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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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まさかの大先輩の正体!?

挿絵(By みてみん)




◼️ どっちにしても大先輩らしい!?


「ダハハハハ! こんな仕切りまで作って、本格的な温泉になってますぞ!」


チガンの実がどこにあるかわかるのであれば、一旦温泉に戻ろうとなった。

勝手に脱衣所やら、棚やらを作った事を詫びたが、本人大喜びである。


「しかし、タク! やるではないか! アポーツに造形魔法、いやはや驚きですぞ!」

「豊っちこそ、小生の話がわかるとは、恐ろしいでやんす」


この二人、少し語り合った、いや本人達は少しと言い張るが、和田は聞くのを諦めるほど、熱く語っていた。


挿絵(By みてみん)


そして、お互いを豊っち、タクと呼び合う始末。

側から見れば、祖父と孫のようなのだが。


「じゃあお湯入れるから、機械動かしてくるか」

「あ、キミさん、私も見せて!」


豊明と外山の"熱い"話が聞こえるが、お湯を入れる方が先だ。

和田と長野が"設備室"と書かれた部屋に入る。


少し埃っぽいが、ボイラーや電気設備などが以前と同じく鎮座している。


「へえ、少し古いけど、ちゃんとしてるわね」

「そうなんだ、発電機動かさないとな」


発電機のスターターに手を掛ける和田。

その時、長野が機械のプレートを指で擦る。


「キミさん、ちょっとこれ、見てよ」

「ん?」


長野が指差すプレートには"豊明電気工業"の名前が。


「これ、私達の会社の旧名よ。会社の資料で見た事ある……あ、豊明正成ってなんかひっかかるのよね」


「なんだって、なにか因縁というか、俺らの会社何かあるのか?」


「豊明…正成…なんだっけな。あ!そうだわ。会長さんの弟さんよ!?」


「なんだって!? 機械動かしたら戻るぞ」


色々謎はあるものの、発電機を動かしボイラーとポンプも動かす。


── お湯が溜まり、いざ温泉へ


豊明に会社の事を確認すると、まあ待てと、風呂に浸かって話そう、との事だった。

お湯も溜まったので、みんな温泉に駆け込む。


「やっぱり日本人は温泉ですぞ!」

「いやー、生き返るよね」


挿絵(By みてみん)


ほっと一息ついていると、女湯からも歓声が聞こえる。


「キミさん! まさか異世界で温泉とか、なんて最高なの!」

「ハルにゃんも、気持ちいいって!」


葉山の肩に乗って、ワーラット/大賢者もリラックスしている。


「さて、豊明さん、色々聞かせてくださいよ」

「うむ、そうだな…」


◼️ 豊明の過去から現在


豊明から聞いた事は、次のようなことだった。


召喚された当時、五十二歳だった豊明。

その年齢でも、会社ではトップのエンジニアであり、開発室・室長として一線で活躍していた。


ちょうど、遠心分離機の最新のデジタル表示に対応しようと、徹夜も覚悟で開発している時だったらしい。


── ブーン


鈍い音を立てて遠心分離機が回転している。

回転が上がっていくに連れて、音も高くなる。


回転数が最高値に達した時、遠心分離機と豊明の周囲に黒い靄と歪みのようなものが出現した。


なんだろうと、歪みに手を触れる豊明。


── チリチリ


(なんだ、遠くからなのか? 頭の中なのか? 音がしますぞ!)


歪みが大きくなり、黒い靄がボフッと音をたてて吹き出す。


── シュウン


ジェットコースターなど、急降下するときの浮かぶような感覚が襲ってきた。


その直後、豊明は消えていた。


── シュタッ


真っ暗な中に、豊明が着地したことだけわかった。

遠くに、微かな光のようなものが見える。


豊明は光に向かって歩き出す。


やがて、薄い光の線が長方形にかたどっている場所にきた。

手探りで探ると、ドアノブと思われる取手を見つける。


思い切ってノブを回してドアを開けた。


── ガチャリ


眩しい!

目が慣れるまでは見えそうもない。


それから、大賢者の前に現れたのはいいが、全く何を言っているのかわからない。

言葉がなんの言語なのか? 全くの不明な状況から、三年をかけて言語を習得したのだと言う。


さすがはトップエンジニアで、こう言う逆境には燃えてくるらしい。

そして、今後の国の役に立ちそうな資源を探して、フィールドワークに出かけているということだった。


「豊明さん、こっちの言語自力で覚えたんですか?」

「ダハハハ、まあそういうのも楽しいですぞ!」


苦笑いの和田に、豪快に笑い飛ばす豊明。

指輪の力で言語も気になったことない和田だが、自分がいきなり外国に放り出されたとしたら、かなり困ることだろう。


「ところで、オロチを解き放ったってことなんですけど、どういうことですか?」

「実はこの温泉を作っているとき、ネズミがかなり出てな。あまりに荒らされるので、蛇をこちらに持ってくればいいかなと、で”時空の扉”開けたら大蛇が出てきたんですぞ!」


「時空の扉ってなんですか?」

「ワシから説明しようかの、この男はな、不干渉と時空渡りという、二つのスキルを持っておる。自身の意識を向けて扉を開けるとき、時空を渡ることができるのだ」


なんとも破格なスキルだと唸る和田。


「多分、蛇のほうに意識が行き過ぎたんですぞ!」

「いや、どんだけ凶悪な蛇を想像したんでしょうね」


ということは、どこの時空へ渡ったのか知る由もない。

さらにパラレルワールドなのか、日本に近い異世界なのか、答えは誰にもわからない。


「ダハハハ、まあなんとか倒そうと追いかけまわしたが、どうすることもできなかったんですぞ!」

「いやあ、あれはほんと強敵でしたよ、死にかけました」


和田が左腕を(さす)りながら豊明に嫌味たらしく言っている。


「ダハハハ、まあ許せ、この通りですぞ!」


── バシャバシャ


豊明が笑いながら和田の頭を叩く。

まあ、しょうがないなと、何も言う気が失せる和田。


「あの、ところで、豊明さんて豊明電気工業の開発室長さんなんですよね?」

「ん? どうして知ってるんですぞ!?」


「設備室で見ましたよ。機械のプレートに書いてますし、俺も豊明電気工業、今は豊明メディテックって名前変わってますけど、そこの社員でした」

「ダハハハ、なんだ後輩なんですぞ! ん? 名前が変わった?」


名前が変わったと聞き、打って変わって神妙な豊明。


「はい、豊明さんがいなくなった後ですね。医療系メインになったので」


明らかにトーンダウンする豊明。


「そうか、心配はしていたが…とはいえ、もうこの世界を見たら戻ることはできんな。魔法と科学の融合が今の生きがいなんですぞ!」

「うちらも、もう戻るつもりないです。こっちで生きていたいって。みんな」


しんみりしてしまったが、豊明も同じようにこちらで生きていくことを覚悟してるのだ。

それはよくわかった。


「そうそう、チガンの実だったな。あれは、高濃度のアルコールができる実でな、ここのポンプや発電機の燃料もチガンの実から作ってるんですぞ!」

「そうだったんだ、てことは過去にかなりの量手に入れているってことでしょう?」


「ああ、採れる場所もわかるし、大丈夫ですぞ!」


■ つながっていくもの


「タク、見せてほしいですぞ!」

「外で見せるでやんす」


外山の馬車を見たいという豊明。

電車の模型をこちらに持ってきて、変容して馬車となったことを聞き、豊明がかなりの興味を示している。


「これをこうして…いいでやんすか」


外山が魔力を込めると、小さかった馬車が大きくなっていく。


「ダハハハ、これはいい! 和田くん、増山くんの持ってきたものもみせるんですぞ!」


和田の黒い石や、増山の四角いものを興味深く観察する。

以前こちらの世界に来るとき、実験で何がどう変わるか持ち込んだことがあった。

その時、増山は何を持ってくるかわからず、その辺にあった砥石を持ってきたのだった。


「ふーむ、増山くんこれは…魔力電池として使えるかもしれんですぞ! この馬車は、馬の代わりにこの電池で走るんですぞ!」


そういうと、馬車の解体に取り掛かり、叩いたり拡大鏡で眺めたり、作業に没頭している。

唖然として豊明を見ている一同だった。


「まあ、こうなるともうだめじゃな。いったん好きにさせるしかなかろう」


前にもこういうことがあったのか、ワーラット/大賢者があきらめたようにため息をついていた。


挿絵(By みてみん)


日も暮れた遺跡を背に、豊明が出す解体音が心地よく響いていた。



本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n8527mg/

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