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魔法と闇と絶望と  作者: 凛莉
最終章~騎士と王~
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第55話 心の準備



チュンチュンという鳥の声が聞こえる。


起き上がると、その声もハッキリと聞こえた。

ただ、その声は窓の外からではなく、近くから聞こえる。

家には鳥は飼っていない筈なんだけどな、と思いながら、尚も鳴き続けている鳥の声の元を

探す。


どうやら近くにいるようだ。

キョロキョロと近くを見るが、音が出そうな物は何もない。

するとその音はピタリと止まった。

その後すぐに、ピピッとあの音がする。


〈おはよう御座います。マスター。 朝の目覚めには丁度良いでしょう?〉

「おはよ、レヴィン。レヴィンだったんだ、あの鳥」


〈私の最大限の力でお送りしました!〉

「凄くリアルで本当に鳥が居るのかと思った。 凄く高音質だったよ」


通りで目が覚めた時、音が篭っていと思った訳だ。

「もうスピリーツ起きてるかな」

〈いえ、私が少し早めに起こしたので、スピリーツさんも今起きたくらいでしょう〉

レヴィンに言われ、時計を見ると確かに何時もよりも少し早い。


ベッドから降り、寝巻きから側で整えられている普段着に着替える。

今の季節は秋。 外の木々達も、その葉っぱを散らしている。

昨日は暖かかったが、今日は寒い。そろそろ冬かな?


今日は半袖の服の上に、昨日買った厚めのパーカーを被る。

ズボンも伸び縮みがする長ズボン。

更にローブも羽織るので、オシャレもへったくれも無い。

それは元からなんだけどね、スピリーツは違う服を着たりするし、

女の子はやっぱりオシャレ。僕にはどうやったらオシャレになるのかなんて分からない。


それに髪と目の色がアレだしね。


着替えも終わり、寝室から出て、リビングへ向かう。

リビングに着くと、スピリーツも階段から降りてきているところだった。


「あ、マスターおひゃよぉ~」

ふあぁ、と欠伸をしながら降りてきた。


「おはようスピリーツ」


近くのソファーに座り、テレビを付ける。

特に意味は無いのだけれど、念のため。


テレビにはニュース番組が映っていた。・・まぁ朝だし全部ニュース系だよね。


「すぐに朝食を作るわねー」

スピリーツはソファー前のテーブルに2人分のコーヒーを置く。

置いてからスピリーツは「あ」と小さく声を漏らした。


「マスターのコーヒーブラックにしちゃった。取り替える?」

「ううん、大丈夫だよ」

まだ熱いコーヒーを手に取る、苦そうだがとても香ばしい匂いがしていて美味しそうだ。

僕は特に何でも飲める。甘くてもいいし、ブラックでもいける。

どれも違っていて、それぞれの良さがあって美味しいから。


美味しければ基本何でも食べる。

破壊力のあるモノは・・・・分からないな。




しばらくニュース番組を眺めながら待っていると、台所からチン、と高い音が鳴った。

それから少しすると、いい匂いが漂ってくる。

そのいい香りと共にスピリーツがお皿を器用に片手で2枚ずつ、4枚持ってやって来た。

「大丈夫?」


危なげなくスピリーツは4枚の皿をテーブルへ置く。

2枚はバタートースト。もう2枚はウィンナーと目玉焼きに、気分程度にレタス。

とても美味しそうだ。


「じゃ、いただきましょう」

「いただきまーす」


僕はトーストから食べ始めた。






「ごちそうさま、美味しかったよ」

最後にコーヒーも飲み干して、スピリーツに礼を言う。

僕が毎日食事を摂っていたとしても、カップラーメンとかそんな簡素なものなんだろうな・・。

本当スピリーツに感謝だ。



「いいのよ。私も料理を作るのは好きなの。・・・さて。もう一度調べてみましょうか」

〈前回は、クラクサスのオリジナル・・ですかね・・クラリスさんの所まで、ですかね〉

多分・・その辺だったと思う。


「そうね。・・私の推測では、クラクサスはクラリスのメモリーチップを使用しているわ。

ならば、あの子はクラリスの事を半身と思っているでしょう。だから、その半身であるクラリスを

直接的にではないけれど・・殺したゼリスクに怨みを持っているのでしょう」


「怨み・・・ねぇ。大体あってると思うよ?」


〈ですが・・怨みがあるのに、3ヶ月は何も無かったんですよね?〉

「そうねぇ・・・それは何かあったんじゃないかしら?

──クラリスを蘇らせるつもりが、暴走・・とかね」

ニコリと笑うその笑顔は、曇りも何も無いはずなのに、寒気がした。


「・・っ。 ゼリスクに怨みを持っていて、レクイレーチェに居るんだよね?

ユズキ達に連絡入れないと」

スピリーツは忘れてた、という顔をして、


「予言が書いてあったところもう一度見てみましょう。変わっているかもしれないわ」

スピリーツの言葉に、それもそうかと思い、本を取り出す。

確かにレクイレーチェへ行ったら居ない、なんて事は出来るだけ避けたいしね。


表紙を開くと、あの予言に少しだけ付け足されていた。


〈何々・・・その地に見合わぬ、未知なる力、掻・・あれ?ここまでですね〉

レヴィンが読み上げてくれた物は、僕には読めなかったので、とても助かった。

うーん・・上の予言と同じ文字のはずなんだけどなぁ・・・


「その地に見合わない未知なる力って?」

「多分・・・魔力、魔法の類ね」


魔法が使えない?


「それ、本当?」

魔法が使えなくなる・・・どうにかそれを上回るモノを使って出来ないかな?


「無理ね。残念だけれど、それは私にも、神にも不可能よ。

元々、この世界に魔法は無い筈だったんだから」

「魔法が無かった?でも何でリーディは使えたの?」


スピリーツが少し言葉に詰まる。



「あの世界に無理矢理魔法を押し付けたのは私。魔法も魔力も無い世界に、概念を無視して無理矢理入れたらどうなると思う?

必ず、悲しい結末になるのよ。

未熟だった私が楽だから、便利だからと勝手に魔力を、魔法をあの世界の人に教えたの。


─そのせいで、反乱が起きて、国・・・世界が滅んだわ。

本当は私がそこに居なければいけない筈なのに、私はまた旅に出ていたの。

まさかあんな惨事になるなんてっ・・・!思わなかったんだもの!!


──私のせいで、リーディがこんなに・・酷い、目にっ・・!!」


スピリーツは顔色が悪くなっていき、両腕で自らの身体を抱きしめるようにしている。

よく見れば小さく震えている。目元には薄っすらと涙が出ている。


「スピリーツ・・・」

名前を呼んで上げる以上、出来なかった。


・・そういえば、僕の身体に封印されていた魔法・・・まぁ解いたんだけど・・・の名前も、

『永遠の孤独』って名前だったっけ。アレも何かあったんだろうなぁ。


でもスピリーツだけが原因とは思えない。

魔力も魔法も、使う人次第だ。

楽、便利という理由は、決して悪用しようとは思ってない筈だ。

人の心までは動かせないけれど、反乱が起きたのはスピリーツのせいではない。


・・・元々の原因はスピリーツである事は変えられないけれど。



「全部の責任をスピリーツが背負わなくてもいいんだよ?」

〈そうですよ。そんなに重く背負わなくても、いいんですよ〉

僕とレヴィンが励まそうとするが、スピリーツは俯いたまま。


「・・・それでも、私に責任、原因はあるんでしょう?」


俯いたまま、そう返した。


「〈・・・・〉」

これにはもう黙るしか無かった。


ソファーからそっと立ち上がり、リビングから出ようとすると、小さくレヴィンに

〈一人にさせて上げたほうが良いですね・・。スピリーツさんは強いお方です。大丈夫ですよ、きっと〉

「そうだね」


そのままそっと部屋から出た。






スピリーツは強い。

何千年も旅をしてきたスピリーツが、ここまで思い悩むなんて、よっぽどリーディと、あの世界に想っていたのだろう。

きっとすぐ、立ち直ってくれる。






何となく寝室へと入り、窓から外を眺めるが、隣の家の壁があり、景色なんてこれっぽっちも見えない。







「あ、そうだ。今のうちにユズキに連絡を入れよう。 レヴィン、通話をお願い」

〈通話ですね? かしこまりました〉


レヴィンを口元に近づける。といっても、腕時計を見ているようなポーズだけど。


トゥルルルル、と電話の音が聞こえる。呼び出し中だ。

カチャリと音が出ると、すぐにユズキの声が聞こえた。


『あ、もしもし?雪矢君? 何か分かったの?』

「そうだよ。 多分ここに居るだろう、というのも分かった」


ユズキの声が、電話レヴィン越しからでも分かるほど明るくなった。

『本当!? 今日ちょうど皆休みだから、ちょうどよかったぁ~!あ、じゃ、じゃあ、皆に連絡して、

お昼も食べてくるから・・・うーん、1時頃には行くよ!』


「分かった。待ってるよ」


『はーい!』

『ユズキー、最後の一仕事、残ってるわよー』

『そんなぁっ!?』


遠くからマーレの声が聞こえている。

ユズキはおろおろと焦りながら、

『ゆっ、雪矢君ごめんね!じゃあ1時頃には行くから!』

そう早口で言い残すと、通話がプツンと切れた。


〈通話が終了しました。 現在は11時30分、後1時間と30分ほどですね〉

「もう11時か・・・早いなぁ」


また壁しか見えない窓を眺める。





ぼーっとしていると時間があっという間に過ぎる。

〈マスター、12時30分に、なりましたよ〉


レヴィンがピーッピーッとタイマーのような音を鳴らす。

うるさ過ぎず、音も耳に心地よい音だった。


「あぁ、ありがとう、レヴィン。そのままユズキ達が来るまでぼーっとしてる所だった」

〈・・・実は12時の時にもお教えしたのですが〉


えっ・・それは気が付かなかった。


〈気付いていただけただけ良しとしましょうか〉

「うん・・」

そういう事にしておこう。


そろそろスピリーツも立ち直ったかな・・・・?

寝室から出て、リビングへと向かう。


「スピリー・・・あれ? 居ない・・・」


リビングに行くと、スピリーツは見当たらなかった。

〈テーブルに書置きがありますよ!〉

「本当?」


テーブルの上を除くと、綺麗に折られた一つの紙。

表には綺麗な文字で「マスターへ」と書かれている。

その手紙を拾い、広げていくと、それには一行、


『少し、2階で一人にして下さい』


どうやらスピリーツは2階に居るようだ。

〈では、スピリーツさん抜きで相談ですかね・・・私はあまり情報が多くも、速くも、ないので心配です〉

「大丈夫、レヴィンは十分凄いからね」


〈・・・・ありがとう、ございます〉

少し嬉しそうだ。



「スピリーツも悩むんだね」

〈悩むでしょう。 魔導書とは言え、れっきとした感情が有る人間なんですから〉


そっか、人間。か・・・


「レヴィンはどうかな?」

〈どうでしょう? 私は、人型では無いので、お世辞にも人間とは言えませんね〉


むむ、否定された。

でも人型であればいいのかな・・?


「レヴィン、人型になってみる?」

〈いえ、私はこのままで十分です。 人になる理由も、特に有りませんし〉


即刻拒否されちゃった。

まぁ、レヴィンが嫌ならいっか。


そうだ、お茶の用意をしておこう。

そう思ってキッチンへ向かう。


戸棚へ向かい、ティーパックが無いか探す。

紅茶無いかな? あれぇ?見当たらないなぁ・・・あっ、これは・・・・お茶葉だ・・・・。

・・・もう緑茶でもいいよね?


お湯は・・無いや、沸かそう。

水を入れて、ポチッと ・・うん、出来てる。

家電って説明書を読まなくても何となく分かるよね?


カップを取りに、食器棚へ向かう。

最低限の食器しか入っていないので、折角の大きな戸棚が勿体無く感じられる。 だからといって食器を買うわけでもないけど。


えっと、カップ・・じゃなくて湯飲み湯飲み。

湯飲みを取る時に、他の食器が引っかかって、食器棚から落ちる。

うわっ!危ない!! 

「やぁっ!!」


地面に落ちるスレスレのところでキャッチ!セーフッ!!

・・・はぁ、ビックリしたぁ。


〈ギリギリセーフですね、マスター〉

レヴィンがクスクスと笑うように短い間隔でピピッと機械音を鳴らしている。


「笑い事じゃないよ!食器は少ないんだから!それに掃除だって面倒くさいんだよ?!」

〈あら、マスターなのでてっきり魔法で解決するのかと〉

「便利だけど依存しちゃいそうだから・・・」


〈そうなんですか、私も少し、控えるようにしますね。まぁ、依存し切ってしまうよりは、いいでしょう〉

「有難う」


ピーッピーッとポットから音がする。 どうやらお湯が沸いたようだ。

保温ボタンを押して・・・これでいいかな?


〈マスター。お茶だけではアレですし、お茶請けなども用意なさっては?〉

「あっ、そういえば忘れてた」

確かにお茶だけじゃ味気ない。

食器棚に戻り、お盆のような形のお皿をテーブルに置く。

この上にお煎餅とか個袋ごと置いていけばそれっぽくなるよね?

忘れないうちに湯飲みやお茶葉。ポットも移動しよう。


先に湯飲みとお茶葉を置いて、ポットを持つ。

熱くは無いが、結構あるモノなんだね。

よっ・・と


無事にポットも置いて、準備万端だ。

〈マスター、お手拭〉

と思ったらレヴィンに突っ込まれる。本当レヴィン様様だよ。

もしかして僕、レヴィンが居ないと何も出来ないんじゃ・・・

・・・何も出来ないな、絶対。



本当僕ってダメな人間だなぁと自分でも半分呆れながら、お手拭を用意する。

んー・・僕とユズキ、マーレ。アールにソーミィ、星武・・・スピリーツの6人か。

3つくらいあればいいかなぁ・・流石に6つも無いし


ぎゅーっとある程度絞って、テーブルの上に置く。

直接ってのも何か汚いしお手拭を置く板みたいなものを下に置いてっと。

うん。今度こそ大丈夫。


〈これで大丈夫でしょう。後10分位ですね〉

「後10分か、何しよう?」

〈力不足ではありますが、少しレクイレーチェやクラクサスの事について、調べてみましょう〉

「それがいいね」

レヴィンの提案に乗る。今はスピリーツが居ないからね。










~ユズキSide~



「ユズキ、何してたの?」

マーレちゃんに机へと引っ張られている。

あうう・・・


「えぇっと、雪矢君が何か分かったから、来てほしいって・・・1時頃に約束したの」

「そういう事は早めに言いなさいよ!!」


「だってマーレちゃんが仕事だって言って聞かないんだもん!!」

「う・・それは悪かったわね。でもコレを忘れていたユズキも悪いわよ?」

マーレちゃんは自分が悪かった時は素直に謝るけど、しっかり正論も突きつけてくるんだもんなぁ・・。


「まさかこんな紙切れ1枚、机の下にあるだなんて思わなかったんだもんんん!!」

「分かった、分かったから。星武達には私から言っておくから、貴方はそれやってなさいよ?」

うえぇ・・マーレちゃんが行っちゃった・・・。


「もう11時30分・・・1枚だけなら何とか、って何コレ!!?何でこんなに複雑なのぉ!?」

んー・・・


んん?


うえぇっ・・・



ううう・・・分からないよぉ・・マーレちゃん早く帰ってきてぇ・・・・・。

私は半泣きになりながら、マーレちゃんの帰りを待つのだった・・・。


最近、話がだんだんと長くなっていっている気がします。

文字量が増えている割に、進んでいません・・・・。

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