紙作り
◼️ 紙工房仕上げ
「ただいま!いや、やっと葉山捕まえてさ」
「遅いでやんすよ!」
なんだ、タクちん口ほど怒ってないな。
一応心配してくれたのかな?
「あとは道具を作らないとでやんす」
「そうなのか、時間かかりそうかな? 多分こっちで六日経ってるから、戻ったら三日って感じかな。道具作ったら、一旦帰らないとな」
タエちゃんは箒で掃除をしているのか。
葉山大丈夫か?
「ここ、お肉焼けるにゃ?」
「そこはエサキスを煮るとこ! 肉なんか焼く場所なんて無いでやんす!」
まあ、変わりなさそうではあるな。
「道具ってのは?」
「簀桁という、材料を水の中から掬い上げて均一に伸ばす道具でやんす」
あー、なんかそういうの見た事あるな。
「これでやれば、かなり早くできるはずでやんす」
なるほど、ドライバーとか、ノコギリとか、造形魔法で用意したのか。
「おー、相変わらず器用だな。悪いが任せていいか? 他やれる事あるのかな?」
「まあ、小生に任せて、あとはタエ様みたいに、掃除とか整理とかよろしくでやんす」
━━ シュコシュコ
相変わらず早いな、材料がどんどん加工されるぞ。
「ん? これってなんだ?」
「あ、それはですね、こちらの世界のお茶だそうです。淹れ方は日本のと変わらないですが、おすすめしないです」
ん? どういうことなんだ?
「和田っち、それはものすごく不味いでやんす」
「そう言われると試してみたくなるな・・・」
「私たちは白湯を飲んでたんですけど、あちらに湯は掛けてあるので、飲んでみますか?」
タエちゃんも苦笑いしてるな・・・
「まあ、好みの問題なんだよな。二人が嫌いなだけってこともあるし」
「好きにするでやんす」
お、ちょうどコップ二つあるな。
淹れてみるか。
「おい、葉山、淹れといたから、飲みたきゃ飲んでいいぞ」
「はいはいーい・・・」
なんか葉山固まってるな。
「ぶぅぅぅっ、これ何? 雑草のお湯にゃん?」
「こらこら、吐き出すなよ、まったく」
匂いは確かに、草って感じだな。どれどれ。
そんな大袈裟な、と思ったが何だこれ!
「うん、葉山ゴメン。これは雑草の味だな。いや、もちろん雑草食ったことはないが、草むらの匂いだよな」
「それ、変に酸っぱいにゃ!」
ふう、散々な感じだな。
しかし、これではなんだか、こっちの生活で落ち着かないというか。コーヒーも紅茶も無いって、ちょっと辛いよな。
「こっちの生活レベルを上げる必要があるな」
「お肉も必要にゃ!」
「さっき串五本食ったろ!」
赤島倉庫から何か持ってきてもな。こちらに渡ったときに変容してしまうからなぁ。
「タエちゃん、あとどれくらいかかる?」
「特には、あとはタク殿の道具作りだけかと」
「タクちん、悪いけど買い物行ってくるわ」
タクちん、ほんと頑張ってるな。黙々と作業してるぞ。
お茶の代わりになりそうなもの欲しいからな。ここはタエちゃんに期待したい。
「タエちゃん、悪いけど一緒に市場行って欲しい。生活に必要なもの買いそろえよう」
この前のエサキス採取からの、マッドライノ討伐で魔獣の素材とか売ったお金あるし、なんか買えるだろう。
「和田殿、承知です」
「わーい、僕も行くにゃー」
「葉山は留守番!もうお前は動くな。こっちが疲れる」
「行くー、お肉ー」
まだ食うのか?
食った肉はどこに消えるんだ?
「わかった、お土産買ってきてやるから、じっとしてろ」
「ぷう、絶対買ってくるにゃ!」
■ 不穏な噂
葉山大丈夫かな、じっとしてられないやつだからなぁ。
しかし、日に何回市場来るんだ俺は!?
「和田殿、ひとまず何を揃えますか?」
「やっぱり、拠点になるわけだし。お茶の代わりになりそうな物は欲しいよね。あとなんだろ」
調味調的なものとか、食器類とかそんな感じか。
あ、でも俺ら紙工房に住むのか?
そこもちゃんと決めないとな。
「とりあえず、今日明日くらいで必要そうなものを何か探してみましょう」
「タエちゃん、頼りにしてる」
── 食品、怪しげな雑貨、なんの用途かわからない道具
いやー、色んなものあるなぁ。
こういうのんびり買い物とかいいもんだよな。
でも、探し物は見つかるのか? 後でギルドの人に聞いたほうがいいかな。
「和田殿、あれちょっと気になります」
「ん? あそこのやつ?」
色々な肉が吊るされてるんだが、そこの端に葉っぱが置いてあるな。
んー、これは料理人にお任せしよう。
「この葉っぱは何ですか?」
「それかい、臭み消しに使うものさね。あんたら、これを知らないって・・・」
「なるほど、私は遠くから初めて来たので、よくわからないんです」
この反応って、これはこの辺では当然のことなのか?
まあ、確かに葉っぱで煮込むとか、テレビでみたことあるな。
「タエちゃん、ちょうど葉山にも肉いるからさ、その葉っぱ必要なら、肉と一緒に買って帰ろう」
「和田殿、この葉は爽やかな香りがいいですよ。茶葉にしてみるのもいいかと思って」
やっぱり、タエちゃんいて正解だな。
「おばさん、じゃあその葉っぱと、そこの肉二つもらうよ」
「あいよ、申し訳ないけど、オルガの葉は高騰しちゃっててね、高いけどいいかい?」
── おばさんの話を要約するとこうだ
この葉っぱは、オルガと言って、ほとんどが北のキレスジレドから仕入れてくるものらしい。
先月くらいから輸送が滞り、海路経由で入ってくるもに頼っているので、値段が上がってしまったということだ。
「おばさん、なんで仕入れ難しくなったの?」
「なんでも、商人が襲われるようになったみたいでね。盗賊でも出たかねぇ。やだやだ」
オルガ・・・肉と同じ値段だったな。
買った肉は鶏肉っぽい、とはいえ、大きさが全然大きいが、チキンステーキみたいに食べてみよう。
しかし、盗賊出てるかもってことだけど。物騒なんだな。
「和田殿、このオルガでお茶を作ってみましょう。多分美味しいと思います」
「タエちゃんが言うなら、間違いなさそうだな」
あとは、食器や洋服なんか普段使いするものを買い込んだ。
■ 和紙作りとお茶作り
「ただいま」
「肉買ってきたにゃ?」
ふん、と肉を持ち上げて見せる。
「おお、鶏肉っぽい、早く食べるのにゃ♪」
「まてまて、まだ後でな。タクちん、どんな状況かな?」
タクちん、鍋で何かやってるな。
ラーメン屋のスープ作ってるみたいに、何かかき混ぜてる。
「道具も揃ったんで、さっそくエサキス煮てるでやんす」
「おお、もうそんな感じなのか!」
タクちんドヤ顔だな。
「あと一時間くらい煮込んで、そしたら皮を剥いで干すでやんすよ。そしたら干していくでやんしょ、乾いたやつを水にさらして戻すでやんす、繊維の純度を上げるために、灰汁と一緒に煮込んでやんして・・・」
「オッケー、タクちんわかった。やんすストップ」
このまま止めないと、でやんす攻めになるからな。
タクちん、まだブツブツ言ってんな。
まあ、順調そうだということはわかった。
「では、私はお茶を作ってみますね」
「そっちは簡単なのかな?」
「一時間ちょっとあれば、何とかできると思います」
じゃあ、楽しみにしておこうかな。
ん? 葉山がじっと見てるな・・・
「で、僕のお肉は?」
「わかったよ、半端な時間だけど、お茶と一緒に食べるとするか」
「むふふ、じゅるり」
葉山・・・目が怖いぞ。
じゃあ、俺もたまには料理するかな。
しかし、和紙作って、お茶作って、なんだろな。
今度は米でも作るのかな。なんてな。
でもなんか思っちまった、こんな日常もいいもんだよな。
── お茶とグリルチキンができた!
「うーん、これはいい匂いだなぁ」
やっぱりお茶って香りも大事なんだな。実感した。
アールグレイとはいかないが、少し甘い爽やかな香り。
「やっぱり、白湯飲むよりいい感じでやんすな」
「僕のお肉♪ 皮がパリパリでおいしいにゃ♪」
肉の取り分がおかしい件について。
「おい、葉山お前の肉・・・なんで皿二つなんだ?」
「葉山殿、いくらなんでも、そんなに食べられますか?」
「ガルルルルッ」
おい、噛みつく気か。
皿に触れようとしたら、威嚇されてる。
「はあ、もう好きにしろ。しかし、タエちゃん、このお茶まじで美味いよ。落ち着くなぁ」
「なかなか上手くできましたね。もう少し熟成できるともっと良くなると思いますが」
── しばし、お茶と肉を楽しむ一同
「タクちん、残りはどんな感じなんだ?」
「いま煮込んだやつ乾燥かけてるので、天気が悪くならなければ、明後日くらいには再度戻しができるかもでやんすが、最終まであと四日くらいかかりそうでやんす」
なるほど、てことは、こっちにきてトータル十日ってところかな。赤島倉庫では五日が過ぎる計算だな。
「まあ、自動で報告は出るから、大丈夫か。ひとまず紙を作り終えるまではいるしかないか」
■ 紙の試作品が完成
── それからお茶とお肉と紙づくりの日々
「できたでやんす!」
「おお、どんな感じだ? 結構黄ばんでるな。でも、いい感じじゃないか?」
まあ、薬品とかないし、漂白も十分ではないしな。
でも、これどう見ても和紙だ。
「小生、頑張ったでやんすが、紙をすいたのも昔でやんすから、端の部分が均一にならかったでやんす」
「タク殿、でもこれよく見ないとボコボコしてるのも、全然わからないし、端だから切ってしまえば問題ないですよ」
確かに、このレベルなら、問題ないんじゃないか?
「まあ、いずれにしても、実践でやった手順を全部まとめて、あとはハルっちに託すでやんす」
── そして、大喜びするハルアットに後を託し、俺たちは一時帰還した




