅっ


和田は大きく息を吸い込んだ。


「てる美!術者をやるんだ!」


周囲に和田の声が響き渡る。

術者が離れると、暗黒蠍の制御もできないから、逃げ出すことはできない。


その点を読み切った和田は、切り替えて長野へ大声でで伝達した。


すぐに行動を開始する長野。


── シュッ


隠密状態から矢が放たれ、フードの男が倒れていく。

見渡す限りは倒したと思うが、暗黒蠍はまだ止まらない。


索敵の反応がまだ残っている。

おそらく、道を挟んだ反対側だろう。


さっと隠密に切り替えて、長野が反対側へ移動を開始する。


一方で、肩で息するバストールが何かを感じたようだ。


── フラフラとバストールが進み出る


「よっこらせ」


バストールがハンマーを肩に乗せて、目を閉じて辺りを窺う。


── カサカサ


本当に僅かな音だった。

和田やバストールの左方向から、囁きにも似た音がした。


── ブゥオォォン


凄まじい風切り音と共に、ウォーハンマーが疾風を巻き起こす。

木々は裂け、木の葉が荒れ狂う。


挿絵(By みてみん)


── バーン


激しい衝突音は、暗黒蠍に衝突した疾風だった。


最初に当たったものは、胴が千切れ、その後方にいた蠍は鋏角の左右が吹き飛ぶ。


「ふん、虫ケラ風情がな、退場願おうか」


風魔法を纏わせたウォーハンマーからの一振り。


弱っているとは思えない、バストールの技に周りが息を呑む。


しかし、肩で息をするのは変わらない。


「おい、バストールさんよ、あんまり無理するなって」


「小僧、何度言わせる? 三百年鍛えたんだぞ? 鍛え方が違うわ!」


和田もこの状況で止めても無意味と考え、大人しくサポートに徹する。


「んー、反対側はてるにゃんが全部片づけた見たい」


残るは半分らしい。


「葉山、奴らの場所わかるか?」


「この方向にゃ! でも、なんだろ二、三よくわからないのがいる!」


葉山が指差す方向に目を向ける。

確かに木々が濃い場所のようだ。


「ハルにゃんと話したら、向こうにも隠密使いがいるかもって」


なるほど、そうなると隠密使いが本命の術者か。

そして、葉山の肩に手を置く和田。


それが合図となって、意図を察したメンバーが手を繋ぐ。


(これなら声出さずに話せるからな! いいか、まずは、タクちん、アイスランスを時計回りに順番に打ち込んでくれ!)


(順番に打ち込むと、逃げられるでやんす)

(それでいいんだ。頼む)


ここで和田がチラリとバストール見る。

息は荒いが、まだ大丈夫そうに見える。


周囲にカサカサ音が増えた。

暗黒蠍も迫ってきている。


(あとは合図するから、バストール、さっきヤツをこの方向にぶちかましてくれ!)


そう言って和田が方向を指す。


(フン、何発でもかましてやるわい!)

(よし、じゃあ始めるぞ!)


和田の手が振り下ろされ、外山がアイスランスを放って行く。


二秒くらいの間隔で、少しずつずらしながら打ち込まれて行く。


「タクちん、そこまで! バストールいまだ!」


再度和田が手を手を挙げ、合図を送る。


── ブゥオォォン


凄まじい烈風が、木々を薙ぎ倒す。

悲鳴があがり、フードが現れて倒れる。


暗黒蠍も数匹弾け飛ぶ。


アイスランスで追い込んで、その先にバストールの斬撃を打ち込んだのだ。


どうだ!?


しかし、暗黒蠍は止まらない。


「く、まだどこかに潜んでるのか!?」


── 突然、和田の後方に火の玉が発生している


バストールのタイミングの見極めで、夢中になっていた和田は気付けない。


その間にも火の玉がどんどん大きさを増す。


術者が特大級のファイヤーボールを練っているようだ。


── 隠密移動の長野にも異変がおきていた


(どうしたの!? 左手が!?)


長野の左手に、光の煌めきが現れていた。


(きっと、これを使えってことなのよね…)


長野は戦っているであろう仲間たちを思い浮かべる。


── チリチリ


長野の左手の光が強くなる。

胸の中からも暖かい力が漲ってくる。


そして長野が静かに手を挙げた。


── ボファ


禍々しい火の玉が和田に迫っていた。

異変に気がついた和田が振り返り、巨大な火の玉に驚愕する。


「和田殿!」


増山が祝福の魔法を発動する。

魔法防御を少しでも高めるために。


外山も壁を作ろうと動き出すが、間に合わない。


「和田っち!」


その場にいた全員が、次に起こるであろう被害に目を閉じた。


── シャキーン


その時、金属的な音が響き渡る。

キラキラと地面が光ると、魔法陣が浮かび上がる。


和田を中心に、メンバー全員を覆う半球が誕生していた。


挿絵(By みてみん)


── プシュッ


あっけなく火の玉が消え失せる。

半球に触れた途端の出来事だった。


衝撃が来る!

そう待ち構えていたが、何も起こらず目を開けるメンバー。


シャボン玉のような虹色に煌めく半球に驚く。


暗黒蠍も数匹が襲いかかってきているが、半球に近づく事ができずにいる。


「うわ、これなんにゃ!?」


葉山が半球を内側からツンツン触っている。


「そっか、これがてる美の言ってたやつか…」


和田も話は聞いていたが、こんな風になるとは思っていなかった。


── ギャアァァァ


その時、和田の後方の木からフードが落下していた。

背中には矢が刺さっている。


それを合図に、暗黒蠍の動きが緩慢になり、和田たちへの興味も失ったようだ。


「ふう、危なかったわね。火の玉出してるフードが見えたから急いで来たの」


隠密を解いた長野が現れる。


「てる美、助かった!」


やれやれとへたり込む和田。


長野の索敵と、葉山の感覚共有で探ってみたが、残党はいないようだ。


「タクちん、暗黒蠍このままにはできないから、砂漠に送り返しといてくれ」


「わかったでやんす!」


「あー、タクちん悪い、道塞いでる木とか、岩も頼むな」


「人使い荒いでやんすね!」


ぶつぶつ言いながら、アポーツをかけまくる外山。


ただ一つの嬉しい誤算が、長野の防御があまりに強力で、和田としては非常に心強かったことだ。


今後もこのような黒死教の襲撃がある、これは間違いないだろう。


バストールが無口なのが気になるが、何とか最初の妨害は乗り切った。


黒死教をぶっ潰す、そんな意気込みでやるしかない。

そう決意を新たにする和田であった。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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