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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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異世界の大先輩現る!?

挿絵(By みてみん)




◼️ 目覚めと苦いポーション


玉のような汗が浮かんでいる。

顔は赤く、左腕はドス黒く腫れ上がっている。


汗を拭き取り、水に浸した布切れを絞り、左腕の布切れを交換する。

布切れは驚くほどの熱を帯びていた。


挿絵(By みてみん)


(キミさん、大丈夫よね? 回復するのよね?)


長野は額の汗を乾いた布で拭き取った。

オロチを倒したのはいいが、和田がこの通り重症を負ってしまった。


増山がずっと付ききりだった。

祝福をずっと掛けていたが、先程限界に達して休んでいた。


その間長野が左腕を冷やしていたのだった。


「毒消し買ってきたにゃ!」


かなりの重症に、大賢者が毒消しが必要と言うので、葉山がアポーツで王都から入手してきた訳だ。


「ハルにゃんが、塗り薬もって言うから、ポーションと塗り薬買ってきたにゃ!」

「ポーション飲めるかしら?」


水袋から少しだけ口元に水を垂らす。

だが、水はだらりとこぼれ落ちるだけだ。


「ポーション貸して」


長野はポーションを口に含むと、和田に口移しで与える。


(これ、凄く苦くて、酸っぱい…でも、飲ませなきゃ)


なんとか垂れないように飲ませられたようだ。

塗り薬も左腕に擦り込んで行く。


「てるっち、少し休んだほうが…少しは寝ないと、てるっちが倒れるでやんす」

「そうね、もう少ししたら…」


そう言って和田を見つめる長野。

ポーションの効果か、汗が引いてきたように思う。


(私を独りにしたら許さないんだから…)


長野は和田の右手をしっかりと握り、自分の額に押し当てた。


── 二日後


長野は夢を見ていた。

過去の思い出。和田が消えてしまったあの日から…


(キミさん、なんで? どうしてなの?)


和田との連絡は途絶え、その訳は全く不明だった。

今は理由がわかったとはいえ、あの時は何があったかわからなかった。


(やだ、私を独りにしないで…)

(やだ…)


「おい、どうした?」


長野は肩を揺さぶられ目を覚ます。

半身を起こした和田が見下ろしている。


「あ、キミさん、起きてる!」


思わず和田に抱きつく長野。


「良かった、本当に良かった…」

「心配かけたな。もう大丈夫だ」


二日間、ポーションと塗り薬の効果で、左腕も腫れは引き、赤みはあるものの、ドス黒さは消えている。


「みんな、キミさん目が覚めた!」


長野が皆んなに聞こえるように、大声で叫ぶ。

その声に全員がやってきた。


「和田っち、タエ様とてるっちがずっと付ききりでやんした」

「僕だって、王都まで薬買いに行ったからねー!」


(なんだか、また皆んなに手間かけさせたな)


「和田殿、私ももっと強力な神聖魔法覚えないとですね、なかなか祝福が効かなくて参りました」

「タエさん、限界までキミさんに祝福掛けてたんだからね!」


「てる美さんだって、ずーっと付ききりで、ポーションを口…」

「タエさん、ストップそこまで!」


長野が、慌てて増山を止める。


「ん? どうした?」

「キミさん、気にしない」


怪訝そうな和田に、増山がニヤニヤしている。


「なんだ? なんか口の中、物凄く苦いんだよな…」

「はあ、和田殿、多分てる美さんも苦いと思いますよ?」


長野が顔を赤らめ、俯いている。


「なんだ? どうしたんだ?」

「キミさん、なんでもないから…」


回復したはいいが、何がなんだかわからない和田であった。


◼️ 先人


回復してしまえば、後は早かった。

ヒールを掛けてもらうと、もう完全とも言える状態だった。


「魔法って、本当に便利だな」


左腕を曲げたり、伸ばしたりしながら、しみじみと和田が話す。


「ハルにゃんが話しあるって」


葉山の肩に手を置く和田。


「大賢者さん、助かった。今回、危なかったよな?」

「相変わらず、無茶な事をするものよ。まあよい、それよりも、オロチのことじゃ」


なぜオロチという名前なのか?

和田も気になっていた。


「なあ、オロチって言えば、俺らの元の世界、日本で使われる大蛇な事なんだが…」

「うむ、その事じゃが…」


── 大賢者が過去の事を話して聞かせる


イストリアのため、大賢者は有用な人材の召喚を継続していた。


召喚は必ず成功することもなく、かなり気まぐれなものらしい。


今から十五年ほど前、一人の男が召喚されてきた。

男は様々な物を持ち込んだ。


和田達が持ち込んだ物は、この世界の物へ変容してしまう。


だが、この男は元の世界そのままに、持ち込んでいた。

それができるのも、男のスキルのせいだったらしい。


とある日、男は恐ろしいモノをこの世界に引き入れてしまった、と書き残してエトル山に消えた。


恐ろしいモノ、それが"オロチ"だったと。

書き置きによれば、十メートルはある大蛇で、猛毒を持つと。


── 話終えた大賢者はため息を吐く


「で、その男のその後は?」

「どうかの、もしかしたらオロチをこの山に封じるために、潜伏しておるかもしれん。責任感は恐ろしく強かったからな」


「名前とか言ってたのか? 歳は?」

「トヨアケ、名前がマサアシゲ? だったかの。五十いくつかだったかな」


となれば、もう七十近いと思われる。

しかし、こちらの人には、日本語名というのは発音しにくいようだ。


「あ、それなら、温泉遺跡って、何か関係あるのなな。日本語書いてあったし」

「おそらく、そうであろうな。それに、まだ生きておるだろうな。時の祝福を与えたから」


時の祝福…それは"時の牢獄"で大賢者たちが得たもの。


「ワシは不測の事態に備えて、時の祝福を持ち出していた。どの程度効果があるか未知数だったが、マサアシゲは有用な男だったからな」

「そんなに簡単に持ち出せるものなのか?」


「水滴と変わらんさ、一滴で百年の寿命を永らえる。ワシも何かあったらと、一滴分保管して持ち出したんじゃ」

「なるほど、じゃあまだ生きているかもな…」


ここいらで地理関係も、整理したい。

以前外山がコピー用紙にメモした地図を広げる。


「あれ、そう言えば、トヨアケさんとやらが持ち込んだものは、変容しなかったって、このコピー用紙はタクちんが持ち込んだはず。変容してない!」


「おそらくじゃが、コピヨシイとやらは、カミィなんじゃろ? だとすると、マサアシゲが既にカミィを持ち込んでおった可能性があるな。カミィへの不干渉が発生しておったと…」


話していると、何やら外が騒がしい。


「キミさん、なんかオロチ倒したのは誰だって、おじいさんが来てるんだけど」


長野がおじいさんを伴って入ってきた。


挿絵(By みてみん)


「やはりの、マサアシゲお主か!」


しかし、大賢者の声はマサシゲには届かない。


「私は豊明正成(トヨアケマサシゲ)と申すもの。オロチを倒したのは貴殿であろうか?」

「あ、和田と申します。まあ、倒したのは私ですかね」


豊明は深々と礼をする。


「諸事情あり、あの魔物をこの世界に放ってしまった。隙あらばと追いかけたが、私では倒す事もできず…」


「全く律儀な男じゃ、話せるようしてくれんか?」


そんな中、大賢者が直接話したいと言うので、和田が豊明の肩に手を置く。


「な、和田殿、どうされた?」

「マサアシゲよ、落ち着け、ワシじゃハルアットじゃ」


驚いた豊明はキョロキョロと辺りを見回す。


「あ、豊明さん実は…」


── これまでの経緯を豊明に説明する


「なるほど、そんな大事が起こっていようとは! この豊明、大賢者殿には大恩があるゆえ…」

「よいよい、マサアシゲ相変わらず話が長くなるわ」


コホンとワーラット/大賢者。なんとも咳払い姿が可愛らしい。


「ところで、マサアシゲよお主カミィを持ち込んだか?」

「カミィ?」


なんの事か考える豊明に、和田が答える。


「豊明さん、紙ですよ。資料とか、本とか何か紙の物って持ち込まれましたか?」

「ああ、確かに機材の説明書やら、本やら持ってきたてますぞ!」


ワーラット/大賢者がうんうんと頷く。


「やはりな、であればカミィは不干渉で持ち込まれ、そのまま認知されておるな」

「そうなんですね、ちなみにエトル山の裏の遺跡にある温泉、豊明さんが?」


豊明はぱっと笑顔になる。


「いかにも、オロチの追跡に明け暮れておったが、温泉に入りたいぞ! あの温泉は、かなりの自信作ですぞ!」


やっぱりと、長野を除く温泉遺跡を知る面々が頷く。


「温泉いいよなぁ、あ、そう言えば、俺ら勝手に温泉入ってしまいました。すみません」

「おお、気に入ったかな? 自分一人で使うには広すぎだし、全く構わないですぞ!」


── おお!


歓声を上げる一同。長野もワクワクを隠せない。


「ありがとうございます! じゃあ、はやいとこチガンの実探して、また、温泉入らせてください!」


「チガンの実? 場所はわかるですぞ!」


「「「「えっ?」」」」


なんとも、あっけなくチガンの実を知るという豊明。

この出会いが、今後の冒険を大きく変える事になるとは、誰しも思っていなかった。



本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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