まさかの大先輩の正体!?
◼️ どっちにしても大先輩らしい!?
「ダハハハハ! こんな仕切りまで作って、本格的な温泉になってますぞ!」
チガンの実がどこにあるかわかるのであれば、一旦温泉に戻ろうとなった。
勝手に脱衣所やら、棚やらを作った事を詫びたが、本人大喜びである。
「しかし、タク! やるではないか! アポーツに造形魔法、いやはや驚きですぞ!」
「豊っちこそ、小生の話がわかるとは、恐ろしいでやんす」
この二人、少し語り合った、いや本人達は少しと言い張るが、和田は聞くのを諦めるほど、熱く語っていた。
そして、お互いを豊っち、タクと呼び合う始末。
側から見れば、祖父と孫のようなのだが。
「じゃあお湯入れるから、機械動かしてくるか」
「あ、キミさん、私も見せて!」
豊明と外山の"熱い"話が聞こえるが、お湯を入れる方が先だ。
和田と長野が"設備室"と書かれた部屋に入る。
少し埃っぽいが、ボイラーや電気設備などが以前と同じく鎮座している。
「へえ、少し古いけど、ちゃんとしてるわね」
「そうなんだ、発電機動かさないとな」
発電機のスターターに手を掛ける和田。
その時、長野が機械のプレートを指で擦る。
「キミさん、ちょっとこれ、見てよ」
「ん?」
長野が指差すプレートには"豊明電気工業"の名前が。
「これ、私達の会社の旧名よ。会社の資料で見た事ある……あ、豊明正成ってなんかひっかかるのよね」
「なんだって、なにか因縁というか、俺らの会社何かあるのか?」
「豊明…正成…なんだっけな。あ!そうだわ。会長さんの弟さんよ!?」
「なんだって!? 機械動かしたら戻るぞ」
色々謎はあるものの、発電機を動かしボイラーとポンプも動かす。
── お湯が溜まり、いざ温泉へ
豊明に会社の事を確認すると、まあ待てと、風呂に浸かって話そう、との事だった。
お湯も溜まったので、みんな温泉に駆け込む。
「やっぱり日本人は温泉ですぞ!」
「いやー、生き返るよね」
ほっと一息ついていると、女湯からも歓声が聞こえる。
「キミさん! まさか異世界で温泉とか、なんて最高なの!」
「ハルにゃんも、気持ちいいって!」
葉山の肩に乗って、ワーラット/大賢者もリラックスしている。
「さて、豊明さん、色々聞かせてくださいよ」
「うむ、そうだな…」
◼️ 豊明の過去から現在
豊明から聞いた事は、次のようなことだった。
召喚された当時、五十二歳だった豊明。
その年齢でも、会社ではトップのエンジニアであり、開発室・室長として一線で活躍していた。
ちょうど、遠心分離機の最新のデジタル表示に対応しようと、徹夜も覚悟で開発している時だったらしい。
── ブーン
鈍い音を立てて遠心分離機が回転している。
回転が上がっていくに連れて、音も高くなる。
回転数が最高値に達した時、遠心分離機と豊明の周囲に黒い靄と歪みのようなものが出現した。
なんだろうと、歪みに手を触れる豊明。
── チリチリ
(なんだ、遠くからなのか? 頭の中なのか? 音がしますぞ!)
歪みが大きくなり、黒い靄がボフッと音をたてて吹き出す。
── シュウン
ジェットコースターなど、急降下するときの浮かぶような感覚が襲ってきた。
その直後、豊明は消えていた。
── シュタッ
真っ暗な中に、豊明が着地したことだけわかった。
遠くに、微かな光のようなものが見える。
豊明は光に向かって歩き出す。
やがて、薄い光の線が長方形にかたどっている場所にきた。
手探りで探ると、ドアノブと思われる取手を見つける。
思い切ってノブを回してドアを開けた。
── ガチャリ
眩しい!
目が慣れるまでは見えそうもない。
それから、大賢者の前に現れたのはいいが、全く何を言っているのかわからない。
言葉がなんの言語なのか? 全くの不明な状況から、三年をかけて言語を習得したのだと言う。
さすがはトップエンジニアで、こう言う逆境には燃えてくるらしい。
そして、今後の国の役に立ちそうな資源を探して、フィールドワークに出かけているということだった。
「豊明さん、こっちの言語自力で覚えたんですか?」
「ダハハハ、まあそういうのも楽しいですぞ!」
苦笑いの和田に、豪快に笑い飛ばす豊明。
指輪の力で言語も気になったことない和田だが、自分がいきなり外国に放り出されたとしたら、かなり困ることだろう。
「ところで、オロチを解き放ったってことなんですけど、どういうことですか?」
「実はこの温泉を作っているとき、ネズミがかなり出てな。あまりに荒らされるので、蛇をこちらに持ってくればいいかなと、で”時空の扉”開けたら大蛇が出てきたんですぞ!」
「時空の扉ってなんですか?」
「ワシから説明しようかの、この男はな、不干渉と時空渡りという、二つのスキルを持っておる。自身の意識を向けて扉を開けるとき、時空を渡ることができるのだ」
なんとも破格なスキルだと唸る和田。
「多分、蛇のほうに意識が行き過ぎたんですぞ!」
「いや、どんだけ凶悪な蛇を想像したんでしょうね」
ということは、どこの時空へ渡ったのか知る由もない。
さらにパラレルワールドなのか、日本に近い異世界なのか、答えは誰にもわからない。
「ダハハハ、まあなんとか倒そうと追いかけまわしたが、どうすることもできなかったんですぞ!」
「いやあ、あれはほんと強敵でしたよ、死にかけました」
和田が左腕を摩りながら豊明に嫌味たらしく言っている。
「ダハハハ、まあ許せ、この通りですぞ!」
── バシャバシャ
豊明が笑いながら和田の頭を叩く。
まあ、しょうがないなと、何も言う気が失せる和田。
「あの、ところで、豊明さんて豊明電気工業の開発室長さんなんですよね?」
「ん? どうして知ってるんですぞ!?」
「設備室で見ましたよ。機械のプレートに書いてますし、俺も豊明電気工業、今は豊明メディテックって名前変わってますけど、そこの社員でした」
「ダハハハ、なんだ後輩なんですぞ! ん? 名前が変わった?」
名前が変わったと聞き、打って変わって神妙な豊明。
「はい、豊明さんがいなくなった後ですね。医療系メインになったので」
明らかにトーンダウンする豊明。
「そうか、心配はしていたが…とはいえ、もうこの世界を見たら戻ることはできんな。魔法と科学の融合が今の生きがいなんですぞ!」
「うちらも、もう戻るつもりないです。こっちで生きていたいって。みんな」
しんみりしてしまったが、豊明も同じようにこちらで生きていくことを覚悟してるのだ。
それはよくわかった。
「そうそう、チガンの実だったな。あれは、高濃度のアルコールができる実でな、ここのポンプや発電機の燃料もチガンの実から作ってるんですぞ!」
「そうだったんだ、てことは過去にかなりの量手に入れているってことでしょう?」
「ああ、採れる場所もわかるし、大丈夫ですぞ!」
■ つながっていくもの
「タク、見せてほしいですぞ!」
「外で見せるでやんす」
外山の馬車を見たいという豊明。
電車の模型をこちらに持ってきて、変容して馬車となったことを聞き、豊明がかなりの興味を示している。
「これをこうして…いいでやんすか」
外山が魔力を込めると、小さかった馬車が大きくなっていく。
「ダハハハ、これはいい! 和田くん、増山くんの持ってきたものもみせるんですぞ!」
和田の黒い石や、増山の四角いものを興味深く観察する。
以前こちらの世界に来るとき、実験で何がどう変わるか持ち込んだことがあった。
その時、増山は何を持ってくるかわからず、その辺にあった砥石を持ってきたのだった。
「ふーむ、増山くんこれは…魔力電池として使えるかもしれんですぞ! この馬車は、馬の代わりにこの電池で走るんですぞ!」
そういうと、馬車の解体に取り掛かり、叩いたり拡大鏡で眺めたり、作業に没頭している。
唖然として豊明を見ている一同だった。
「まあ、こうなるともうだめじゃな。いったん好きにさせるしかなかろう」
前にもこういうことがあったのか、ワーラット/大賢者があきらめたようにため息をついていた。
日も暮れた遺跡を背に、豊明が出す解体音が心地よく響いていた。
本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。
あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。
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