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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man
第二部

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サウドレシグへ 暗黒蠍

挿絵(By みてみん)





◼️ 国境の砦


馬車はサウドレシグに向かっていた。途中のサザルの村は予想通り誰もいなかったため、すぐに国境の砦を目指していた。


快適な馬車の中、和田は疑問に思っていた事を長野へ確認する。


「詳しく聞こえなかったけど、会社にはなんて話したんだ?」

「以前からメンタル壊してまして、今月の給料もいらないので、みなさんの退職届と一緒に私のも置いておきますって」


かなり強引なやり方に、和田は驚いていた。


「それで、会社側はなんと言ってた?」

「さあ? 何か聞こえたけど、聞く前に切っちゃった」


挿絵(By みてみん)


からからと事もなげに笑う長野。


「もしかしたら…戻ることになるかもしれないのに?」

「キミさんは戻るの? 私ずっと前から居場所なんて無いもの。だから良いの!」


(俺なんかより…よっぽど覚悟できてるんだな)


目の前少し先に砦が見えてきていた。

渓谷が徐々に狭まってきており、左右を崖で囲まれた隘路に関所のように作られた砦だ。


「和田殿、砦が見えてきました!」


葉山と運転を交代していた増山が声をかけてくる。


「和田殿、なんだかおかしいです! 砦に前衛ができていて、硬く防衛されているように見えます」


増山の声に緊張を感じ取った。


「タエちゃん、ちょっと止めてもらえる?」


馬車を降りて前を見ると、砦のはるか手前に道を塞ぐように簡単な柵ができており、兵士が数名見張っている。


「みんな、ちょっと待っててくれ、なんの騒ぎか聞いてくる」


(これから、みんなこっちの世界でやるんだし、俺がしっかりしないとな)


そんな思いもあって、和田が衛兵の方へ向かって行く。


ギルド登録証を出して、何事か話している。

特に険悪なものは感じられない。


衛兵達に軽く手を挙げて、和田が戻ってくる。


「なんでやんすか?」

「通っていいとよ。んで、これあれだわ。サザルの村人が様子もおかしく、大量にやってきたんで、こうやって検問してるらしい」


渓谷の隘路であり、自然とここに集まってきたという事だろう。


馬車に乗り込む和田。


「後で砦の城主に挨拶して欲しいってさ。ゴールド登録証見せたら、簡単に通してくれるのは感謝だけど、厄介事に巻き込まれる確率も上がるみたいだな」


やれやれとため息の和田とは対照的に、長野は冒険者らしい! と大興奮だった。


小さな砦であり住民はいない事もあり、殺風景であることは否めない。


── 挨拶をしに城主の部屋は向かう一行


「貴殿らはイストリアのゴールド冒険者だと聞いたが、私は城主のキルズナーである」


でっぷりとした突き出た腹と、くるりと丸まったちょび髭を扱きながら、大きく見せようと踏ん反り返る。


「はい、その通りです」


和田が答えるが、キルズナーの視線は増山、葉山、長野を上から下まで凝視し、忙しいそうだった。


「で、サウドレシグへ行くと聞いたが?」

「はい、依頼でどうしても必要な素材を取りに参ります」


この間も、絶えず女性陣のあいだ視線が彷徨う。


「一つ頼まれて欲しいのだがな?」

「我々にできることでしたら…」


詳しく話しを聞くと、持ち物からサザルの村人と判断し、イストリアとの関係上で保護しているが、人々の治療と護送はできないので、直ちに連れ帰って欲しいと言うのだった。


なるほど、依頼は理解したがどうしたものか。


「ご依頼は理解しました、ただ我々も護送は難しいので、イストリアの冒険者ギルドへ連絡します。それでよろしいでしょうか?」

「なるほど、それでも構わないので頼んだ」


女性陣が居心地悪そうにしてるので、では、と早々に引き上げる。


「おぇー、気持ち悪かったにゃ!」

「そうですね、ちょっとあからさまでしたね」


葉山も増山も、身震いしている。


「あれ、日本ならセクハラで捕まりそうよね」


長野もそう応じる。

なかなかの嫌われ城主である。


「タクちん、アポーツで冒険者ギルド送ってくれる? 頼まれた件済ませてくるわ。これから昼飯食うよな? 食い終わったら、取り寄せて欲しい」

「了解、じゃあ訓練場へ送るでやんす!」


◼️ 不穏な動き


イストリアのロンギスタンへ取り急ぎ報告し、サザルの村人の保護を依頼した。いつ取り寄せが入るか不明だから、バストールの練習を見ながら時間を潰していると、取り寄せが入った。


「和田っち、おかえりでやんす!」

「キミさん、ちょっとヤバめな情報聞けたわよ」


長野が興奮していた。


衛兵を誉め殺しして、情報を聞き出したそうだ。

会社は男性多かったからな、手慣れたものなのか?


肝心な情報はと言うと、サザルの村人が押し寄せた後、真っ黒なフードを被った一団も、付けてきていたらしい。


砦から兵士が出てくると、その一団は忽然と消えたと言うのだ。


「ラーリニアの浄化は奴らにとっても、想定外のことに違いない。本来ラーリニアが誘導して取り込む予定が、一気に流民となって贄として取り込めなかった、という事じゃろうな」


やっぱり大賢者がいる事で、情報の精度が上がる。頼もしい限りだ。


「なら、行方不明の村人は、ほぼ無事ってことかな。ほっとした」


とは言え、黒死教が表に出てきた訳で、暗躍しなくなった事が厄介だ。第一目標は大賢者で、その次が俺らだろうからな。


間違い無く狙ってくるはずだ。


「となると、暗黒蠍も何かしらあるかもしれないな」

「うむ、注意するに越した事はなかろう」


簡単に行くと思ってなかったが、一気に緊張感が出てきた。


「キミさん、暗黒蠍の場所ってわかってるの?」

「そういえば砂漠としか聞いてないな」


長野は砦で手に入れた弓の弦を弾いていた。

やっぱり緊張してるのか?


「暗黒蠍は大量に見つかるとは行かんが、ある程度簡単な部類じゃな。ただ、簡単と言うても強いぞ。相当な硬さじゃからな」

「となると、正攻法では難しいかもしれないな。タクちんが凍らせて、俺とタエちゃんでぶっ叩くと粉々にできないかな?」


ちょっと安易な気もするが、行けそうな気もしている。


「そうじゃな、試したことは無いがいけるやもしれん。まあ、ものは試しじゃな」


◼️ 砂漠の海


砦を抜けてしばらくは岩の多い道だった。

そして、今目の前には莫大な砂の海が広がっている。


「馬車はここまでだな。タクちん、馬車と馬を拠点にアポーツよろしく!」

「ふふん、小生抜きでは冒険にならないでやんすな?」


(そのドヤ顔、イラっとするんだが…まあ、確かにタクちん頼みになる事が増えてきたのは事実)


「あーはいはい、タクちん様々だなぁ、涙出るー」

「なんでそんな棒読みでやんすか!」


見渡す限りの砂また砂。そして、さらには緑の月が出ている。


「よし、ここからは歩きだ! 気をつけて行こう」

「和田にゃん、ラクダいないの? 歩きたくないー」


まあ、葉山はこんなもんだろうな。


「葉山殿、蠍って甲殻類みたいな味がするみたいですよ!?」

「ほんと? 僕エビカニは好きだけどさ…」


増山はテイマー使いかもしれない。葉山の扱いがさらに上手くなってきている。


「そうね、タランチュラなんかも甲殻類の味がするみたいだし、エビかカニかわからないけど、いけるかもね?」


(てる美、適応能力高過ぎだろう…)


違和感なく便乗する長野の言葉に、葉山は興味が出てきたようだ。


「仕方ないにゃ、この前イカを食べ損なったから…」

「いや、本当に食うのかよ!?」


てへへと笑う葉山をよそに、トボトボ歩き出す一行。

砂の山々を歩いてると、景色が同じに見えてくる。


「やばいな、ゲシュタルト崩壊起こしてきた」

「砂漠で起こるものでやんすか?」


それ以上に会話も無くなるほど、皆黙々と歩いている。


(ん? あれは何だ?)


少し前方に黒い点が見える。

近くに連れて全容がはっきりと見えてくる。


「わー、蠍だにゃ!」


挿絵(By みてみん)


確かに蠍だが、ひび割れだらけで中身は空っぽだ。尾も途中から折れていた。

さらに、尋常では無い大きさだ。人間の半分くらいじゃないか?


── カンカンカーン


増山が蠍の殻を叩くと、確かに金属めいた音がした。


「和田殿、これは物凄く硬いですね。凍らせて上手く行くと良いんですが…」


まあ、蠍がいる事はこれで証明された訳で、あとは本物を探さないとな。


静寂に包まれた緑がかった砂漠に、時折弱々しい風が砂を巻き上げる。

その静かな乾いた音に、漠然とした不安を感じる和田であった。


本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。

あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。


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