やばい部屋!?
■ 初日・朝
━━ ぷおぉぉぉぉ、ぷおぉぉぉぉ
なんだ!?
合戦でも始まるのか!?
「和田っち、グッモゥニン」
なんかやたら発音いいな。
「今のなんだ??」
「あー、目覚ましで、朝ごはんの十五分前になるでやんす」
もうちょっと他にないのかよ。
て、ことは今七時四十五分か。
「小生はタエ様のサポゥーツで忙しいから、先行ってるでやんす」
「わかった、支度したら行くよ」
「うおー」
「和田っち、なんでやんすか」
「いやいや、これ凄くね?」
焼き鮭でしょ、切り干し大根の小鉢、卵、納豆、味噌汁、味のり、これ旅館並みじゃね?
タエちゃんありがとう!
タエちゃんは、お約束のサムズアップだ。
うんブレないねあんた。
しかし、俺の腕の筋肉よりすごいな。
「小生、ほんとここに来てよかったでやんすよ」
「そっか、嫌がらせで辞めさせようとしてるんだが、意味ないよな」
まあ、確かに普通に仕事してる連中なら、めちゃくちゃ嫌だな。
「で、葉山室長は?今日の予定とかあるのか?」
「葉山殿は直接掃除に行くでやんす。あとでローテーション見せるでやんす」
室長のくせに、管理放棄かよ。
「ところで、なんで引き篭りが室長なんだ?」
「小生も聞いたでやんすよ」
メガネズレる。はい、押し上げる。
この間よ。
「葉山殿が三十歳くらい、ここの土地をゲッツしたでやんす。でやんすがね、どうやら…」
── でやんすしか入ってこないので、整理しておくか
・両親の他界で土地・上物の廃旅館を相続
・本人は引き篭りで山奥の土地に興味なし
・企業(俺の会社)から土地買収の打診
・葉山「土地はタダ同然で、旅館はリフォームして住ませて」
・企業「リフォームはしない。管理するなら食事は出す」
・結果、葉山は“引き篭り室長”に就任
一応、税金対策で福利厚生施設も兼ねているようだ。
「小生サポゥーツでやんすから、この辺で。始業に遅れちゃ、ダメでやんすよ」
「はいよ。タクちん、働きもんだな」
茶飲んだら行きますか。
■ 事務室・書庫
やっぱ葉山いないんだな。
タエちゃんも、タクちんもいるな。
「和田っち、そういえば書庫みせてないでやんす」
「書庫?」
「イェッス!赤島倉庫が始まった頃からの記録とかあるでやんす」
「それは見ておきたいな」
「あそこの奥のとこ、二つ書庫あるでやんす」
奥のとこ?あー、あれか。だだっ広いから、目立たない訳だ。
しかし、このスペース無駄だよな。っと、床抜けないか気にしなしとな・・・
この書庫もかなり年季入ってんな。
ハマってるガラスも薄汚れてるし。タイトルは・・・?
・赤島倉庫竣工資料
・倉庫搬入品一覧
・倉庫内施設一覧
あれこれあるけど、必要なやつ無いなぁ。年代物のカタログとかいらんし。
ふむ、まずは倉庫内施設一覧な。ペラペラに薄くないか?ちなみに、薄くて背表紙見えないからインデックスシールがはみ出てる。
目次を見ると・・・
・一般倉庫リスト
・特殊倉庫リスト
・生活スペース
この三つのセクションで説明されてる。
一般倉庫は普通の物置。
特殊倉庫に“歴代倉庫”があった。用途は試作品の全バージョン保管。
なるほど、医療機器メーカーらしいな。
━━ 珍しく読書にハマる和田
■ 清掃開始
「はい、これが新ローテーション表でやんす」
「うわ、びっくりした」
いきなり背後から声かけないでくれ。
「新ローテーション?」
「当然でやんす。和田っちの担当も入れてリィニィュウアァルでやんす」
うん、ちゃんとしゃべろうな。
えーと、そんで今日の割り当ては??
二十四番の部屋だな。
「タクちん、ちなみにだけどフロアレイアウトとかってある?」
「あるわけないでやんす。仕方ない、小生がさらっと書くでやんす」
は?ほんとかよ?
━━ サラサラと、的確に、正確に仕上げて行く
ちょっとまて、めっちゃ早くね?なに、製図でもやってんの?
「おー、タクちんヤバない?めっちゃうまいやん」
「小生にかかれば、なんでも、正確に模写でやんすよ」
「二十四番の部屋ってここなんや」
「小生隣やるんで、わからなかったら聞くでやんすよ」
おいおい、いつの間に部屋の奥でごそごそしてるんだ?
「忍者か!?」
「はい、これ持っていくでやんす」
「ほうき、ちりとり、バケツ・・・まさか掃除機とかないんだな」
「電気がナッシング!さ、トイレ経由で小生についてくるでやんす」
もう床に落ちたくにないからな。
お、トイレはあそこだな。
「奥の用具入れから雑巾取って、バケツで水入れていくでやんすよ」
「わかった」
しかし、この蛇口レトロすぎるだろ。
「わだっち、遅いでやんす」
「わりぃわりぃ」
てか、君が早すぎんだけどな。
遅れないようにしないとな。
このステップについていくのに、やっと慣れたわ。
見た目ぽっちゃりなんだが、なんでこんなに素早いんだ?
「二十四番はここ、小生は隣二十五番でやるので、何かあれば聞くでやんす」
「了解!」
どんななんだろうな?
しっかし、この扉さ怪談でしか聞かない音するんだけど。
そんな汚れてなくないか?
まあ、一応ローテーションで掃除してるから、そんなもんか。
んー、段ボール箱が少し積んであるだけだな。
じゃあ、やっちまいますか!
── チャララ、チャララ、チャーラー
なんだ!?火曜サスペンスかよ。
結構没頭してやってたから、びっくりしたな。
「ヘェイ!和田っち、ランチでやんすよ」
「さっきのまたアラーム?」
「ランチ前のアラーム。わかりやすいでやんすよ」
てか、独特過ぎるだろ。
「行くでやんすよ」
「了解!」
── 食堂にて
「うは、タエちゃんいい仕事するなぁ」
「タエ様は、いつもグゥドォジョブでやんすよ」
タエちゃんと俺、サムズアップを決める。
サラダに、デミグラスハンバーグ、コーンスープ、ライス、これ店で出せそうだわ。
おいしいランチを堪能して、再度清掃だ。
── 清掃完了
ランチ後一時間ほどで清掃完了だ。
あれ、隣タクちんいないな。
事務室戻りますか。
「タクちん、早いな。お疲れさま!」
「お疲れでやんす」
ジオラマでまったりかよ。
しかし、精巧なジオラマだよなぁ。
「タクちん、これなんなの?」
「あ、これでやんす?これは茶摘みのおばちゃんでやんす」
ほー、山んとこで茶詰んでるのね。細かすぎだ。
「この後はもう休み?」
「イエッス!もうノルマ完了でやんす」
「まじか、これ楽すぎんか!?」
「かわりに、永久に昇給しないでやんす」
まあ、左遷だからな。
けど、もはや忙しい本社戻ってもな。
これはこれでいいんじゃね?
── なんだかんだで初日終了
いやー、どうなるかって思ったがな。
これってかなり楽だよな。まあ完全に軟禁状態だが。
あ、いけね。メール見てないわ。
メール受信 五件。
どうでもいいやつ四件。一件は「件名:至急経費精算お願い」
あ、バーコードからメールきてた。
経費精算しろって。忘れてた。
経費精算して寝ますか。
── 二日目
本日、二十八番を清掃。
昨日とほぼ変わらんな。
── 三日目
今日は生活スペース清掃だって、調理場、食堂、事務室、トイレを実施した。
で、久々に葉山を見た。相変わらず生気ないわ。大丈夫か?
── 就寝時
あー、今日も何もなかったな。
掃除して、飯食って、寝るだけ。
まあ、楽っちゃ楽だけどさ。
胸ポケットに手を入れる。
この感触。
──渡せなかった婚約指輪。
何年前だっけ?プロポーズし損なったんだ。
だってさ……偶然聞いちまったんだよ。
『和田くんとのこと、悩んでて……』
彼女のあの一言で、全部ダメだと思うじゃん?
逃げちまったよ。勝手に終わらせたんだわ。
ほんとさ、バカだよな俺。
それ以来ずっと独身。二十何年経ってんだ?
この指輪も、捨てられずに胸ポケットの住人だ。
情けねぇな、ほんと。
■ タエちゃんの異変
── 四日目の朝
「和田っち、事件でござる」
「な、なんて!?」
ござる?キャラ変わってんじゃん。
「タエ様が、高熱でヤバ杉晋作でやんす」
「まじか、寝込んでる?」
「食事の準備も、お掃除も無理でやんす」
あの筋肉みてたからなぁ。寝込むとか信じられん。
まあでも誰でも熱出たらしんどいよな。
なるほど、だからカップ麺持ってるのか。
「小生、タエ様のお世話するで、代わりに三十五番の部屋頼むでやんす」
「わかった、任せとけ」
早く治ってくれないとな、うまい飯も食えないし。
ちょっとまってよ、三十五番って、歴代倉庫の横じゃん。
レイアウトにも「やばいでやんす」エリアだ。
んー、まあ、しゃあないか。やりますよ、タエちゃんのためだ。
■ 歴代倉庫へ
── 三十五番前
んー、やっぱり気持ち悪いな。
変なオーラと、プレッシャー感じるわ。
三十五番の前だけ、空気が重い。冷気感じるぞ。
「・・・注意して・・・」
「うわっ」
葉山!?相変わらず神出鬼没な。
「あそこはダメ・・・」
「あそこ・・・何が、」
おいおい、聞く前に行くなよ。
葉山は三十四番に行っちまった。
まあ、しゃーないな。さっさと終わらせよう。
── お掃除完了
よっしゃ終わった!
今日も楽勝モードだったわ。
タエちゃん大丈夫かな。
── ズボッ
考え事してたら床抜けた。
痛いなおい。片足が踏み抜いたぞ。
ケガはなさそうだけど。
── ポトン、コロコロコロ・・・
あれ、いつのまに、俺の指輪。胸ポケットから落ちた!?
こけたときに出ちたのか!?
おいおいおいおいおいおいおい、なんか歴代倉庫に引き寄せられてる?
!?
── キュウン、キュウン
いや、変な音する、指輪も止まらない!
ちょ、、指輪、、なんか光ってね?
心なしか、明るくなったり、暗くなったり、音と同期してね?
信じられん、消えたわ。吸い込まれた!?
ええい、あれだけは手放せないんだよ!
── 歴代倉庫の扉
まじか!?あっけなく開く扉。
タエちゃんでも開けられなかったんだよな?
ヤバ杉晋作だろ。
これ、闇が渦巻いてるじゃん。
指輪・・・
行くしかねぇな。
── そして歴代倉庫へ足を踏み入れた




