鈍感おっさん、異世界でも変わらず
◼️ 次の素材は?
「解毒薬の素材もゲットできて、二つ揃った訳だが、次どうするかな…」
焚き火を囲み、大賢者交えて話すためにみな手を繋いでいる。
砂漠で一夜を明かすよりは、砦に戻ろうということで戻ったものの、宿屋などはないため外で野営となった。
外山がメモした解毒薬のメモを眺める。
・コカトリスの嘴
・叫ぶ草
✓暗黒蠍の尾
✓死霊の砂
・穿孔虫
・チガンの実
・嘆きの雫
「ワシのおすすめは、チガンの実かの。これは主ら一度行ったであろう、エトル山の先にある険しい山地で取れる」
「なるほど、ならエトル山まではアポーツで行けるな」
まとめてアポーツできるのは、本当に助かる。
「ちなみに、一番目のコカトリス嘴って、コカトリスって魔物のことだよな。強いのかな?」
「お主ら、グリフォンと戦っておったな。強さであれば同じくらいかの。ただ、コカトリスは厄介じゃな」
「というと?」
「石化じゃよ、対策しておかんとな、全滅すらあり得るぞい」
「どう対策するんだ?」
「異常耐性の装備、アイテムと石化解除のポーションじゃな」
対策ができるなら、攻略もできそうだと解釈した。
「なら、コカトリスの嘴は、対策でき次第でいいな」
「あの、素材の採取で一番難しいのはどれかしら?」
長野が控えめに尋ねる。
「一番難しいのは、既に手に入れておる。死霊の砂じゃな。次は嘆きの雫かの。これは、通常であれば奇跡でもなければ手に入らんな」
「通常であれば、って通常ではないのか?」
「お主がおるでな。まあでも、…チュー…こればかりはやってみるしかなかろう」
チュー吉もちゃんといるようだ。
だが、心なしか弱々しい気もする。あとどれくらいの時間があるのか?
「あれ、キミさん、死霊の砂って確か簡単にクリアしたって、言ってたよね?」
「まあな、そんな感じだったがな」
── はあ、と大賢者のため息
「前も言うたが、死霊の砂は死霊の望みを叶え、浄化した時にのみ現れるもんじゃ。そもそも死霊の望みを誰が知る? お主らは図らずも、ラーリニアの望みを叶えたからじゃ」
「本当に小生たちは、運がいいんだか悪いんだか、全くわからないでやんす」
一人納得いかない様子の外山が口を開く。
「まあ、そう言うでない。ワシの長い経験で考えても、恵まれておるほうじゃぞ?」
奇跡が必要なのに、恵まれているというのか。
「まあ、今は一つずつ確実にゲットして、嘆きの雫までに経験積まないとな!」
── 後は火を囲んでの雑談となった。野営地の夜が更けていく
◼️ 旅支度
翌朝、早速衛兵を訪ね、護送の件確認をした。
なんでも、護送を送る旨の早馬が来たそうで、本日夜には到着の見込みだという。
護送の件が確認できたので、王都に戻り報告をすることにした。
── イストリア・冒険者ギルド応接室にて
戻った和田は、ロンギスタンに内密で厳重な報告があることを伝える。
同席可能なのは、ロンギスタン、バストールのみと厳命した。
「ワダア様、サザルの村人の件含め、ありがとうございます。護送部隊も滞りなく出立できております」
「小僧、周りくどい話しはいいから、本題を聞かせろ!」
バストールはいつもの直球勝負だ。
予想はしていたが…
「実は…」
── ハルアットの諸事情を二人に明かした
「なんだと、このワーラットの中に? ガハハハ、やりおるのう。さすがはハルアット」
「バストール殿、笑い事ではありませんぞ!」
笑い飛ばすバストールと、困惑のロンギスタンであったが、両者共に安心しているように見えた。
「この事はくれぐれも内密に、陛下にもまだ伝えない方がいいと思う」
「もちろん、ワダア様の仰る通りかと。陛下の周りにはたくさんの耳目がありますので」
ロンギスタンが納得してくれたので、何も心配は無さそうだった。
「ここにも長居はしないほうが良いと思うので、すぐ旅支度に出ようと思う」
「行ってこい! どこに向かうかも聞かんほうが良さそうだな」
バストールは雑に見えて、実は配慮もできるようだ。
「じゃあ、次はいつ戻れるかだけど…」
「ガハハハ、留守は任せろ。帰る場所くらい守ってやる」
軽く手を挙げ、別れを告げる。
── 王都レッドアイの拠点
「落ち着く間もないが、明日の朝にエトル山に飛ぼう」
「和田殿、てる美さんの装備を整えた方が良いのでは?」
途中参加の長野は、弓を急遽手に入れたが、確かに間に合わせ感が否めないし、防具も新調したほうが良さそうだ。
「確かに、それは必要だな。だったら、明日の朝からゾスラーグ行ってからにするか」
「ゾスラーグって? どこなの?」
長野が興味深々だ。
「にゃー! イカ、イカァ、今度は絶対食べるにゃ!」
「イカ? どう言うことなの?」
「てるにゃんも食べようよ、絶対気にいるにゃ」
戸惑う長野を葉山が揺さぶる。
「ソルって港町で、葉山殿がイカ焼きにハマったでやんすよ」
「で、ずっとイカのこと言ってて、港町と聞くとうるさいんだよ」
長野にはちょっと理解不能のようだった。
「で、ゾスラーグで俺たちがレッサードラゴン倒すため、装備を一新したんだよ。てる美も強化しないとな」
「キミさん?」
(ん? てる美、顔赤いな…俺なんか変な事言ったのか?)
「え、どうした?」
「……もう、気づいてないならいい」
葉山がイカイカ騒ぐ中、増山がため息を吐く。
「和田殿、そう言うとこですよ…よーく、考えたほうがいいです」
(だから、なんなんだよ!)
これから始まる厳しい冒険の前に、賑やかな笑い声が響いていた。
◼️ ふたたびゾスラーグへ
潮の香りを含んだ風が、心地よく一行の髪を揺らす。
ゾスラーグの街中にアポーツする訳にいかず、少し離れた街道脇の林に着いた。
少し歩くと街の裏門が見えてきた。
「和田にゃん、お金お金、早く! イカが呼んでるにゃ!」
「わかった、ちょっと待てって。ほら、これで食ってろ」
お金を引ったくると、葉山が猛ダッシュする。
「あ、そうだ、和田殿、ちょっと買わなきゃいけないものありました。買い物終わったら、イカ焼き屋行って葉山殿捕まえておきます。ほら、タク殿行きますよ」
「ん、そうなの? わかったよ」
増山が長野にウインクする。
そして、和田には──はぁ、とため息。
「あの、ね、キミさん、ここ初めてだし、ちょっとだけ案内してくれるかな? なんて…」
「そうだよな、初めてだもんな。まあ、俺らも二回目だけど。前回船で来てろくに見てないからな、行ってみるか」
海沿いの美しい景色を眺めながら、何の用途か不明な道具や、口が二つある海魚、色艶やかな絨毯、芳醇な香りの果物、一つ一つに反応する長野だった。
(なんか、こういうの懐かしいな…若いころのことなんか、もう思い出すこともなくなってたな)
「「そういえば…」」
二人が同じ言葉を同じタイミングで発する。
「え、あ、キミさん、話して…」
「いいのか?」
うん、と頷く長野。
「いやさ、昔思い出してさ、何回か江ノ島行ったよな。ここなんとなく似てる感じするから」
「うん、私も思ってた…」
ふと目を止めた和田が露店の商品に近寄る。
「おばさん、これ綺麗だね、これなんなの?」
「あら、あんたこれ知らんかね? いま都でも大流行りさ。こうやって付けたらいいんだよ」
そう言って長野の髪に付けてくれた。
砂漠で見た月みたいに、ひっそりとした穏やかな緑。
髪留めだったようだ。
「おばさん、これもらうよ。これで足りる?」
「毎度あり、とても良く似合ってる。はいお釣り」
突然のことに驚いた長野は、そっと髪留めに触れる。
小さな髪留めは、ほのかに暖かく感じられた。
「え、キミさん?」
「いいんじゃない? 似合ってるしさ。プレゼントだ。よし、装備見に行こう!」
(キミさん、意識せずに言ったり、したりが本当に多いんだよな。本当に変わってないんだなぁ)
異世界で若返り、今まで失った時が取り戻せるんじゃないか?
そんな思いに、長野は微笑まずにはいられなかった。
本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。
あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。
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