ゴールドランクへの道 英雄の残滓
◼️ 祠
急に寒くなってきたな。
空の色もオレンジから、紫がかった色に変わってきた。
やっぱり砂漠付近は寒暖差があるんだな。
村の外へ出ると、途端に何もなくなる。
草木もなく、ただの荒野って感じだ。
ん? あれは……?
少し先に、大きな岩が積まれている。
なんだこりゃ?
岩で囲われた祠……そんな感じか。
中に何かある。白っぽい……?
薄暗いから、松明使うか。
── シュボッ
なんだろうな……これは骨だ。
ってことは墓なのか?
骨の横には、ローブと杖が置いてある。
この辺の風習なのか?
いや、そうなら同じような祠がもっとあるはずだ。
でも、何かが引っかかる。
ここで考えても埒があかない。
一旦戻るか。
── 違和感を覚えるも、祠を後にする和田
「お、いい感じに防壁できてるな。これが役に立つかはわからんが」
「突撃してくるようなやつなら、効果あると思うでやんすが……」
半円の壁を組み合わせて、外から中に入りにくい構造になっている。
中にいれば、待ち受けて攻撃が可能だ。
「和田殿、ひと通り見ましたが、やはり誰もいませんね。全員消えたわけではなく、最後は避難でしょう」
「事情が聞けると助かるんだがな……」
あとは葉山の結果次第だ。
「葉山はどこだ?」
「さっき、あそこら辺で見ましたよ」
あれか……小さな牧場のような場所だな。
◼️ 死霊
葉山何か連れてきてるな。
仔牛なのか?
「和田にゃん、この子逃げた時に親とはぐれたみたい」
「葉山、まさか食うんじゃないだろうな?」
「ちょっと和田にゃん、そりゃ僕はお肉大好きだよ? でもいくら何でもそんな酷い事しないよ」
「良かった、お前の食い意地見てると不安になるんだよな」
「ぷー、僕の事何だとおもってんの!」
「ちょっとしたジョークだよ」
「もう、で、この子が言うにはさ…」
── 仔牛の意識から読み取った事を葉山が共有する
まず、杖を持った女が、砂漠の方からやってくること。昼間には見たことがなく、夜にしか来ない。
その女? が来ると、人々は黙ってその後に従って、村の外へ出て行くらしい。
杖? なんだろ、引っ掛かるな。
何かあったのか?
あ、さっきの祠に杖置いてあった。
これはただの偶然なんかじゃないはず。
── 張り込んで見ようという事で、和田とタエが張り込む
馬車を祠の前に展開して、座席に座って張り込む。
まあ、これで出てこないなら、その時考えるか。
葉山とタクちんは、後衛だから拠点待機をお願いしてある。
「タエちゃんさ、別に言いたくなきゃ言わなくて良いんだけどさ。日本だと何かあったのかな? ほら俺もそうだけど、やっぱ問題あるっていうかね」
「和田殿は何がダメなんですか? 私には全くそんな風に思えなくて。和田殿が居なかったら、多分みんなここまでやっていけないと思う」
嬉しい限りだが、俺もそんないい奴なのか?
あまり褒められたもんじゃないような。
「どうかな、社長の息子や同僚にはバカにされ、恋人には逃げられ、希望を無くしたダメ男だと思うけどな」
「そうなんですか? ちっともそんな風に思えないです。」
一度言葉飲み込んでるな。
話そうかどうか、迷ってるのか?
「私…旦那と二人で料亭をやってたんです…」
── そして、タエの告白が始まる
今の荒涼とした景色と、砂漠から吹き抜ける夜気が冷たく吹きつけ、タエの心を表すように思われた。
彼女の声を遮ることなく、静かに和田は受け止める。
この人も相当苦労してきたんだ、和田の胸中には熱いものが込み上げる。
そんな中で、本当に仲間として認めてくれたこと。このパーティでの活動が、人としての感情を呼び起こしてくれたことなどが染みた。
── 長い告白を終えてスッキリしたようなタエがいた
「だから和田殿と、みんながいるから私は頑張れると思ってますよ」
「なんだ、俺はこういうの上手く言えないんだけどさ、みんな落ちこぼれだって、そう言われるかもしれないけど、俺は最高の仲間に会えて嬉しいよ」
「話してくれて、ありがとうな」
お、タエちゃん、久しぶりにサムズアップ見たな。
誰かに必要とされる感覚、なんだか忘れてたよ。
── それから雑談も尽き、緑の大きな月が真上に来ていた
「和田殿、起きてください! 何か聞こえます」
「うわ、ごめんウトウトしてたな」
なんだろ?
寝ぼけてるから、よくわからない。
たしかに、低い唸り声が聞こえる気がする。
「ウォ…ダァルン…シハル…」
「確かに聞こえるな、読経っぽいというか。何言ってるか全くわからないな」
「これ、ギルドで訓練してるときに、ハルアット様が見せてくれた魔法がこれと似てました」
確かに、呪文と言われればそんな気がする。
── シュウン
何かが収縮するような音だ。
その音の直後、祠が光った!
「あ、あれは…」
確かにダークエルフって、あんな感じかな?
でも、薄っすら透けてて、下の骸骨見えてるんだよな。
ローブと杖も持ってる。
なんだろう、既視感があるな…
「ラーリニア! ラーリニアなのか!?」
「どなたなんですか?」
「大賢者さんの記憶を見た時に、たくさん見たし、指輪の記憶でもわかる。かつての英雄ってことになるな。銀の月パーティメンバーだよ」
「ゾ、ソ、ソノユビワ、オマエ…」
── ウガァァァ
── パリン
突然ラーリニアは叫び、襲いかかってきた。
その後何か砕ける音がした。
「危なかった、絶叫には精神攻撃の効果がありました。ハルアット様から"聖なる守り"を頂いていて良かった。いま私達の身代わりに砕け散りましたね」
え、そうなのか、これかなり危なかったのか?
「神の光!」
すかさずタエちゃんの魔法。
「精神魔法に対抗できます。ただ私の魔法はまだ強力でないので、早めに片付けないと!」
「オーケー、行こうか!」
── ブゥン
チッ、さっきから攻撃が効かない。
ローブには当たるし、骨にも当たっている。
だが、骨が外れてもすぐに修復した。
どうすればいい?
さっきまで骨だった訳だから、操られてるのか?
そうなると、何かがその役割を担ってるよな。
あ、杖の魔石から異様なオーラ出てないか?
── バシッ
── カキン
魔石よりも、何かに弾かれた。
ガードされてるな。
時間ないんだよ。
「タエちゃん、どうだろ?」
「あと数分も持たないかと…」
く、ちょっとこれ物理攻撃しかできないからな。
タエちゃんの神聖魔法も、攻撃できるやつないし。
「なあ、ラーリニアさんよ、三百年どうしてたんだ?」
「ウガァァァ、ハル…アッ…ト」
ん? ハルアットって言ったのか?
「ウガァァァ」
一瞬だけ何か感じたが、また凶暴化してるな。
「ハルアットがどうかしたのか? まだ生きてるぞ」
「…ウガァァァ」
何か反応があるな、抗ってるのか?
く、どうすればいい?
「思い出せよ、"時の牢獄"にハルアットとバストールで攻略したんだろ?」
なあ、ほら!?
あれ、俺は何がしたいんだ?
わからない、なぜ手を差し出したのか?
何とも表現できない音がする。
神秘的? 荘厳?
今まで聴いたことのない音? 音階なのか?
旋律とも言えるようなそんな音だ。
そして光が放たれる。
白く濁ったラーリニアの瞳に、再び光が戻った。
「わ、私は、何を? ハルアットは? バストールは? どうなったの?」
「あー、あんたのおかげなんだろ? "時の牢獄"だっけ? ちゃんと攻略して、今も生きてるよ」
ラーリニアなんだか薄くなってないか?
消えてしまいそうだな。
「ずっと守ってた、何も見えないし、時間もわからない。だから守り続けた。でも、もう終わっていいんだ…」
足元から骨が崩れていく。
砂がパラパラと落ちるように。
「ハルアットに伝えて、先に行って…待ってる…」
全て崩れ去ったな。
ローブと杖が残ったか…
「なあ、タエちゃん、ラーリニア最後笑ってたよな」
「ええ、とてもいい笑顔でしたね」
「きっと骨になったままで、"時の牢獄"にいたんだろうな」
三百年もの間、ひたすら仲間を守りたいと望み、やっと浄化された。
最後の笑顔には紛れもなく、孤独の闘いを貫いた英雄の誇りが溢れていたな。
「物理攻撃が効かないから、もうダメかと思ったけど、あっけなかったな…」
── どうして倒せたのか…その理由だけは、今はわからない
── かつての英雄のローブの切れ端が、ただ風に揺れてるだけだった
本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。
あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。
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