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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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シーサーペント

挿絵(By みてみん)





◼️ ソルの港で途方に暮れる


「にゃー、やふはり、おじふあの、イカ、うまし」

「こんな時に良く食えるよな…」


クラーケンの串を両手に握りしめ、一心不乱にがっつく葉山。

それを見て、はあ、とため息の和田。


「和田殿、やっぱり向こうの漁師もダメでした…」


増山の報告に続き、長野、外山、豊明、手分けして漁師に当たったが、皆断られていた。


「悪いことは言わん、漁船なんかじゃ歯が立たないよ。海軍でも連れて来ないと」


クラーケン焼きの親父も、見かねて声をかける。


「親父さんとこのクラーケンって、どうやって仕入れてるんだ?」

「これはキレスジレド経由で回ってきたもんで、海軍が取ったものだよ」


なるほど、漁師が取るものでは無かったのかと、納得する。


「あとは、弱った小さいクラーケンなら、運が良ければここいらでも取れることはある。だが、普通のクラーケン相手だと漁船では無理だ。バラバラになっちまう」


という事で、全ての漁師に断られて途方に暮れていた。


「仕方ないな、じゃあキレスジレドに行って見るか?」

「キミさん、当てはあるの?」


長野の問いに、聞いてくれるなという表情の和田。


「わぁ、みんなこれ見てよ。可愛いにゃ〜」


挿絵(By みてみん)


いつのまにか葉山が海に入っていたが、何かそばにいる。

隣に緑色の龍のようなものがいる。


── キュー


葉山が撫でると、可愛らしく泣いている。


「おったまげた! シーサーペントじゃないか!? まだ子供だが、親いたらあんたらやばいぞ? クラーケンよりおっかない」


クラーケン焼きの親父さんが叫ぶ。


「シーサーペント、海龍か! なんでそんなものが!? 葉山、それどうしたんだよ!」

「知らないよ、ここにいたら泳いできたんだにゃ!」


それにしても葉山に良く懐いている。

葉山が走ると、鳴き声を上げて追いかけていく。


◼️ 大国の海軍少佐


全く何処に行ったんだ!?

少し目を離した隙にいなくなってしまった。


以前から脱走癖もあり、かなり注意していたのだが。

まさか港町の方に行ったのだろうか?


仕方ない、予定外であるが寄港せざるを得ない。

先に緊急で寄港連絡の小舟を出し、接岸の連絡を入れた。


接岸して簡単な梯子を掛ける。

その梯子から一人の男が飛び降りた。


挿絵(By みてみん)


白い詰襟の軍服は清潔であり、首元には階級を表すのか、黒地に赤い線の入った軍証がアクセントとなっている。


「よし、俺は素早く見回ってくる。海上にも警戒し、見落としの無いように」

「はっ、承知であります。ザルツ少佐はどちらへいらっしゃいますか!?」


ザルツは走りながら答える。


「やつは砂浜が好きだからな、そちらへ行ってみる」


そういうと、ザルツはかなりの速度ではしりだす。

やっとの思いで手に入れた、この先の貴重なものだからだ。

ロークス連邦の威信にかけて探し出す。


砂浜の方へ急ぐザルツの目は、緑色の物を捉えていた。


(やはりな、砂浜にきていたか…)


さらに近づくザルツは、驚愕の叫びを上げる。


(まさか!? 警戒心も強く、人に懐くはずはないんだぞ…)


その目線の先には、楽しそうに戯れる葉山とシーサーペントの姿があった。


驚きに硬直したザルツだが、見つかった事に安堵した。

しかし、彼らは何者なんだ?


(男が三人、女性も三人。ふむ、冒険者か?)


ザルツは軍人の癖で、どのような時も状況を細かく観察する。


(ん? あれは何だ?)


乗り物であるようだが、馬車とは少し違う。車輪は黒く、馬を繋ぐ事もできないようだ。


(どうやって動かすんだ?)


「ダハハハハ、どうやら貴殿にはTTタンクの良さがわかるんですぞ!」


突然話しかけられて、ザルツは困惑した。


「失礼した、あまりに珍しくてつい。これは馬車ではないですよね?」

「これは魔道の力をトルクに変換して走る、画期的な自動車ですぞ!」


ザルツはキョトンとしている。


(魔道を、とるくに、変換? なにを話してるんだ?)

(じどうしゃ? それはなんなんだ?)


はっとして、我に帰るザルツ。


「あ、申し遅れました。私はロークス連邦 海軍少佐のザルツと申します。このようなものには詳しいと自負してましたが、これは…"とるく"とは?」


「ダハハハハ、なるほど、おいタク来い! この方にわかりやすくだな…」


異変を察知した和田が強制で割り込む。


「だぁー、待った。ザルツさんですね、私は和田と申します。こういう者です」


和田がギルド登録証を見せる。


「ゴールドの冒険者、イストリア! という事はもしや先日ゴールド冒険者が誕生したと聞いてますが…」


どうも、と頭を下げる和田。


「これはですね、魔力を力に変換して走るんですよ。私も詳しい仕組みは知らないですがね。馬も必要なく、便利ですよ」


豊明と外山がもっと詳しく説明するとうるさいが、和田がそれを制する。


「な、なるほど、そのような物はどちらで購入されたと?」

「あー、そこの二人が作りまして…」


「そ、そんな物が…」


ザルツが衝撃を受け、驚愕の声が漏れる。

ただ、自分の役割を思い出す。


「失礼しました、私が来たのはですね、あちらの…」


ザルツはシーサーペントを見る、そして、視線が葉山に向かう。

まじまじと葉山を見つめたとき、ザルツに本日何度目かの衝撃が走る。


(な、なんと可憐な…)


「あちらの? あ、シーサーペント?」


ザルツはぼーっとしている。


「ザルツさん?」


葉山はいつのまにか、またクラーケンの串を両手に持ち、むしゃむしゃ食べている。

時折りシーサーペントにも、クラーケンの身を与えている。


シーサーペントも、キューキュー鳴き声をあげ、嬉しそうに食べていた。


(ああ、なんと、愛おしいのだ…)


あまりの反応の無さに、和田がザルツの肩に触れる。

そこではっとしたザルツ。


「し、失礼しました。シーサーペントを巧みに操るあの方は?」

「あ、そっちですか。うちのテイマーでして、葉山と言います」


(ハヤマ…なんとも不思議な響き…全てが新鮮だ!)


◼️ 葉山、海軍少佐をテイムする


(く、任務に集中せねば…だが…ああ、ハヤマ…)


増山と長野がヒソヒソと話している。


「てる美さん、あのザルツという軍人さん、あのくらいわかりやすかったらいいのにね」

「やだ、タエさん…でも、正直そう思っちゃいます」


埒開かないと思った和田は、葉山の元へ歩く。


「なあ、葉山。多分そのシーサーペントのことで来たと思うぞ。どうせいきなりテイム状態なんだよな?」


「僕、何もしてないんだにゃ」


葉山の声に反応しているザルツ。


「じゃあさ、その子なんて言ってるか通訳してあげて」

「んー、いつも閉じ込められてつまんないから、もっと僕と遊びたいって言ってる」


それを聞いて、更にザルツに衝撃が走ったようだ。

ビクッ、ビクッと身体が反応した。


「は、ハヤマさん、私ザルツです。あ、あの、そ、その…」


「にゃ?」


更に反応するザルツ。

これはダメだ、という空気に葉山とザルツ、シーサーペントを残して、少し距離を置く面々。


「葉山、その方が落ち着くまでお相手よろしく!」


和田はそう言い残し、行こ行こと戻って行く。


浜から上がって、みんなTTタンクに腰掛け、よくわからないやり取りを見ていた。


何か話すたび、ザルツが反応している。


(これは、あれだ…理想的な、とてもいい女性(ひと)だ)


ザルツは海軍少佐ということもあり、普段対する女性は、貴族令嬢や豪商や権力者の関係者などだった。


ザルツ曰く、彼女たちは"面白みのない女性"なのだ。

控えめで、男性を立てる、出しゃばらない。そして、政略結婚であろうと、何も思わない。


ザルツから見れば、そういった女性は何とも退屈な女性なのだ。


(ああ、ハヤマは見ているだけで楽しい、飾りもしない、媚びもしない…)


どうやら、葉山はこの世界で一二を争う海軍の少佐をテイムしてしまったらしい。


「俺ら、何を見せられてんだろうな?」

「和田殿、確かにそれはありますが、和田殿もちゃんと考えてくださいね」


増山のはあというため息。

長野は知らないと、横を向いている。


「タエちゃんさ、たまにそういうのちょいちょい入るけど、ほんとなんなの?」

「さあ、てる美さんに聞いてみたら?」


顔を赤らめ、てる美はどこか歩いて行った。


豊明と外山は、どうやればTTタンクの燃料効率が上がるのか、議論している。


これはこれで、のんびりとしていいのだが。


ソルの港で一時の平和を楽しむ一同だった。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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