ここはどこ?あなたは誰!?
■ 闇の回廊
── キィィィン、キィィィン。
もう何分経った?
だいぶ歩いた気がするわ。
闇がさ、手で掴めるんじゃないかってくらい濃いんだよ。
渦巻いてるのが見えるわけじゃないのに、“そこにある”って分かる。
── キィィィン、キィィィン。
音の感覚が変わったんだよな。
外で聞いてたのとは違う。
なんて言えばいいんだ……一定方向に吸い込まれていく感じ。
今はその流れに身を任せて進んでる。
……あれ、前のほう、少し光ってないか?
おっしゃ、走ってみるか。
うん、やっぱり光が大きくなってる。
運動不足だかんな。きついわ。
はあ、はあ……まじキツい。
── キィィィン、キィィィン、カツ、カツ、カツ。
ん?なんか変な音混じってないか?
……あれ、扉だわ。隙間から光が漏れてる。
どこだ?手で探って……
お、あった。
── ガチャリ。
うわ、眩しすぎる。
ドア開いたけど、なんも見えねぇ。
■ 大賢者の部屋
「オホウァ、ンォポヘノサヂン」
ん?ここはどこ?それに誰よ?
チッ、目がぼやけて……何言ってんだ?人だよな?
ようやく目が慣れてきた。
しかし、なんだこりゃ。所狭しと木の板だらけ。
それにこの臭い……薬品か?
ちょっとまて、ありゃなんだ!?
……ちっさいドラゴン?
いや、生きてるよな。瞬きしてるし、さっき顔掻いてたよな?
「アウレ、アウレ」
なんだ?何言ってんだ?
老婆が指輪持ってるじゃん。赤い石のゴツいやつ。
「ハムレス」
指にはめたと思ったら、今度は俺に差し出してくる。
ハムレス?そればっか繰り返してるし。
……これ、俺に指輪しろってことか?
ええい、埒があかねぇ。
分かったよ、つけりゃいいんだろ。
「ふふふ、闇の回廊は暗かったかえ?」
「婆さん?」
うわ、なんだ、強烈な衝撃。
鼻血出てないだろうな?
なんか百倍速で映像見せられた感じ。
情報が一気にきたな。
「失礼な。まあお主よりかは大分生きておるがの」
あ、言葉わかるじゃん。なんだ急に。
いや、なんとなくわかってるだろ?
■ 大賢者ハルアット
「ここはどこなんだ?で、あんたは誰なんだ? あー、それからなんで言葉変わった? え! ドラゴンだろ、あれドラゴンだよな?」
うん、多分これもわかる。
でも、認めたくないって気持ちが強いんだ。
「気持ちはわかるがな。まあ落ち着くがよい。一つずつ答えようかの」
「まず一つ目。ここは王都ルアルバーン。わしの部屋じゃ」
王都?
いや、日本に王都なんてねぇよな。
「二つ目。わしはハルアット。大賢者と呼ばれとる」
大賢者?
いやいや、そんなRPGみたいな肩書きあるかよ。
「三つ目。その指輪よ。お主のものじゃ。転がってきた」
俺の?
いや、こんなゴツいわけ……ないだろ。
「四つ目。あれはドラゴンじゃ。使い魔に向いている小さい種族のな」
ドラゴンですとも、みたいな当然の口調だなこの人。
■ 情報過多の和田
え、つまりどういうことだ?
王都?大賢者?指輪?ドラゴン?
全部つながらん。
……なのにだ。
どれも“嘘だ”って思えない。
むしろ、理解してる。
当然だと思ってる。
なんのこっちゃ!
「混乱しておるな。まあ無理もなかろう。その指輪は大賢者召喚に呼応しおってな」
「ちょい待った!その前にこの指輪、俺のなのか? 全然こんな指輪じゃなかったぞ」
見れば見るほどゴツい。
まあ、人によってはゴージャスと言うかもしれんが。
「わしの施した召喚の儀が、その指輪を変異させておる。この世界の理を主は瞬時に悟ったはずじゃ」
「まあガツンと来たけどさ、“全部わかってます”なんて言えない状況でもあるな」
「いずれわかるじゃろう。赤子が母を求めるように、主も必要なときに必要なものを自然と理解する」
■ 世界の理と若返り
「ルアルバーンって……イストリア王国のことなのか?……なんで俺こんなの知ってるんだ」
知るわけないのに、考えた瞬間わかった。
気持ち悪い。
「ふむ、おぬし筋は悪くないな。そうやって自分に聞いたらええんじゃ」
「あー、それで、召喚の儀とやらは、なんなんだ?」
「この世界には六つの国がある。イストリアもその一つじゃ」
「なるほどな。それで理解できてしまった。つまり、弱小国だから大逆転したいってわけな」
少しヒントをもらうと、芋づる式に出てくる。
なんかちょっと気持ちよくなってきたかも。
「ほほほ、お主慣れが早いの。うむ、イストリアはわ しがおるで、なんとかやっておるわい」
「で、何をさせたいんだよ?」
「うむ、わしも若くないでの。なんとかするには時間もない。そこで、卵が欲しけりゃ鶏がいるわけじゃ」
「俺は鶏ってわけね」
大丈夫か?俺めちゃくちゃ強いわけでもないし。
そんな頭いいわけでもないだろ?
「お主、察しが良くてたすかるのぉ」
■ 鏡の中の“若い俺”
「ちょっと、にわかに信じられん部分もまだあるんだがな」
「まあ、すぐには難しかろう」
「ちょっとさ、ドラゴン、近くで見てもいいか?」
「好きにしたらいい。噛みついたりせんのでな」
うひょ、これがドラゴン。
うーむ、小さいからか、トカゲっぽい?ワニっぽい?
コウモリみたいな羽だなぁ。
ん?あれ???嘘だろう?
ドラゴンが止まってる後ろに鏡があるんだ。
そこに映ってるのって……!?
「なあ、大賢者さんよ、これって俺なのか?」
「そうじゃな。お主しかおるまい」
「いや、こんな若くないだろう?」
「なるほど、そういうことか。良いか? この世界とお主の世界、時の流れが違うのじゃよ」
それはそうらしいな。俺の知識もそう言っている。
でも、それってだから?って感じなんだが。
「こちらの時間は遅い。だからお前さんは過去の自分を見ておる」
「そんなことって……」
いやいや、タイムスリップしてんの?
どういうこと?
■ 一時帰還
「まあ、すぐには理解できんじゃろう。いったん戻ってゆっくり考えたらどうじゃ?」
確かにな。ちょっと眩暈するわ。
「わーった、ちょっくら戻るわ。あ、そういえばさ、ここにさっとこれないの? 暗闇がだるいんだよな」
「お主、わかっておろう?その指輪があれば、もうすぐじゃよ」
なんとなく、答えわかったかも。
何これ、超便利。
「じゃあいったん戻って、また来るよ」
「うむ、待っておるでな」
よし、本当にできるのか?
こうやってドアに触れれば……
── ストンと着地。歴代倉庫の扉前。
■ 現実へ
「どこ行ってたでやんす!お昼待っていたでやんす」
「悪い、ちょっと色々あってな」
「脱走したかと思ったでやんす」
「ははは、ちょっと異世界までな」
しかし、あれってどういう?
指輪、若返った俺、ドラゴン、大賢者……頭パンクするって。




