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魔法と闇と絶望と  作者: 凛莉
第三章 ~騎士と本~
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第45話 運命-再開







「・・・う、ゲホッ!!」


目が覚めると、水の中では無く、地面の上に寝ていた。

今は夜のようで辺りは暗く、ちょうど真上には三日月が輝いていた。



「ゲホ・・」

水の中に入っちゃったから水飲み込んじゃったかな・・・

うえぇ・・



あれ?



何で僕はここに居るんだろう?

川に落ちた筈なんだけど・・・・・

それに、毛布が掛かってる。


此処は崖の上・・だよね?

レヴィンは・・再起動中だし・・・

再起動に丸1日掛かるのをどうにかしたいなぁ・・今度のメンテナンスでちょっと弄ってみようかな?




僕は起き上がり、辺りを見回す。


「・・起きた?」


誰か居る!


この位置からちょうど見えない所から人が来た。

・・もしかしてこの人が助けてくれたのかな?



「警戒すると思って。 ここじゃ暗いからこっちに・・」

その人はくるりと元来た場所へと戻っていく。


暗くて顔はよく見えないけど・・・声は女の人だね。

まぁ危なければ殺ればいっか。



僕は起き上がるが、いつもより体の動きが鈍い。

ずっと寝てたからかな?


僕はさっきの人が入っていった場所に向かう。


そこは火が点いていて明るかった。

焚き火かぁ・・

何かキャンプでもしてる見たい。



「その辺、座って」

さっきの人に言われ、その人の焚き火を挟んだ向かい側に座る。


その人は暗くて見えなかったけど、かなりの美人だ。

長い金の髪、火で少し赤い、澄んだ青の目。橙色の質素なワンピース。

昼とかに見たらもっと綺麗なんだろうな。


・・あれ。この組み合わせ、エアリのお店にあった人形と同じ・・・



「あっ!」

すっかり忘れてた!!


ま、魔導書! どこに行った?


「魔導書なら心配しないで」


何で魔導書の事を・・・?

怪しい・・


僕はいつでも戦えるように身構える。


「・・無理しないで」


う・・

確かに僕は少し無理をしている。

風邪でも引いたかな?


僕は大人しく座っている事にした。


「あなたは?」

「・・・・」


無反応・・・


「私は、スピリーツ。 神の魔導書」

「え?あの魔導書?」


「そうよ。 少し油断したら本体から魂を離されちゃって」

そうなんだ・・・

神の魔導書か・・神って位だから、やっぱり人化も出来るよね。


「それで、そっちは? 私が名前教えたんだから、教えてくれるでしょう?」


あ、それもそっか。

「僕の名前は望月雪矢。 それで、スピリーツはどうするの?」

「んー、アナタに着いて行こうかしら。アイツにお返しもしたいしね」

うわ・・ドス黒いオーラが・・・


「それじゃ、宜しくね。マスター」

「僕がマスター?!」


スピリーツはウィンクして言った。

「そ、頑張りましょ」


まぁ、いっか。


「そういえば、魂って言ってたけど・・魂って?」


「あ、それね。魔導書は魔力がある事が前提。そしてその魔力を創るのが、魔導書の魂よ。


魂は魔導書それぞれ、全部違うわ。形は無い、光の珠よ。その光の大きさ、色が違うの。

まぁ普通の魔導書は魂と言っても、機械ね。感情が無いから。


私はその魂を離され、何か・・魔法で造られた猫、かしら?それに移されちゃって」



「おまけに記憶まで封じられてた見たいだから、動けなかったのよねぇ」とため息を吐く。


「大変だったんだね」

「えぇ。何とかマスターのお陰で元に戻れたわ。 私の魔力はタダでさえ尋常じゃない量なのに、

活動再開までの魔力はそれの1.5倍よ。多分並の魔導士3,4万人分位あるんじゃないかしら?」


こんな一気に魔力を使うことってあんまり無いからなぁ・・・

「うわぁ・・・通りで疲れた訳だ」

「さすが底無し魔力のマスターね」



「別に好きで底無しになったわけじゃないよ・・・」



ふぅ、と息を吐くと、同時に僕、雪矢の意識も抜けていった。











「スピリーツ・・!」

長い翼を折り畳み、焚き火を飛び越えてスピリーツの元へと駆け寄る。


「!」


リーディはボロボロと大粒の涙を流した。

「生きてて・・・良かったっ・・・」

「・・・リーディ」


スピリーツも涙を流している。


「良かった・・・!」

リーディはボロボロと溢れる涙を拭い、蹲る。


スピリーツはそんなリーディの背中を摩る。


「リーディ・・・ごめん」

「スピリーツが・・・生きていてくれただけで・・いい・・っ」



「そんな。・・・・私、人間じゃないのよ?」

リーディは顔を上げた。


「人間だろうが、そうじゃなかろうが、スピリーツはスピリーツだよ。

本当にっ、生きてて・・良かった・・・」


リーディはふらりと倒れ、翼は消えたが、目覚める事は無かった。

しかしリーディ・・雪矢はすやすやと寝息を立てていた。



「・・・少し、魔力を使いすぎたわね。もう少し、休んで。

リーディ、ありがと」




そう言うと、焚き火の火は消え、スピリーツの姿は薄くなっていき、魔導書へと変わった。




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