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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man


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2/11

やばい部屋!?

挿絵(By みてみん)





■ 初日・朝


━━ ぷおぉぉぉぉ、ぷおぉぉぉぉ


なんだ!?

合戦でも始まるのか!?


「和田っち、グッモゥニン」


なんかやたら発音いいな。


「今のなんだ??」

「あー、目覚ましで、朝ごはんの十五分前になるでやんす」


もうちょっと他にないのかよ。

て、ことは今七時四十五分か。


「小生はタエ様のサポゥーツで忙しいから、先行ってるでやんす」

「わかった、支度したら行くよ」


「うおー」

「和田っち、なんでやんすか」

「いやいや、これ凄くね?」


焼き鮭でしょ、切り干し大根の小鉢、卵、納豆、味噌汁、味のり、これ旅館並みじゃね?


挿絵(By みてみん)


タエちゃんありがとう!

タエちゃんは、お約束のサムズアップだ。

うんブレないねあんた。

しかし、俺の腕の筋肉よりすごいな。


「小生、ほんとここに来てよかったでやんすよ」

「そっか、嫌がらせで辞めさせようとしてるんだが、意味ないよな」


まあ、確かに普通に仕事してる連中なら、めちゃくちゃ嫌だな。


「で、葉山室長は?今日の予定とかあるのか?」

「葉山殿は直接掃除に行くでやんす。あとでローテーション見せるでやんす」


室長のくせに、管理放棄かよ。


「ところで、なんで引き篭りが室長なんだ?」

「小生も聞いたでやんすよ」


メガネズレる。はい、押し上げる。

この間よ。


「葉山殿が三十歳くらい、ここの土地をゲッツしたでやんす。でやんすがね、どうやら…」


── でやんすしか入ってこないので、整理しておくか


・両親の他界で土地・上物の廃旅館を相続

・本人は引き篭りで山奥の土地に興味なし

・企業(俺の会社)から土地買収の打診

・葉山「土地はタダ同然で、旅館はリフォームして住ませて」

・企業「リフォームはしない。管理するなら食事は出す」

・結果、葉山は“引き篭り室長”に就任


一応、税金対策で福利厚生施設も兼ねているようだ。


「小生サポゥーツでやんすから、この辺で。始業に遅れちゃ、ダメでやんすよ」

「はいよ。タクちん、働きもんだな」


茶飲んだら行きますか。


■ 事務室・書庫


やっぱ葉山いないんだな。

タエちゃんも、タクちんもいるな。


「和田っち、そういえば書庫みせてないでやんす」

「書庫?」

「イェッス!赤島倉庫が始まった頃からの記録とかあるでやんす」

「それは見ておきたいな」


「あそこの奥のとこ、二つ書庫あるでやんす」


奥のとこ?あー、あれか。だだっ広いから、目立たない訳だ。

しかし、このスペース無駄だよな。っと、床抜けないか気にしなしとな・・・


この書庫もかなり年季入ってんな。

ハマってるガラスも薄汚れてるし。タイトルは・・・?


・赤島倉庫竣工資料

・倉庫搬入品一覧

・倉庫内施設一覧


あれこれあるけど、必要なやつ無いなぁ。年代物のカタログとかいらんし。

ふむ、まずは倉庫内施設一覧な。ペラペラに薄くないか?ちなみに、薄くて背表紙見えないからインデックスシールがはみ出てる。


目次を見ると・・・


・一般倉庫リスト

・特殊倉庫リスト

・生活スペース


この三つのセクションで説明されてる。


一般倉庫は普通の物置。

特殊倉庫に“歴代倉庫”があった。用途は試作品の全バージョン保管。

なるほど、医療機器メーカーらしいな。


━━ 珍しく読書にハマる和田


■ 清掃開始


「はい、これが新ローテーション表でやんす」

「うわ、びっくりした」


いきなり背後から声かけないでくれ。


「新ローテーション?」

「当然でやんす。和田っちの担当も入れてリィニィュウアァルでやんす」


うん、ちゃんとしゃべろうな。

えーと、そんで今日の割り当ては??

二十四番の部屋だな。


「タクちん、ちなみにだけどフロアレイアウトとかってある?」

「あるわけないでやんす。仕方ない、小生がさらっと書くでやんす」


は?ほんとかよ?


━━ サラサラと、的確に、正確に仕上げて行く


ちょっとまて、めっちゃ早くね?なに、製図でもやってんの?


挿絵(By みてみん)


「おー、タクちんヤバない?めっちゃうまいやん」

「小生にかかれば、なんでも、正確に模写でやんすよ」

「二十四番の部屋ってここなんや」

「小生隣やるんで、わからなかったら聞くでやんすよ」


おいおい、いつの間に部屋の奥でごそごそしてるんだ?


「忍者か!?」

「はい、これ持っていくでやんす」

「ほうき、ちりとり、バケツ・・・まさか掃除機とかないんだな」

「電気がナッシング!さ、トイレ経由で小生についてくるでやんす」


もう床に落ちたくにないからな。

お、トイレはあそこだな。


「奥の用具入れから雑巾取って、バケツで水入れていくでやんすよ」

「わかった」


しかし、この蛇口レトロすぎるだろ。


「わだっち、遅いでやんす」

「わりぃわりぃ」


てか、君が早すぎんだけどな。

遅れないようにしないとな。

このステップについていくのに、やっと慣れたわ。

見た目ぽっちゃりなんだが、なんでこんなに素早いんだ?


「二十四番はここ、小生は隣二十五番でやるので、何かあれば聞くでやんす」

「了解!」


どんななんだろうな?

しっかし、この扉さ怪談でしか聞かない音するんだけど。


そんな汚れてなくないか?

まあ、一応ローテーションで掃除してるから、そんなもんか。

んー、段ボール箱が少し積んであるだけだな。

じゃあ、やっちまいますか!


── チャララ、チャララ、チャーラー


なんだ!?火曜サスペンスかよ。

結構没頭してやってたから、びっくりしたな。


「ヘェイ!和田っち、ランチでやんすよ」

「さっきのまたアラーム?」

「ランチ前のアラーム。わかりやすいでやんすよ」


てか、独特過ぎるだろ。


「行くでやんすよ」

「了解!」


── 食堂にて


「うは、タエちゃんいい仕事するなぁ」

「タエ様は、いつもグゥドォジョブでやんすよ」


タエちゃんと俺、サムズアップを決める。

サラダに、デミグラスハンバーグ、コーンスープ、ライス、これ店で出せそうだわ。

おいしいランチを堪能して、再度清掃だ。


── 清掃完了


ランチ後一時間ほどで清掃完了だ。

あれ、隣タクちんいないな。

事務室戻りますか。


「タクちん、早いな。お疲れさま!」

「お疲れでやんす」


ジオラマでまったりかよ。

しかし、精巧なジオラマだよなぁ。


「タクちん、これなんなの?」

「あ、これでやんす?これは茶摘みのおばちゃんでやんす」


ほー、山んとこで茶詰んでるのね。細かすぎだ。


「この後はもう休み?」

「イエッス!もうノルマ完了でやんす」

「まじか、これ楽すぎんか!?」

「かわりに、永久に昇給しないでやんす」


まあ、左遷だからな。

けど、もはや忙しい本社戻ってもな。

これはこれでいいんじゃね?


── なんだかんだで初日終了


いやー、どうなるかって思ったがな。

これってかなり楽だよな。まあ完全に軟禁状態だが。

あ、いけね。メール見てないわ。


メール受信 五件。

どうでもいいやつ四件。一件は「件名:至急経費精算お願い」

あ、バーコードからメールきてた。

経費精算しろって。忘れてた。


経費精算して寝ますか。


── 二日目


本日、二十八番を清掃。

昨日とほぼ変わらんな。


── 三日目


今日は生活スペース清掃だって、調理場、食堂、事務室、トイレを実施した。

で、久々に葉山を見た。相変わらず生気ないわ。大丈夫か?


── 就寝時


あー、今日も何もなかったな。

掃除して、飯食って、寝るだけ。

まあ、楽っちゃ楽だけどさ。


胸ポケットに手を入れる。

この感触。


──渡せなかった婚約指輪。


何年前だっけ?プロポーズし損なったんだ。

だってさ……偶然聞いちまったんだよ。


『和田くんとのこと、悩んでて……』


彼女のあの一言で、全部ダメだと思うじゃん?

逃げちまったよ。勝手に終わらせたんだわ。


ほんとさ、バカだよな俺。


それ以来ずっと独身。二十何年経ってんだ?

この指輪も、捨てられずに胸ポケットの住人だ。


情けねぇな、ほんと。


■ タエちゃんの異変


── 四日目の朝


「和田っち、事件でござる」

「な、なんて!?」


ござる?キャラ変わってんじゃん。


「タエ様が、高熱でヤバ杉晋作でやんす」

「まじか、寝込んでる?」

「食事の準備も、お掃除も無理でやんす」


あの筋肉みてたからなぁ。寝込むとか信じられん。

まあでも誰でも熱出たらしんどいよな。

なるほど、だからカップ麺持ってるのか。


「小生、タエ様のお世話するで、代わりに三十五番の部屋頼むでやんす」

「わかった、任せとけ」


早く治ってくれないとな、うまい飯も食えないし。

ちょっとまってよ、三十五番って、歴代倉庫の横じゃん。

レイアウトにも「やばいでやんす」エリアだ。


んー、まあ、しゃあないか。やりますよ、タエちゃんのためだ。


■ 歴代倉庫へ


── 三十五番前


んー、やっぱり気持ち悪いな。

変なオーラと、プレッシャー感じるわ。

三十五番の前だけ、空気が重い。冷気感じるぞ。


「・・・注意して・・・」

「うわっ」


葉山!?相変わらず神出鬼没な。


「あそこはダメ・・・」

「あそこ・・・何が、」


おいおい、聞く前に行くなよ。

葉山は三十四番に行っちまった。

まあ、しゃーないな。さっさと終わらせよう。


── お掃除完了


よっしゃ終わった!

今日も楽勝モードだったわ。

タエちゃん大丈夫かな。


── ズボッ


考え事してたら床抜けた。

痛いなおい。片足が踏み抜いたぞ。

ケガはなさそうだけど。


── ポトン、コロコロコロ・・・


あれ、いつのまに、俺の指輪。胸ポケットから落ちた!?

こけたときに出ちたのか!?


おいおいおいおいおいおいおい、なんか歴代倉庫に引き寄せられてる?

!?


── キュウン、キュウン


いや、変な音する、指輪も止まらない!

ちょ、、指輪、、なんか光ってね?

心なしか、明るくなったり、暗くなったり、音と同期してね?


挿絵(By みてみん)


信じられん、消えたわ。吸い込まれた!?

ええい、あれだけは手放せないんだよ!


── 歴代倉庫の扉


まじか!?あっけなく開く扉。

タエちゃんでも開けられなかったんだよな?

ヤバ杉晋作だろ。

これ、闇が渦巻いてるじゃん。

指輪・・・

行くしかねぇな。


── そして歴代倉庫へ足を踏み入れた


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