イストリア建国秘話 覚悟
◼️ 覚悟
ハルアット達の活躍は、途方も無いと思う。
ユウノシンは、俺らを買ってくれてるのか?
だが、俺らに何ができるんだ?
「後一つ言っておかねばな。ワシは三百二十六歳と言ったな?この国が滅びると言われた三百年後というのは、六年後なのだ」
圧倒的な現実。
こんな事、俺の人生で感じたことなんてない。
物凄いプレッシャーだ。
「ユウノシンは、"見通す者"のスキルのせいで、消されてしまった。そう思っておる。イストリアの発展の最大の理由だからな」
「そういえば、"見通す者"って、ハルアットに贈るって、書いてあったよな?」
「うむ、お主も触ったであろう?冒険者ギルドでな」
なるほど、あの気色悪い卵か。確かに"見通す者"って言ってたよな。
「我らはやり過ぎてしまったんじゃろうな。まあ、それもあと少しで終わりじゃ。わしの命も燃え尽きるわい」
さっきから、同じところを思考がぐるぐる回ってる。
俺らに何ができるのか?
俺らに何が求められてるのか?
「なあ、大賢者さんよ、俺ら多分そんな望まれてるような存在でないと思うんだよな」
「なんじゃ、ワシらの活躍で、びびったかの?」
「まあ、早い話がそういう事だ」
ハルアットが見つめてくる。
「ふむ、まあひとつだけ言えるとすれば、ワシが行った召喚の儀は絶対じゃ。それに呼応した主らは、この世界に必要とされておる」
「と、言われてもなぁ。全く実感がないんだよ」
「まあ、それはワシにもわからんな。ワシが選んだ訳ではないからな」
なんだろな、今一つ決め手にかけるというか。
どうすりゃいいんだ?
「まあ、あと六年あるんじゃ、そもそも主らまだカッパーじゃろうが。早うゴールドくらいになって見せよ。話はそこからじゃ」
「まあ、確かにそうだよな。まだ、カッパーだもんな」
少し気が楽になったような気がする。
「まあ、ワシはな、お主らを信じておるぞ」
そして、カタリとまた木の板を置く。
「その板もユウノシンが残したものだがな、ワシには読めんのじゃ」
━━ 見守る物よ、破釜沈舟の覚悟で挑め
なんだ?"はがまちんせん"? いや、絶対違うな。それは自信ある。
なんだろ、帰ったらスマホで調べるか。
もうこれ、完全にユウノシンは日本人だろ。
とにかく、俺らができる事なんて、今の時点では知れてる。やるだけやって見よう。
あれ? 俺ってこんなポジティブだっけ?
面倒臭えって、なると自分でも思うんだがな。
「まだ時はある、仲間とも話してみるがよい」
「わかった…」
あと六年か。以外と短いよな。
ハルアットたちが守り抜いてきた三百年以上、途方もないと思う。
俺らに何ができるか、まだわからないが、覚悟は決めないといけないんだろうな。
◼️ 和紙作り
━━ 少し遡って、和田が治療を受けている時のこと
「しかし、和田っちは良く倒れるでやんす…」
タクちんが腕を組んで唸っている。
「でも、和田殿がいなければ、もっと被害が出てたでしょうね」
タエちゃんは落ち着いてるが、心配が滲んでる。
「和田にゃん、サイにツンツンされてたねー。僕も怖かったよー」
葉山は飾られたよろいをツンツンしながら、いつも通りの調子だ。
冒険者ギルドの応接室。
重厚な木の机と、壁に飾られた武具。
外の喧騒が遠くに聞こえる。
「小生、紙作りの準備がしたいでやんす」
タクちんが立ち上がる。
「そうですね。和田殿もいつ回復するかわかりませんし、紙作り進めましょう」
タエちゃんはすでに段取りを考えているようだ。
「あー、僕はちょっと、遊びにいくにゃん!」
言うが早いか、葉山はドアを開けて飛び出していった。
「あ、葉山殿…ほんとにしょうがないですね…」
タエちゃんがため息をつく。
そこへ、葉山と入れ違いでロンギスタンが入ってきた。
「ハヤアマ様は…またどこかへ?」
「飛び出していってしまいまして…」
ロンギスタンは苦笑いを浮かべる。
「ロンギっち、紙作り始めたいので、場所を案内して欲しいでやんす!」
「なるほど。では私がご案内しましょう」
ロンギスタンは、"ロンギっち"にわずかに眉を動かしたが、やれやれと言った表情で頷いた。
◼️ 葉山はどこへ?
「こりゃ凄いな!」
「和田っち、お目覚めでやんすか?」
「和田殿、もう平気なんですか?」
昨晩のハルアットの話が強烈すぎて、まだクラクラしてるんだよな。
ベッドに戻ったけど、結局眠れなかった。
ギルドの職員に、みんなの居場所確認したら、ここを案内された訳だ。
「悪かったな、また寝込んじまって…」
「和田殿の判断は迅速で、正しかったと思います」
「小生、よくわかんないけど、和田っちの判断は今のところ正常でやんすな」
なんだかんだ言って、信頼してくれてんかな。
「それよりも、この設備ってタクちん作ったの?」
「まあ、小生にかかれば、匠の技ってやつでやんす」
この流れは…ドヤってるからな。
「まず、それっ… 煮熟用角釜でやんすな。和紙の原料、エサキスを煮込む用で、その隣が…」
「タクちん、えーと、長くなるよな?」
「タク殿、素晴らしいのはわかってますから!」
まだまだ、これからだとタクちんはぶつぶつ言ってるな。
「あー、それより葉山は?」
「それがですね、遊びに行くと、出て行ってしまって。申し訳ないです」
「いや、タエちゃんせいじゃないよ」
なるほど、また肉でも食いまくってるのかな。
「じゃあ、ここは二人にお任せでいいよな。俺探してくるよ」
━━ しゃあないなと、王都の市場へ向かう
さて、何処に向かうか?
でも、こうやってみると、遊びに行きたくなる気持ちはわかるんだよな。
エルフにドワーフ、獣人、異世界要素満載だしな。
怪しい道具も見てみたい…
いや、いかん。ミイラ取りがミイラになるな。
まずはこの前の肉屋だな。
「おじさん、こんちは!」
ジュウジュウと肉の焼ける匂い、独特の油の匂いも胃袋を刺激する。
「あのさ、この前ここにもきた女の子って、今日も来なかった?」
「あー、あのお嬢ちゃんね。今日は見かけないけどなぁ」
「そっか、邪魔したね。また来るよ」
ったく、どこいった?
━━ 市場の端から端まで走る和田
全くわからん。どこなんだ?
ん? ここは?
市場から外れてるな。もう、出店もないな。
「こらー、待つにゃん!」
「変なお姉ちゃんに捕まるよー」
ん?葉山か?
子供の声もするな? キャッキャ言ってる。
━━ ギィィィィ
この扉めちゃくちゃ古くて傷んでるな。
勝手に入って大丈夫だったか?
「捕まえたー!僕の勝ちにゃん!」
「わー、お姉ちゃんズルい!」
「にゃんにゃん」
「にゃんにゃん、じゃないぞ。何してんだ?」
葉山、固まってるな。
「わ、和田にゃん、どうして!?」
「お前一人だと倉庫帰れないだろ? さすがに、そろそろ帰らないとだし」
なんだ? そんなにシュンとして…
「ここね、孤児院なんだって。僕もさ、孤児院で育ったんだよね。本当の親の顔知らないんだよね」
「葉山…お前…」
ちょっと沈黙。
「ちゃんと喋れるじゃねえか!?」
「え、そこにゃ?」
なに地団駄踏んでるんだよ。
「むきー、和田にゃんさー、僕のこと心配とかしないわけ?」
「まあ、あれだ、ちゃんと聞いてやるから、話してみろよ」
話してる間も、子供らがまとわりついてんな。
さすがテイマーだな。
「さあ、みんな、僕は帰るから、ばいばいにゃん」
「えー、もっと遊ぼうよー」
「わたし、まだ捕まってないのにー」
葉山、大人気じゃないか?
泣いてるのもいるぞ。
「ごめんねー、またくるから。約束だにゃ」
なんだ、強引だな。もう門の外出てる。
「おい、葉山いいのか? ちょ、待てって」
ん? なんだ?
門出てすぐ横、葉山いるじゃん。
「帰りながら話すよ…」
らしくないなぁ。こっちが調子狂うぞ。
「わかった、聞こうじゃないか」




