キレスジレドへ レッサードラゴン討伐
◼️ 死闘
「タエちゃん、大丈夫か? 再度正面から俺が突っ込むから、隙ができたら横から無理のない範囲でお願い」
「和田殿、わかりました…」
く、何回目の突入だ?
鎧が歪んでるし、刃こぼれも出てきたな。
攻撃は通るが、有効じゃない。
こんな浅いダメージじゃ絶対に倒せない。
確かに前の俺たち以上の力は出ている、だがなんだろう?
決め手に欠ける?
葉山のテイムも効かなかったな。
どうやら精神的に対策されているようだ。
葉山の呼びかけに全く反応しなかったからな。
「タクちん、葉山、タイミングは任せるから!」
「「承知」」
── ゴゴゴゴ
土壁が来たな!
羽虫達も群がってきた!
鱗の隙間に突き刺す!
痛っ、浅いか!
タエちゃんが突っ込むのを横目で捉える。
あ、このタイミングはダメだ!
── ガシュ
ヤバい、タエちゃんに当たらなくてよかった…
でもこれ…
── ドサッ、ガン、ガン、ザザー
── グ、グハッ
口から血飛沫が飛んだな。
「和田殿、大丈夫なのですか!?」
「ハァ、だ、ハァ、大丈夫」
すっかり息が上がってる。
さっきからこの繰り返しだな。
どうすりゃいいんだ。
作戦はある意味機能してる。
タクちんの壁での行動範囲制限からの遠隔攻撃、葉山の羽虫集中での視界妨害、そこに俺とタエちゃんの波状攻撃だ。
だが、そこまでなんだ。致命傷が与えられない。
ん? タクちん何してる?
なんでそんなに前に出るんだ!?
「タクちん、ダメだ戻れ!」
「小生のアイスランスストームは、後ろからだと届かないでやんす!」
尻尾が見えないのか!?
く、間に合ってくれ!!
── ビュシャァ
── グシャ、バツッ、ダンダンダン
ヤバい、なんて力だよ。
どこまで跳ね飛ばされるんだ?
く、ここで倒れるわけ…に…
── 立ちあがろうとするが、崩れ落ちた
◼️ 最初で最後の…
「和田よ、主は何を得たのだ? 不甲斐ない限りだ」
「え、ユウノシン? あれ、ここはまた?」
燃え盛る焚き火、圧倒的な星空。
「バストールの指導も不十分であったか。仕方ない。最初で最後の稽古をつけてやる」
「え、どうするんだ?」
ユウノシンは黙ったままだ。
── パチリ
この火、熱くないんだよな。
でも、こうやって爆ぜる。
「この焚き火も同じことよ。お主は熱くないと思うだろう。だが、主は熱いという真理を知らんのだ」
「…?」
「主は目に頼り過ぎなのだ。なんのための五感か? なんのための記憶か?」
── ブンッ
うわ、いきなり燃えた薪を、何をするんだ?
「熱かろう?」
「え…熱っ、さっきまで熱くなかった…」
「心を解放せよ。すべてを理解しようとするな。受け入れて、己の一部とせよ。文字通りすべてを刻み込め」
わからないことだらけだ。
「さっき炎の熱さも、薪が起こした風も、ここに無いが、同時に存在もしておる。動きは風を起こし、地を踏めば揺れる、花は咲き誇りて香る」
これはきっと言葉で理解するとか、そんな話じゃないって事はわかる。
「主の身体を操る。細部に渡るまで魂に刻むが良い。良いか、二度目はないぞ」
── ガバッ
「わ、和田殿! 大丈夫なのですか!?」
タエちゃんの声は聞こえる。
だが、俺には応えられない。
(では参る! 走るとは全ての細胞から速さを絞り出せ、こうだ!)
これほどの速さ!
ムズムズする感覚、身体中が喜び、怒り、悲しみ、楽しんでる!
(斬撃とはこうだ! 力を込めるのではない、力があると知れ!)
── バシュ
レッサードラゴンの鱗の隙間に刃が吸い込まれ、だらんと右腕が下がる。
腕の筋を切断したのか!
(力強く踏み込め! その反動は大地の力なり!)
── ドゴォ
大きく踏み込んだ! 反動で地面が大きく窪む!
そして、強烈な突き上げ!
── ビシャッ
ダラリと下がっていた腕もろとも、翼を巻き込んで弾け飛ぶ。
「「「おお!」」」
みんなから歓声が。
でも、まだ油断しちゃダメだ。
── ギィィィィガァァァァッ
レッサードラゴンが雄叫びを上げてる。
雰囲気が激変したのがわかる。
伝わってくるのは憤怒。
片腕と片翼を失ったが、勢いは止まらない。
(和田よ、仕上げはお前がやれ。わかるな?)
そうだな、多分わかるよ。
答え合わせと行こうか。
「みんな、しばらく時間稼ぎ頼む、三分欲しい」
「「「承知!」」」
── ゴゴゴゴ
土壁が三重にドラゴンを囲む。
羽虫が群がってるな。
「ヒールシャワー!」
このタイミングで回復はありがたい!
力が身体中に染み渡ってくる!
この右手に全てを乗せる!
力が満ちてくる、細胞から絞り出せ!
── ガゴッ、ドシャッ
土壁の一部に穴が。
ドラゴンがもがき、必死に穴を広げてる。
こいつ、ブレスが吐けないドラゴンでほんと助かった。
普通のドラゴンだったらどうなってた?
── バババ、ドシャッ
土壁が崩された! 来るぞ!
羽虫を嫌がっているが、羽虫だけに致命的ではない。
攻撃の精度は落とせてると思う。
「タクちん、無理するな!」
「攻撃当たるでやんす!」
── ビシュッ
尻尾が来る!
く、動けない!
── ダーン、ズサササ
「た、タエ様、しっかりするでやんす!」
「ぐ、タク殿、無事ですか?」
タエちゃん、身代わりになったのか…
く、あと少しなんだ!
右手が痺れてきた、力の集中を感じる。
── プオオオォ
レッドボアか!?
数匹がドラゴンに突っ込んだぞ!?
「和田にゃん、なんとかこれで間に合うかな?」
「葉山、よくやった! あとは任せろ」
拳が発光してきた、眩しい!
「おっしゃ、行けえぇぇぇぇぇぇっ!」
これで決める、当たれ!
── ドゴォ、ブシュ
「やった、ドラゴンの腹に穴空いてるでやんす!」
「和田殿! やりましたね!」
「僕、頑張りすぎてお腹すいた!」
血飛沫上がってるし、土煙もすごいな。
本当に俺やったのか?
まだ信じられない。
(まったく世話のかかるやつだ。最後の稽古だからな。これからは自分でなんとかせよ)
ユウノシン! 本当に助かった!
◼️ 王都帰還
「ただいまより、キレスジレド国境付近において発生した事案、レッサードラゴン徘徊による国交及び交易の遮断、並びに地域安全の低下について、無事事案が解消された事、陛下よりお言葉賜わる。静粛に受けられよ」
「レッドアイ諸君、今回の活躍は誠に大義である。シルバーランクながら、レッサードラゴンの討伐を成し遂げるはゴールドにも勝る働き、ここにささやかながら賞を用意した。余の感謝として汝らに贈るものとする」
── おお、それは素晴らしい!
── やるではないか
── ハルアットの召喚者らしいな
今回は人払いされてないからな。
外野のざわつきが…
「陛下のお言葉、謹んでお受け致します。此度の暁光は陛下並びに配下の方々のご威光によるもの、この和田感謝に絶えません。今後とも精進致します」
「良い心がけじゃな、今後ともイストリアのため精進するがよい」
顔上げられ無いからな、周りどうなってんだ?
俺ちゃんとやれてんのかな?
「ワンジヤンス、褒賞を与えよ」
「はっ、それでは陛下に代わり、このワンジャンスより論功行賞の儀、進めさせていただきます」
── 今回の論功行賞は以下のようなものであった
レッサードラゴンの討伐褒賞として、金貨五百枚が与えられるとのこと。また、ゴールドランク授与という話もあったのだが、早すぎるとの意見もあり、再度指定のクエスト五件をクリアが認められれば、ゴールドランクを授与する、とのことだった。
「レッドアイには追って依頼の沙汰を申し伝えるゆえ、しばし拠点で待機しておれ」
「は、畏まりました」
── 深々と拝礼する面々であった
◼️ 闇の侵攻
「お伝えもうします、キレスジレド国境付近のレッサードラゴンが討伐されたとの事でごさいます」
「なんだと!? あと三ヶ月はかかるのではなかったか」
フードの男の怒気が辺りを覆っていた。
一段と暗闇が濃くなった気がする。
「はっ、例の召喚者の手によるものだと報告がございます」
「おのれ、ハルアットめ、どこまでも邪魔だてするか! まあ、よい少しだけ猶予ができた、その程度の誤差よ」
報告に来た男は、顔を上げる事が出来ずずっと床を見つめていた。
「例の件急がせろ」
「やってみますが、まだ準備が必要かと」
フードの男は顎を撫でていたが、口元に嫌な笑みが浮かんだ。
「そうだ、アレがあったわ。すぐに時の牢獄より運んでまいれ」
「本当でございますか? アレは危険なのでは?」
── フハハハハ
凍りつきそうな笑いが溢れる。
「心配するな、この私自ら処理してやるからな」
「はっ、それでは間違いはございますまい」
フードの男は満足そうに頷いた。
本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。
あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。
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