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(新手のプレイでは)ないです

 心の中でタイミングを見計らい、突き刺していた剣を力ずくで抜き、飛ぶ。

 両手を揃え、背を伸ばしている様は水泳選手かのような出で立ちであった。水ではなく、風を切って進む、かこよく言えばそうなるのだが端から見れば白銀の鎧に包まれた男が空中でバタバタしているだけ、となんとも滑稽な姿だった。

 上空から見渡すとこのデカブツしかいないらしく、誰にも見られなかったことだけが唯一の救いだな。


 標高何千メールなんだろうか? そう、疑問を抱くぐらいには慣れてしまいやっぱ、人間って慣れる生物だなぁと思いながら姿勢を正しくし、読んで字のごとく、手を体につけ完全的なエビフライ状態になってドールを追いかける。空中でバタフライをする光景は水中を華麗に泳ぐ錦鯉のようだった。池の鯉しか見たことないけどな。

 空中に投げ出されて降下しているドールの表情はなんというか全てを悟った的な、何もかもを諦めた表情が見てとれるまでに恐怖を感じている様子だった。そんなドールの腕を逆手に持った剣を持っていない方、左手でしっかりと握る。その間にも地面は近付いていき、もう無理だ! と、ドールを庇うように背を向けて衝撃に耐える。どっちにしろ、この高さだと覚醒した俺でもムリポ。覚醒覚醒。どうせ言うとドールが「イぃ~覚醒ですね、分かります」とか言いそうだから絶対に口には出さねぇ。つか、普通にまわりクド過ぎて「確かにイカ臭いですね」と、普通に答える可能性も無きにしもあらず……まぁ、多分無いな。


 次のコマで血肉になった自分を想像するが――どんなに待っても衝撃が来なかった。恐る恐る閉じていた瞼を開けると俺の背中から生えてきたなんとも気味が悪い羽によって受け止められていたのだ。新事実、俺は鳥類だった!? 何てこともなく、俺の全身からあふれでる聖なるオーラに影響されて出てきたんだろう、いやしんぼめ。と、勝手に納得してドールを下ろす。つか、冷静になって考えてみればこいつ神じゃん。助ける必要なかったんじゃね? 何かゲスイものを考えてしまったが気のせいだ。か弱い女の子を助けるのは男の役目だよね?(裏声)


 何事もなかったかのように「ん、ありがと」と言うドールに殺意を覚えながら自分も体勢を戻し、剣先を魔王に向ける。この対格差だと人間対カナブンぐらいの差があるぞこれ。

 冷静沈着なキャラは日頃の行いのせいで時空の彼方に吹っ飛んでいってるぞ、と心の中で呟きながら疑問を口に出す。


「おい、あれって本当に魔王であっているのか? どちらかと言うと破壊の化身って言われた方がまだ理解出来るぞ」


 まぁ、理解しようがしまいがどちらにせよ殴ることには変わらないんだけどね。

 俺の質問に待ってました! と、言わんばかりに目を輝かせながら意気揚々と話始めた。どんだけ聞いてほしかったんだよ……そこまでなら自分から言えばいいのにな。そんなキャラじゃあるまいし。


「実はですね、あれって私の前任の神様なんです」

「戦いおっ始める前にとんだ爆弾落とすなぁ……」


 そんな俺の言葉を華麗にスルーしながら続ける。受け流すにしてももっと柔らかくしてくれよ……赤ちゃん肌並の純粋さだから。ダイヤモンドは砕けないと言ったな? あれは嘘だ。


「んまぁ、諸事情により色々と堕ちてしまったんですけど最後に残した彼女の善の心、それを凝縮したのが唯一の対抗手段である聖剣って訳なんです」

「自分のモノでしかダメージを負えないとか条件が特殊すぎるだろ……見方によってはMになるな、これ」


 気付かぬ間の魔王(前任の神)への風評被害。女かどうか謎だがこんな見た目だと魅力もクソも感じ取れないので女としては終わったな、そう悲しみの念に浸かりながら手に持った心の片割れを見る。心なしか照れているように見えなくも……ないね。


「お前含めて色々と大丈夫なのかよこの世界……」

「フェル様の異常さに比べてみれば屁でもないですよ」


 一個人の心の中と世界を比べるんじゃねぇ! と、長そうと思ったがこちらを見つめる眼差しが少し、いつもと違って見えた。そんなことを考えながら続きを待つ。片手間に聖剣を使って魔王の攻撃を往なす。だから、自分に往なされてどうするんだって……これって新手のSMプレイなのか?

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