王都帰還が激し過ぎなんだが!?
◼️ 翌朝・温泉遺跡の外
「いいでやんすか?」
「頼むから、あの世にだけは送るなよ?」
こういう時ってさ、走馬灯っての?
見えるんだよな?
目を閉じて…いや、そんなもん見えんぞ。
実験もやったし、大丈夫…なのか?
━━ ここで、少し遡る
「和田っち、これ使うでやんす」
「ん?どういうこと?」
レッドボアを仕留めたけど、これのことか?
「まだ息があるでやんすね。だから…」
「タク殿、つまり、それでアポーツの実験をすると?」
なるほど。そういう事か。
「美味しく頂く前に、あと少し頑張ってもらうでやんす」
「ちょっと可哀想だな」
「痛みも何も無いでやんすよ…」
選択の余地はないな。
「わかった、こいつには悪いがやってみよう」
「じゃあ、ここから、あそこ葉山殿のところまで。三メートルってとこでやんす」
「はいはーい、僕ここだよー」
ほんと、悩みと無縁だよな。
「では、いくでやんす!」
微かに振動してるのか?
なんだろ、レッドボアの周り少し歪んで見える。
━━ シュッ
「わー、きたきた、どうかな?」
息は弱いな、だが、特段異常も無さそうだ。
手も足も、身体も、見た目問題ない。
「成功でやんす!?」
「よーし、実績が増えたな。飯食って本番と行きますか」
━━ というわけで、本番を迎えている
まあな、俺だって役に立たないとな。
「えーん、和田にゃんがどこか行ったら、僕、僕…」
「葉山…」
「僕…えー、んー、なんだっけ?」
おーい、ちょっといい所だったろ?
しんみり気分返せ!
「和田殿、無理せずともいのですよ?いったん大賢者殿に相談しても…」
「いや、結局そうやってると、これから先も大賢者さんや、他に頼る事になる。これは今やるべきだと俺は思う」
格好つけたい、そんな気持ちもあるのか?
いや、俺だけ置いてけぼり。
そんな風に思ってたからな。
俺だって、やってやるさ。
「OK!やってくれ。ギルドまで頼む」
「ふう、ならいくでやんすよ!」
落ち着け。
やっぱり、緊張してるのか!?
ん?…身体中が振動してるみたいだ。
陽炎?
周囲が揺らめいてる…
大丈夫…くっ、やっぱ心臓が高鳴る。
━━ シュッ
◼️ ギルド練習場
なんだろ、頭をガンガン振られたみたいだ。
目眩が…
「おぉぉぉぉ、なんだこりゃ!」
おいおい、拳のデカさに、心臓止まりそうだよ。
バストールのオッサンか。
「ガハハハ、お主何か、よほど殴られたいらしいの。ワシで無ければ、寸止めとはいかんぞ?」
「いやいや、殴られ趣味はないって」
ここは、練習場だな。
誰もいないと思ってたが。
「ちょうど鍛錬中でな。良かったな、剣だの槍だのでなくて」
「全くだ。今頃ほんとにあの世行ってただろうな」
「で? 何用じゃ? ま、ロンギスタンの部屋に行こうか」
このオッサンは、余計な事言わないから助かる。
━━ 今の状況、エサキスの運搬について話す和田
「なるほど、今まであの木を使うなど、無かったですので、このような事態になるとは…」
ロンギスタン、丁寧だが、ほんと怖いぞ。
目が合ったら、背筋に寒気がする。
「そこで、お願いがあって。向こうからアポーツでエサキスこっちに送りたいんだよな」
「なるほど。そういう事でしたか」
「動かせるってのは、確認済みなんだ」
危なくない所に送らないとな。
「ロンギスタン、いち早く手配するのじゃ!」
え?ハルアット??
なんでわかったんだ?全部見えてるのか?
「見つけたんじゃな?」
「ああ、多分ある程度の紙は作れる量だと思う。ロンギスタン、練習場に運ばせてくれ」
「うむ、ロンギスタン、こやつの言うとおりに」
「ハルアット様、承知致しました」
はあ、これでなんとかなったな。
「じゃあ、俺疲れたんで、少し寝かせてくれ」
「うむ、早うカミィを頼むぞ!」
てか、かなり自己中なんじゃ…?
ひとまず、腕時計とかスマホなんてないからな。
夕日が落ちる時、再度タクちんが呼んでくれる。
向こうのエサキスをこっち送ったら、最後に俺を向こうに取り寄せて…
俺、宅急便のお届け物だな。
いやー、しかしなぁ、気疲れってやつ?
ベッド案内してもらって良かった。
しかし、行ったり来たり、忙し過ぎだろう。
また戻るんだよな・・・
さすがに疲れたぞ・・・
━━ 和田は倒れこんだ
◼️ 再び温泉遺跡の外
「和田っち!」
「和田殿!」
「和田にゃん、起きないと、顔に落書きだよー」
ん?
ここはどこだ?…葉山?
「葉山、それなんだ?」
「もう、僕がすーごく、可愛くしようと思ったのにな」
いや、それ炭だろ?可愛くならないよな!?
「全部送ったでやんす!」
「あー、お疲れ様」
「和田殿、特に異常はないみたい。良かった」
なんだろな?
こいつらの顔見たら、落ち着いた。
「あの数、全部送るのはホントに鬼畜でやんす!」
「和田にゃん、ほんとにタクにゃんが死にそうだったよー。僕さ、ほんとウケるー」
いや、葉山サイコパスかな?
「和田殿、行ったり来たりで大変ですが、動けますか?」
「そうだな、エサキスも届けたし、帰ろうか」
タクちんと葉山がギャーギャー言ってる。
でもなんだろ、これはこれで落ち着くな。
━━ さあ、帰ろう!王都へ!
せっせと山を降り、麓の村まだ来た。
馬車が来るまで、まだしばらくあるようだ。
「和田殿、温泉遺跡って、なんだったのでしょう?」
「俺ら日本人って温泉、やっぱり楽しみだよな」
「僕も温泉大好きー」
「温泉嫌いって人は、あまりいないでやんす」
まあ、それが答えなんだろうな。
「つまり、日本人がその昔いたってことだよな。さらには燃料や発電があるって事は…」
「同じように、召喚されたって事でやんす?」
そう考えるほうが自然な気はするな。
「まあ、わからん事だらけだが、大賢者さんはが何か知ってるかもな?」
この遺跡、まだなんか隠されてる。
そんな気がしてならない。
◼️ 王都への帰還
━━ ビクッとして起きた。
いかんいかん、馬車でまたウトウトしてた!
「寝ちまったな、どの辺なんだ?」
「運転手さんに聞いたら、そろそろ着くって言ってたよー」
運転手さんって、タクシーかよ。
ふぁーと、アクビも出る。
━━ ドドドドドドッ
ん? なんの音なんだ?
「こら、じっとしないと、僕が怒られちゃう!」
「葉山、どうした?」
葉山のカバンの中、チューチュー言ってる。
「チュー吉がね、怖いって」
「葉山、それワーラットか?」
「うん、もう僕の相棒だよ❤️」
いつのまに連れてきてるんだ?
チュー吉って、安易過ぎんか?
「で、どうした?」
「魔物が来てるって、チュー吉言ってる」
「この音か?」
━━ ギィィィィッ
うわ、馬車が止まった。
もの凄い音だ!
「ひいぃ、もうおしまいだ…」
地面が震えて、砂塵がもうもうだ!?
御者が泣き喚いてる。
「なんだって!」
「和田っち、外にサイみたいのが、わんさかいるでやんす!」
なんだ? マッドライノってやつみたいだな。
とんでもなく、恐ろしい数じゃないか?
「和田殿、幸い馬車からは逸れてるみたいですが、これ王都に向かってるかと…」
「やばいな…」
こんな数だ、王都の門とか耐えられるのか?
まあ、王都の門だしな…
「えーい、やるしかないか!タクちん、俺と葉山を門の方にアポーツしてくれ!」
「えー、僕怖いよ」
「大丈夫だ。俺が守る。タエちゃんは、周りの人とタクちん守ってくれ!」
「心得た。和田殿もご武運を!」
「じゃ、いくでやんすよ!?」
マッドライノの怒涛の足音で、何も聞こえん!
葉山がまだ何か言ってるな。
そして、周りが振動する!
━━ シュッ!
瞬間的に門の前に出た!
しかし、クラクラするなぁ。
あぶね、先頭のマッドライノが、もうすぐ先まできてる。
ギリギリだったな。
「俺が葉山守るから、テイムで大人しくさせてくれ」
「わ、わかったよー」
魔法の射程範囲狭いのか?
ある程度まで来ないとダメか?
━━ ドスッ
くっ、角が刺さったぞ。
「葉山、頼むぞ…」
「僕だって、やってるよー」
━━ ドスッ
なんてこった、この数は流石に…
「ガハハ、小僧、またえらくど突かれておるな」
「バストール!」
バストールが数匹吹き飛ばした!?
「ガハハ、生ぬるいわ!」
さすがにレジェンドランク。
木っ端微塵って、この事なんだな。
━━ グハッ
「ヤベェ、どこ刺さったんだ?血が…」
胸の奥にどす黒い痛みと熱さが走る。呼吸ができない!
「わ、和田にゃん!」
「葉山、バストールに続け、どんどんテイムして帰ってもらえ…それから…」
「ようやった!ワシも加勢するでな」
ハルアットか!
土壁みたいなもんが、競り上がってきて…
てか、普通に帰還させてくれよ。激し過ぎなんだが…
王都帰還って、命懸けなんだっけ?
━━ そこで意識が飛んだ
◼️ 蠢く影
「マッドライノはどうなっておる?」
「は、まもなく王都到着かと」
満足そうに頷く気配がするが、薄暗い部屋ではよくわからなかった。
「それより、あの数ではすぐに制圧されるかと。他に手を入れますか?」
「いや、よい、今回は揺さぶりだ。ハルアットがまた小細工しておるらしいからな」
「なるほど、では様子だけ後から報告書させます」
「うむ、頼む。少し出かける」
━━ 男はふらっと立ち上がり、外へ出ていった。
しかし、暗い。窓という窓には木が打ち付けられ、すべての陽光が遮られている。
「ハルアットめ…何を企んでおるかしらんが、必ず潰してくれるわ」
忌々しげに男が吐き捨てる。
黒い不気味なオーラが、男に従う下僕のように付き従った。
「せいぜい、今を楽しめよ。ハルアット、今後貴様に盛大に踊ってもらわねばな」
━━ ハハハハッ、ハハハハハ・・・
漆黒の暗闇に、乾いた笑い声が吸い込まれて行った。




