表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/15

イストリア建国秘話 ハルアットの苦悩

挿絵(By みてみん)




◼️ ハルアットの苦悩


━━ ここは、ハルアットの部屋か。


いつのまに?部屋に戻ってるんだな。


長い映画?直接の記憶?

とにかく、圧倒的なリアルさと情報量に目が眩んだぞ。クラクラする。


「ここから先はな、ちと血生臭いところもあるで、覚悟してくれ」


多分、ハルアット自身が辛いんじゃないか?


「わかった、見せてくれ」


━━ ハルアットの手を再度握りしめる。


それからは、冒険者としても、家族生活としても順調極まりない日々だったようだ。

ところが、あの日──


「ルクルストも十四歳、立派になったなぁ」

「あなたに似て、とても賢くて、勇気がある」


二人とも、満ち足りた穏やかな笑みを見せている。


「ハルアット、私はとても良い人生だったと思ってる」

「え?」


まだまだこれからじゃないのか?

ハルアットも戸惑っている。


「いいか、落ち着いて聞いて欲しい。明日、私はこの世から消えるだろう」

「さっきから何言ってるのよ?」

「これは避けられない(えにし)なんだよ」


ハルアットは信じられないという表情で、言葉を探している。


「あなた、たまにおかしな事いうわよね。本当に」


ハルアットの記憶を見たからわかる。

要所要所で、突飛とも言える発言の数々。


たとえば、唐突に道を変えようと言った。

直後、岩山が崩れたことを後から知った。


とても良い依頼を受けようとした。

だが、ユウノシンは引き留めた。

その依頼は偽の依頼だった。


こんな事がたまに起きるので、ある時に聞いたのだが──

「私は勘が鋭いんだ…」

いつも決まって、笑って流されるのだ。


「ハルアット。これまで黙っていて悪かった。私にはとあるスキルがあるんだ」

「え?」

「全てでは無いが、未来の事、秘められた事、そう言ったものを見通せるのだ。これを話してしまうと、色々なものに利用される恐れがあるんでな。黙っていたのだ」


どういう事だ?そんなスキルあるのか?

俺はますます引き込まれていった。


「そうなのね。なんとなくわかってたわよ。だって、いろんな事あったけど、私たち誰一人欠けることなく生き延びてる」

「そうだな、だからこそ、オリハルコンまで到達できた」


ハルアットがため息をつく。

とてつもなく不安が膨らんでいるのが見て取れる。


「それで?だからなんなの?」

「明日お前は旅に出るのだ。息子は私の信頼できる人に預ける」

「そんな、急すぎる!」

「ダメなんだ、ハルアット。私が愛する、お前も息子も、この心血を注いだこの国も、失う訳に行かないんだ」


沈黙が痛いくらいだ。

ハルアットもユウノシンも、無言で見つめあっている。


ハルアットの頬に涙が伝う。


「あなたが一度決めたら、もう、何があっても変わらないわよね?」

「ああ、言うことを聞いてくれると助かる」

「でもね、大切な人が明日消えてしまう、そんな事聞かされて、黙って従える人なんていないのよ?」

「本当に済まないと思う。でも、これしかないんだ。お前がいない未来などあってはならない。私はその礎となるのだ」


ハルアットの涙が止めどなく溢れ出す。


挿絵(By みてみん)


「私も一緒に行くわよ!」

「ルクルストはどうするのだ。もっと冷静になれ」


そういうと、ユウノシンは静かにハルアットを抱き寄せる。


「すまん…許せ」


ん?どうした?

ことりと崩れ落ちるハルアット。

ユウノシンがそっと仰向けに寝かせる。


何かしらの術?薬?

よくわからないが、ハルアットは眠りに落ちたようだ。


「指輪の継承者よ、見ておるのだろう?」


ん?どういうことだ?誰に言っている?


「お主だよ、そこにおるのであろう?」


え、ユウノシンは真っ直ぐと俺を指差している。

これは記憶ではないのか?


ちょっと待て、ユウノシンの指輪は、今俺の指のものと同じ!?


「きっと、お主はこう思っているのだろう?これは記憶なのだと、俺は見えていないのだ、と」


え?どういうことだ?

俺は思わず振り返ってみる。

だが、後ろには誰もいない。


見えているというのか?


「まあ、そういう意味では、私も見えているわけではない。私の“見通す物”の力が、お主を捉えておる」

「あんた、日本人なのか?」


沈黙。

こちらを認識しているのだろう?

なぜ何も答えない?


「だがな、いたとしても、私にはお主がそこで聞いている、ということを知覚しているだけなのだ。すまんな」


確かに、触れようとしてみたが、こちらから触る事は出来なかった。

これはやはり記憶なのだ。


「時間がないから、とにかく伝える。これより三百年後、この国が滅びる」


ユウノシンが、考えこみ、言葉を選んでいるのがわかる。


「いや、滅びるのを感じた、というほうが正確だな。それは、何もしなければ、という意味だ。だから、ハルアットに未来を託した。見守るものよ、どうか、ハルアット、いやこの国の全てを助けて欲しい」


どういう事なんだ?訳わからないぞ。

俺はそんな大層な者じゃない。


ユウノシンはハルアットを愛おしげに触れると、立ち上がり、そして部屋を出た。


頭がクラクラしていた。

先程からずっとハルアットの記憶に入り込んでいるからなのか?


そして、何かに吸い込まれたような気がした。


◼️ ハルアットの部屋


どうやら引き戻されたらしいな。


「なんて事だ、ワシも知らぬ記憶が…」

「どうしたんだ?」


ハルアット、動揺してるな。


「あの時、ワシは寝ておった。おそらく薬でも嗅がされたんじゃろう。酷く呪ったわ。なぜ、ワシを一人置いていったのか?」


これは、親でなくても、恋人が居なくても、絶対わかる気持ちだな。


「もちろん、ユウノシンが息子を、国を託したのもわかっておる。誰かが背負わなければならんこともな」


ハルアット…俺には何が言える?

何を言ったとしても、きっと虚しいだけだろう。


「何が悲しいかわかるか? もう涙すら流れんのじゃ。ワシの涙は三百年という時に吸い込まれた」


ハルアット?立ち上がり、棚をゴソゴソし出した。

そして、テーブルに投げ出される木の板。


「これがの、残されておった」

「読んでも?」

「うむ、お主にも関係あることじゃしな」


木の板に目を通す──


イストリアの滅亡は今日より三百年後。鍵は他の世界からの戦士たち

スキルはもう私には不要なもの。剥離の儀によって、見通す物をハルアットに贈る

アフテンスラットへ行け。時の牢獄にて必要な物が見つかるはず


ユウノシンの気迫か、情熱か、刻まれた文字から伝わってくる。


━━ 声が聞こえる。誰の声だ?


わからない。

だが、確かに俺の中の心の奥底にある、何か悲しいもの…それと同期している?


そして、これは…!?


()()()()()()()


え、これって、日本語じゃん。

最後の行だ。ハルアット、読めてないだろうな。

という事は、多分俺だけに向けられた言葉?


何を伝えたいんだ?ユウノシンさんよ。


◼️ そして伝説へ


「この後、言葉通りユウノシンは消えた。散々探したがの。見つからんじゃった」

「それで?」

「諦めきれんかった…じゃがな、ある日城に呼ばれての。そして…」


ハルアット…

かなりの気持ちを奮い立たせるって感じだ。

できれば、聞きたくないよ。俺は耳を塞ぎたい。


「国王が、心して見よ、そう言ってな。箱を出すのじゃ。ワシは見たくなかった。じゃが…仕方なく蓋を開けると、ユウノシンの虚な目がこちらを見ておった」


つまり、そういう事か…。


「王がいうには、ウェスガルガンの商人が運んで来たというんじゃ。じゃが、ワシの耳には何も入らん。気がつけば、走り出しておった」


こんな経験なんて、誰もしたくないよな。


「城門を出ようとした時、バストールに止められたんじゃ」


『ユウノシンの仇とるぞ。お前さん一人で行かせねぇよ』

『そうだよ、姉御。あたいも行くんだからね』


「それからじゃ、正に地獄のようなダンジョンめぐりよ。その中でも “時の牢獄” は苛烈じゃった。朝まで語っても時間が足りんじゃろう。戻った時には、ワシとバストールのみじゃった。バストールは片目も失ってな」


それで二人だけになったんだな。


挿絵(By みてみん)


「“時の牢獄”でな、ラーリニアが命を賭して我らを守ってくれた。そのおかげでワシとバストールは三百年の命を永らえたんじゃ」


なんだろう、俺なんかが太刀打ちできる世界なのか?


「そんな訳で、我ら生き残りは、レジェンドランクになった、という訳じゃ。虚しいだけじゃな。仇も取れず、メンバーも二人だけになってしもうた」


特に喜びや嬉しさも感じられない。

レジェンドだろうが、なんだろうが、割に合わないよな。


「あー、それからな、お主の指輪は、ユウノシンが身につけておったものと瓜二つじゃな。首が届いた日以降も、見つかることは無かった」


ユウノシン…

きっとこうなる事がわかっていたんだろ?

自分の終わりは、始まりなんだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ