表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/49

サウドレシグへ 悪戦苦闘

挿絵(By みてみん)





◼️ 想定外


「タクちん、どうだ!?」

「わ、どこに! 速過ぎて狙いが定まらないでやんす!」


砂地で土壁を出しても倒れる、魔法をかけるにも早過ぎる。

どうやっても暗黒蠍を止められないのだった。


暗黒蠍の動きに合わせ、砂塵が舞っている。それだけ素早いという事だ。


葉山のテイムも効果無しで、かなりの苦戦状態だ。


(ふむ、これはおかしい。ここまで素早くはなかったはずじゃ)


「にゃ? ハルにゃん? 何か気がついたかにゃ?」


── ガキーン


暗黒蠍のハサミが和田の盾を打つ。


「盾が無かったら終わりだったぞ…」


── ガンガン、ガキーン


瞬く間に防戦一方に追い込まれる。


「なんで小生達の戦闘って、いつもこんなんでやんす?」

「知るかよっ!」


── ガーン


和田が力を込めて打ち返す。


(これじゃユウノシンに顔向けできないな…)


「よし、戦法変える、援護してくれ!」


盾を増山に渡す。

和田が深呼吸して、集中に入る。


(お願い、当たってよ!)


挿絵(By みてみん)


わずかに長野の弦にあたる指が震える。


── カン


暗黒蠍の眉間に当たり、矢が跳ね返る。


「難しいわね。目が体に対して小さ過ぎなのよ!」


長野も慎重に狙いを定めるが、初めての魔物との対面でプレッシャーを感じる。

それに、動きの速さと的の小ささに苦戦していた。


和田は意識を研ぎ澄ますことに専念する。

数回の深く長い呼吸、そして目を開いた。

周囲の音が少しずつ吸収されていく。そして完全なる無音。


不意に、満天の星空と焚き火が目の前で燃え盛っていた。

だが、もうユウノシンはいなかった。


(あの時を思い出せ、早く動く、正確に斬撃を繰り出す…)


目を見開くと、砂の上とは思えない踏み込み、それから瞬発力が炸裂する。


── ザッザッ、バシュッ


暗黒蠍の右の後ろから二本目の足が吹き飛んだ。


「「「「やった!」」」」


皆んな一斉に歓声が上がる。


「油断するな、まだあと足七本、ハサミ二本あるぞ!」

「和田っち、ハサミじゃなくて、鋏角(きょうかく)でやんす!」


「ごちゃごちゃ言ってないで、援護よろしく! 動き鈍くなったら、アイスランスぶち込んで凍らせるぞ」


◼️ 巻き返し


(こいつは、なんだか消耗が激しいな…あと数回斬撃が叩き込めるか? 慎重に決めないと)


和田の額には汗が滲み、大きく肩で息をしている。

疲労感が半端ない。だが、更に集中していく。


「次はお願いよ!」


長野が狙いをつける。その時、弦にかかる指の震えが止まった!


── ビュン、グシャ


「ビンゴ!やっぱり目は柔らかいのね!」


暗黒蠍が鋏角を振り回す。だが、刺さった矢には届かない。

片目を失い、動きが鈍った暗黒蠍に和田が切り付ける。


── ザザザザッ、バシュ、バシュン


一気に右の前足、返す剣で左の前足も吹き飛ばす。

暗黒蠍の動きが、さらに緩慢になった!


── ギギギ


暗黒蠍は鳴くのか?

いや、どうやら歯ぎしりのようだ。

怒りなのか、威嚇なのか不明だが、命の危険を感じているのかもしれない。


「タクちん、ぶち込んでくれ!」

「イェッス! 行けぇ!」


── ドス、ビキキキキン


「和田殿、完全凍ってます!」


最前衛の増山が確認したから間違いないだろう。


「よっしゃ、タエちゃん剛腕でぶん殴れ!」

「行きます!」


── ゴシュ


鈍い音が響いた、様子がおかしい。


「和田殿、ダメです。凹んだだけです!」


行けると思ったが、ダメなのか!?

他に何ができる…


「熱衝撃にゃ! バーベキューにするにゃ!」

「え、葉山どういう!?」


まさか葉山から何かアドバイスが来ると思わず、一瞬戸惑ってしまった。


「イエッス、和田っち行ける行ける、あとで説明するでやんすよ。燃えろ!」


── ゴォォォォォォォォォッ


ファイヤーストームが巻き起こる。

何か弾けるような音が聞こえ、パチパチと音が鳴っている。


── ピキ、ピチィ、ピシッ


「和田殿!ひび割れが出てきました!」

「おっしゃ、今度こそタエちゃん、剛腕でぶちかませ!」

「行きます!」


── バリン、バシャッ


増山が拳を暗黒蠍の頭を打ち砕く。

ひび割れが大きくなるのを見た和田が動く。


── バシュ、ドサッ


全体が割れる前に、暗黒蠍の尾を切り落とす。


「これで一つ目の素材獲得だな、みんなお疲れ!」

「良かった、矢が当たってほっとしたわ」


独り難しい顔をしてるのは葉山だった。


「そういや、葉山さっきのは助かった! たくちん、説明してくれ」

「短時間で低温から高温に激しい差があるとき、膨張するでやんすよ」


「葉山、意外と物知りなんだな」

「たまたま知ってたんだ。僕だってテイムだけってわけじゃないにゃ!」


今回は葉山の活躍がなかったから、葉山なりに焦っていたのかもしれない。


「あ、ちょっと待つにゃ、ハルにゃんが話あるって」


手をつないで意識を共有する。


「浮かれておるところ悪いがの、これはちときな臭いことじゃ。まず、暗黒蠍は強い魔物じゃが、レッサードラゴンとは比べ物にならんくらい弱い」


一同は顔を見合わせる。


「そんな、嘘だろ!?」

「そもそも、暗黒蠍の動きは緩慢じゃ。じゃが、ここにおるやつは早すぎる」


── カサカサ、カサカサ


砂を棒で素早く抜き差しするような音が無数に聞こえてくる。


「ん?」


振り返った和田の目には、悪夢の光景が浮かんでいる。

その反応にメンバー全員が振り返る。


「おいおいおいおい、なんだこりゃ」

「ひぇ、和田っち、蠍軍団でやんす」


そこには、無数の暗黒蠍の群れがこちらに向かってくるところだった。


「和田殿、素材は確保しましたし、一旦退きますか?」

「そうだな…一匹であれだけ苦戦したからな」


撤退するしかないように思えたその時だった。


「和田にゃん、さっきモグラがいてテイムできたんだけど、あそこ何かいるみたい」

「ん? 何もなさそうだがな…」


── ピュッ


「じゃあ念のため、矢を放ってみたわ」


── グサッ


砂地に血が広がっていく。

どういうことなんだ?


「タクちん、あそこアイスランス撃ち込んでみてくれ」

「イエッス、行けっ!」


── ドスッ


やはり何かに突き刺さる。

だが、一瞬後に砂が盛り上がり、何かが立ち上がる。


「フード!?」


布を被りその上から砂をかけて潜んでいたらしい。

立ち上がったものの、すぐに倒れた。


倒れたと同時に暗黒蠍の動きが鈍くなる。


「和田にゃん、ハルにゃんが言うには、暗黒蠍を操っていたやつじゃないかって」

「なるほどな、じゃあ術が解けたってことか。葉山、テイム試してみてくれ」


■ カニよりもサソリ


ぞろぞろと暗黒蠍が帰っていく。

大半はあっさりとテイムされ、葉山の命令に従ったのだった。


だが、数匹はそのまま近寄ってきている。


「やるしかない、今度は遅いからなんとなくなるはずだ!」


── ドサー


砂が下から吹き上がる。

暗黒蠍も持ち上げられている。

何か長いもので、巨大なヤツメウナギのようだ。


── ドサー


挿絵(By みてみん)


次々と砂が吹き上がり、暗黒蠍が捕食されていく。


「あれ、サンドワームだって、ハルにゃんが言ってる。逃げた方がいいみたい!」

「よし、この辺から撤退する! 急げ!」


葉山が何か拾ってる?


「葉山、何してる、急げ!」


── 砂に足を取られつつ、懸命に走る


「一時はどうなるかと思ったがな。良かった…ん、なんだろうこの臭い」

「あー、あれにゃ! さっきの暗黒蠍が焦げてきてる!」


葉山が駆け出した。

辺りには香ばしい匂いが立ち込めている。


葉山が手にしているのは、黒い殻からはみ出る白い肉だった。


「これ、匂が…カニだよ、カニぃ! タエにゃん、何かあったら浄化とヒールよろしくね」


カニ、いや蠍にかぶりつく葉山。

ちゃっかりと、蠍の肉を持ってきていたらしい。


「うーん、これ僕一番好きなやつ、タラバも目じゃないにゃ」


一同呆れ果て、葉山が美味しそうに食べるのを見つめている。


「毒とかないのかな、ちょっと匂いはいいが、さすがに食べるのはなぁ」

「そうですね、葉山殿あんまり食べ過ぎないでください」


やれやれと、和田が葉山の肩に手を置く。

大賢者と話をしたいからだ。


「大賢者さんよ、黒死教ってやばくないか?」

「さっきの見たか? アイスランスが刺さった直後、もう自決しておる」


「え、自決?」


「そうだ、奴らは捕まっても口を割らん。捕まりそうになれば、すぐに自決をする。徹底的に闇に潜むやつらじゃ」


なんとも不気味な集団だということはわかった。

今もどこかで見られている、そんな気配を感じる。


「これからも、気が抜けんぞ。ワシはそれを三百年余り続けてきたでな…」


増山と長野が反省会をしている微笑ましい会話も、外山の誰に話しているのかわからない蘊蓄も、全てが耳に入らない。


この会話が聞こえているから、葉山も食べるのをやめていた。


「大賢者さんよ、キチンと覚悟するよ。素材も集めて、イストリアをもっと良くしたいと思う」


大賢者は何も返さなかった。


砂の囁きがサラサラと聞こえ、緑の月といつまでも話しているようだった。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n8527mg/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ