キレスジレドへ 港町ソル
◼️ 海路で北へ
「ガハハハ、なかなかどうして。すっかり見違えたじゃろう」
「痛い痛いって」
── バンバン
絶対肩に手形ついてんな。馬鹿力すぎんだよ。
ただ、ここのところ気絶も無くなったし、致命的な攻撃も貰わなくなったのはデカい。
「さすがは召喚者ってところだな。そろそろ出発してもいいんじゃないか?」
「レッサードラゴン倒せるかね?」
バストールはニヤニヤしてる。
「小僧、俺は片目が潰れたとは言え、この世のほとんどの戦士、魔物に引けは取らんぞ。お前さん、俺に勝つことはできんが、決して弱くはない」
「まあ確かに実感はある。でも実戦経験ないしな。それに特訓三日なんだけど」
レッサードラゴンのオーラ、半端なかったんだよな。
「まあ、こればかりは経験よな。それより、肉娘の方がやりよるかもしれん。あやつなら、あっさりテイムしちまうんじゃないか?」
確かに、それは俺も思ってた。
これまでも、なんだかんだで葉山に頼る所多かったし。
「剛腕の姉ちゃんも、造形魔法の坊ちゃんも、お前さんらのパーティは、そこそこなもんだと俺は思うぞ」
「まあ、どのみち冒険しなきゃだよな。それに遅くなれば被害も増えるし、市場も大変なことになるしな」
これは試練ってやつだな。
しっかりしないと、ユウノシンにどやされる。
「おっと、待った。忘れとったわい。お主らに大先輩からのアドバイスじゃ。お主ら海路でキレスジレドに向かって、装備一新しろ。たしかドラゴンソードもあったはずだ」
「ここでは買えないのかな?」
ん? ロンギスタン?
「私から説明しましょう。キレスジレドは商人の国なんです。残念ながらイストリアの繁栄など全く及ばず、あちらは何倍も繁栄してますから、あらゆる国から商品が集まります。装備の強化は冒険者として必須ですな」
なるほど、確かにゲームでもいい装備買わないと、先に進めないもんな。
「どこから船乗るんだ?」
「東のソルから乗船できます。馬を船で運ぶのは大変なので、徒歩で行く方が良いでしょう。ソルは近いので、徒歩でも充分行けます」
じゃあ、装備を一新に行ってみますか。
◼️ 特訓の成果
「お、なんだか潮の香りがしないか?」
「和田殿、微かに感じます!」
「僕はお肉の匂いが嗅ぎたい!」
葉山が叫んでるな。
肉の禁断症状出てるぞこりゃ。
食べるものは、携行食が多く乾いたものがメインだから、まあ飽きるよな。
と言っても、一日半行程だからこの程度で禁断症状は勘弁だな。
「ふふふん♪これは、こうでやんす〜」
「タクちん、なんか嬉しそうだな。なにしてんだ?」
「みるでやんす!この美しき光沢」
電車の模型? 倉庫から持ってきてるヤツは、馬車になってるよな。
「それ、アポーツで取ってきたのか?」
「ノンノン、そんなことしなくても、小生特訓で極めてしまったでやんす」
ヤバいな、タクちんのドヤ顔が始まった。
「小生、この三日の特訓でやんすね…」
「和田殿、そうなんです。私もタク殿もかなり頑張ったんです」
タエちゃん、ナイスだ!
「私はヒールシャワーを覚えました!」
「おー、名前からしてみんな癒される感じだな!」
タクちんは、ぶつぶついっていたが、再び模型に熱中している。
「タク殿は、火土水の上級魔法までマスターし、魔法精度が格段に上がってます」
みんな、やるなぁ。
そういや、葉山は何してたんだろう?
「小生、造形魔法も土以外の素材も扱えるようになったでやんす」
それでこのメタリック感ある模型ね。
まあ、これで全体的に戦力アップしてそうだ!
── 緊張感もなく、港町ソルへ到着した
「ここが港町ソル…ね、なんか寂しいな」
「ねえ、お肉あるかな?」
「魚は確実にありそうな感じだが…」
なんだか田舎の漁港って感じだなぁ。
人も疎らだし、活気ってものが感じられない。
── 船が着くぞ
なんだこりゃ、この港に釣り合わないデカさだ。
「小生、船は乗ったことないでやんす。あの大きいのにのるでやんすか?」
見た感じ、船着場はここだけだから、ここしかなさそうな気がする。
船着いたとたん騒がしくなったな。
商人とか積荷がどんどん出てくるぞ。
「なんだ、クソ田舎のソルに、見かけないのがいるなぁ」
「兄貴、コイツら連れて行きやしょう。例の連中なら、欲しがるはずです。良い稼ぎになりやす」
なんだ、いかにもって感じの悪役って感じ。
「ふーむ、そこの姉ちゃんは、すぐにでも行けそうだな。そっちのガキは、あと少しすりゃ女っぽくなるだろ、ハギムやれ」
「へい!兄貴」
なんか、こっち来るな。
多分、タエちゃんと葉山の事だよな。
嫌な笑い張りつけてやがる。
「こんなクソ田舎より、もっといい生活させてやんよ。一緒にこい…てててて、痛っ!」
ハギムって獣人、タエちゃんに馴々しく触れたからな。
あらら、腕掴まれて紫色だな。
「こら、なんつー馬鹿力なんだ女!離せ!」
タエちゃん、少し力入れてるよな。
まあ、剛腕だからな。折れてなきゃいいけど。
「ぎゃー、痛え、離せ! 離せ、いや離してください。ご、ごめんなさい」
「気安く触るからだが?」
ん? 兄貴ってやつ、なんか素早いな。
もうタエちゃんの後ろに回り込んでる!
「姉ちゃん、洒落にならねえな。あんまり調子乗ってると、このソドさん怒っちゃうよ…え?」
全く、どうしようもないな。
「こら、お前はなんだ、いつのまに俺のベルト外して、え、返せって」
「ん? このベルト欲しい? なら大人しく帰ってくれる? あんたらも見せ物になりたくないよな?」
隙だらけだよ。ベルト外すのも余裕だったわ。
ズボンずり落ちてるぞ。
── ハハハハッ、なんだ?
── ズボンおろして、ここはトイレじゃないぞ!
周りからも笑われてんな。
「「こ、このー、覚えてやがれー」」
お約束のセリフだな。
なんとも情け無い奴らだ。
「和田殿、お見事です! 私にも全く見えませんでした」
「そんな大した事してないよ」
思ったよりも、かなり素早く動けたな。
前の俺なら、どうなってたか? こんなあっさりとはいかないよな。
◼️ ソルの港
「あ!いい匂いだ!」
「おい、葉山どこ行くんだ?」
仕方ない、追いかけるしかないな。
葉山には金持たせてないからな。
「僕、お肉も好きだけど、この匂いもたまんないにゃ」
「そうだろうとも、うちのクラーケン食ったら、他では食べられないよ」
クラーケン? なんか、ダイオウイカみたいなやつだよな。
「葉山、肉じゃなくていいのか?」
「うん、だってこれ絶対旨いやつ」
日本人なら、醤油と言いたいとこだが、これはこれで悪くない。甘辛なイメージが浮かぶ匂い。
「クラーケンはよく焼かないとダメだから、もう少しお待ちを」
「はいはーい!」
ほんと、これは間違いないだろう。匂いだけで生唾が止まらん。
「ところでおじさん、ここの店長いの?」
「まあ、十年くらいはやってるよ」
「そうなんだ、前からここって寂れてる感じなの?」
クラーケンがひっくり返る。さすが十年の技。
タレが落ちて、さらにジューシーな匂いと煙が、食欲マックスになるな。
「よし、あと少しだからね。そうさなぁ、ここはもともと海賊が使ってた港でね。かなり昔からあるんだが、キレスジレドは圧倒的に陸路が近いし、便利だからね」
「海賊? そうなんだ、物騒なとこなんだな」
「いや、海賊の港と言っても、三百年も前の話さ。ハルアット様たちが討伐してくれたでな。それからは、うちらみたいな仕事にあぶれた者が、漁師になったり、そんなとこさ」
なるほど、利便性も悪い上に、昔からのしがらみで、見向きされないのか。
「こんな東の果てみたいなとこだからな」
「でも、最近はキレスジレドの輸送はここからしかできないんだろ?賑わってくるんじゃないのか?」
葉山が、ヨダレ垂れそうだな。
「キレスジレドはイストリアなんぞ、本気で相手してないね。船も定期便だけど、三日に一往復だけだしな。必要最低限ってところさ」
なるほど、じゃあラッキーだったな。さっきの定期船逃したら、三日待ちだったな。
「ほい、クラーケンお待ち」
「ひゃーい、これは…」
葉山がおかしくなってるな。
「オヤジさん、キレスジレド行きは、さっき着いたやつ戻る感じ?」
お金払わないとな。
「まいど!荷物おろして、こっちからの荷物積み次第出航だな。もうしばらくかかると思うが、あそこ受付だから、聞いてみな」
「ありがとう!また来るか」
葉山、夢中でかぶりつきだな。
「むひゃ、こほえ、うまうま、マヨほネーズはへたい」
「食うかしゃべるかどっちかにしろよ」
まあ、何言いたいかわかるがな。
受付行ってみるか。
── 受付に確認したところ、本日沖の天候不良で明日朝出発と言われる
「ついてない。しゃーない宿屋行こうか」
本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。
あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。
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