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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man


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12/15

イストリア建国秘話 決起

挿絵(By みてみん)






■ ギルドの医務室


━━ 待ってくれ!


え?どうしたんだ。

猛烈に悲しい気持ちだ。なんだこれ。記憶がない。


「このパターン二回目でやんす!」

「え、なんで!?」


タクちん、タエちゃん、葉山、みんな心配そうだ。


「角が刺さってたよな?治ってるのかなぁ」

「和田殿、ほんとに大丈夫ですか?」

「和田にゃんさ、泣いてるよ?」


……そういえば、何か悲しい夢を見ていたような?

モヤモヤする。


「なんだろな、か弱いオッサンに無理させないでくれ」

「勝手に無茶したのは、和田っちでやんす!」


そうなんだっけ?

最近、なんか変だよな。


「身体がさ、勝手に動くっていうか。止められないんだよ。自分でもさ」


あの時、胸の奥が疼いてた。

痛みでも焦りでもない、なんとも言えない感情。

しいて言うなら──衝動。


「和田殿、回復魔法で傷は治ってますが、無理はしないでください」

「タエ様の言う通りでやんす!」

「和田にゃん、もう少し寝たらいいよー」


眠気が強すぎる。抗えない。


「悪い、寝るわ……」


まただ。無性に悲しい。

誰だ?俺に話しかける声か?

微かに聞こえた気がした──


━━ 再び眠りに落ちた。


■ 過去


暗い。月明かりだけ。

誰もいないのか。


起きるか。


「おっと、、危なかった」


ベッドから落ちるところだった。

ダメージはないが、フラフラだな。


えっと、大賢者さんの部屋は……こっちか?


あ、あそこか? 灯りが漏れてる。


━━ ガチャリ

━━ ビンゴ!


「なんだ、動いて大丈夫なのか?」

「なんとか、な」


ハルアット? 木の板を読んでいたのか。


「早くカミィが欲しいぞ。読むのも、保管も、持ち運びも、すべて面倒じゃ!」

「そうだろうな。でも製造には入れるから、あと少し辛抱してくれ」


「そう願いたいがの……」

「どうした?なんか言いたそうじゃないか?」


ため息なんかついてるな。

いつもと様子が違う。


「いずれわかる話じゃて、お主には話しておくかの」

「ん?なんの事なんだ?」

「この国のこと、それからワシな事じゃな」


── ハルアットは少し考えてから、語り始めた


イストリアという国は、本当に脆弱だった。


弱小ゆえに、他国からの干渉・侵略・謀略を何度も受けてきたこと。

その度にハルアット一行が危機を退けてきたこと。


経済的に特色のないイストリアを、

“冒険者が集う国”として発展させてきたこと。


領土を広げられない代わりに、

技術と魔法を発展させてきたが、それも限界であること。


「そう言うわけでな、お主らを呼んだのよ」

「なるほどな、なかなかキツイみたいだな」


表情が読めないな。


「一つ聞いていいか?」

「なんじゃ?」

「大賢者さんには家族とかいるのか?」


「そうじゃの、かつてはな。夫も息子もおったよ」


歯切れが悪いじゃないか。


「すまん、聞かないほうが良かったのかな」

「別に、かまわんさ」


「こう見えて、ワシの若いころは王侯貴族から求婚殺到じゃったんじゃぞ」

「大賢者さん、そういえば歳いくつなの?」


急に真顔になるんだな。


「三百二十六歳かの。歳だけは正確に覚えておるよ……」

「え、人間だよな?」

「もちろんじゃよ。ところで──」


え、大事なところは?

急に話を変えるのか?


「マッドライノの件、お主どう見る?」

「んー、奴らが勝手に攻めてきた、とも思えない。かと言って、後ろで糸引いてる奴がいるなら、半端過ぎる感じかな?」


「ふむ、お主アホウではないな」

「それは褒められてるのかな?貶されてるかな?」


ニヤニヤすんな。


「まあ、褒めておるよ。お主には期待しておる」

「ほんとかよ!?」


「多分これは、様子見じゃな。ワシを試しておる。真の狙いは、お主らじゃよ」

「どういう事だ?」


「ワシの動きは監視されておる。いくら内密に動いても、お主らの事は漏れておる、そう言う事じゃ」

「なるほど、どんな輩がやってきたか?ってか」


「まあ、向こうからすれば“ちゃんと監視してるぞ”という挨拶じゃな」

「で、話しておきたいって?もっと他にあるんだろう?」


何か迷っているのか?


── 意を決してハルアットが口を開いた


「うむ、ワシはな、お主に全てを託そうと思う」

「・・・」

「ただ、話すよりも、もっと手っ取り早い方法があっての。お主の指輪があるなら、ワシの記憶を共有できるのじゃ」


ん?大賢者さん?手を握れってことか?


「わ、わかった。握ればいいんだな?」

「うむ」


■ ハルアットの記憶


俺は空を飛んでる。

雲よりも高いところだ。

それが雲を抜け、荒野が見えてくる。

そして、二人の冒険者が見えた。


「この先に本当にあるのかい?」

「ああ、間違いない」


紫がかった艶のある髪を束ねた女性と、黒髪で筋骨逞しい彫の深い顔立ちの男。


「ハルアット、待て。何か来る」

「ユウノシン?」


慌てて物陰に身を隠す二人。

なるほど、この二人が大賢者さんと、旦那さんなのか?

ハルアットの若さ、美貌、ちょっと驚きだ。


挿絵(By みてみん)


── ヒャハハハハッ!

── 今日の獲物は最高だぜ!


いかにも、凶悪そうな荒くれ者が乗る馬の群れが走り去る。

数十人程度。革袋や、縛られた女性?などを連れていた。

やがて罵声が小さくなり、完全に闇に消え失せた。


「ハルアット、やはりこの先のようだな。いったん、仲間が合流したら出発しよう」

「本当に腹が立つね。ああいう輩は直ぐにでも蹴散らしたいもんだ」


── そして、場面が切り替わる


また俺は空へと舞い上がり、とある村へと飛び降りる。


「皆さん、もう我々は我慢しなくても良いのです!」


村の広場の真ん中で、一人男が叫んでいる。その周りには、村人であろうか、十数人が取り囲んでいる。みな血色も悪く、粗末な恰好の者が多い。


「トスル!お前の戯言は聞き飽きたんだ」

「そうだ、良くなることなんぞありゃしねぇ」

「そうよそうよ、あたいの旦那を返してよ!」


周囲から非難の声が殺到する。


「確かに、これまでは有効な手が打てなかった。でも、私は解決できる人物をようやく探し当てた」


トスルと呼ばれた男は振り返り、手招きをする。

トスルの横には、ハルアット、ユウノシン、それから、ドワーフ、ダークエルフが進み出た。


「こちらは、腕の立つ冒険者の方々だ。私の全財産を使って依頼をしたのだ。この名もなき荒野に平穏をもたらすために」


トスルはユウノシンに目配せをする。ユウノシンは一歩前に出た。


「私は銀の月のリーダー、ユウノシン・オオツキと申すもの。皆さんにお約束する、必ず荒くれ者どもを掃討すると」


朗々と響くユウノシンの声とは対象的に、周囲の人々は完全に白けている。


「今までなぁ、そういって何人が帰ってきたんだ?」

「どうせまた同じだよ・・・」


── また場面が飛んだ。


今度は岩陰に舞い降りた、そして冒険者を眺めている。


焚火が爆ぜ、辺りにゆらゆらと影を生み出す。

荒野の僅かな岩場の隙間で休む人影が四つ。


「ガハハハ、もうあと少しで奴らの巣窟か」

「バストール、あまりでかい声だすのはおよし」


ハルアットはうんざりしたように吐き捨てる。


「そうよ。あんたの声でバレちゃいますわ」

「ラーリニア、てめぇグタグダうるせぇぞ」


仲が悪そうというよりも、このメンバーでの冒険にすっかり慣れているのだろう、そう思った。


「無駄話はやめだ。いいか、夜明け前に夜襲をかける。あの岩山の麓だから、あと一刻も歩けば着けるはずだ」


ユウノシンがこれからの作戦を整理する、そんなところか?


「ガハハハハ、おうよ。俺が突っ込む。それで終わりだな」

「あんたは単細胞だねぇ。あたいがいなきゃ、ほんと何回あの世に行ってるかね」

「ラーリニアのヒールよか、酒のほうが効くわ!」


挿絵(By みてみん)


無駄口、罵り合いに見えるが、なんだか信頼しているようにも見える、そう思えた。


「いいかい、私がエクスプロージョンを打ち込むから、やつらが出てきたらバストールとユウノシンが突撃、ラーリニアはアクセルとディフェンスで援護たのむよ」


── そして視点が飛んだ


俺は飛び上がり、岩山の洞窟へと向かった。


怒号と火の爆ぜる音、逃げ惑う荒くれ者が、岩山の洞窟から走り出してくる。

そこにユウノシンとバストールが襲い掛かる。もちろん、ハルアットも魔法を打ち込み、ラーリニアも弓を引いた。


面白いように荒くれ者が倒れていく。完全に寝込みを襲われた形だ。捕虜となった女性は、外の檻のついた馬車に閉じ込められていることは確認済みだ。


荒くれ者どもの叫び声がしばらく響いていた。


── また場面が切り替わった。


俺は最初の村の広場へ戻っていた。


「あなた!」

「おお、良かった。本当に無事なんだな」


村は歓喜に包まれていた。

略奪された家財や女性が戻ってきたからだ。


「皆、これでこの名もなき荒野に平穏が訪れる!」


トスルはまた叫んだ!


── また場面が変わった


翌日であろうか?朝になっていた。宿屋なのか?どこかわからないが、テーブルに座っている。


「この名もなき荒野に私は国を作りたい。ユウノシン殿、どうかあなたが王となり、皆を率いてくれませんか?協力は惜しみません」

「トスル殿、私はそういうものには興味がありません。私にはあなたが適任だと思うのだが。もちろん、今後も協力は惜しみません」


ユウノシン・・・明らかに日本人だよな。名前も、黒髪も、日本人の特徴だ。何をしに来たのか?何か隠しているようにも見える。


── 場面が消えて行く。そして歓声が聞こえる


俺は人々の上にいた。眼下には多くの人が集まっている。


「余はトスル・ライノー・イストリアである、この名もなき荒野を平定し、国となすことをここに宣言する」


まだ、数百人程度しかいない村に毛の生えたような都市。だが、トスルはにこやかに笑っていた。


── そして情報が早送りのように流れ込む


なるほど、これから徐々に国としての体裁ができて行くんだな。

大賢者さんたちも、かなりのクエストをこなしているようだ。


「ハルアット、私の妻となってくれまいか?」

「ユウノシン、本気なのかい?」


見つめあう二人。おっと、このまま見てていいものなのか?


── 二人はぼんやりと消えていく


赤ん坊の泣き声が聞こえる。


「ユウノシン、元気のいい男のだわ」

「よくやった、ハルアット」


息子を抱いたハルアットを引き寄せるユウノシン。ハルアット、幸せそうじゃないか。


このことを伝えたかったのか?

いや、あの顔はそんなことじゃないよな・・・


影が少しずつ忍び寄ってくる。そんな気がしてならかった。


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