子供部屋おじさん、副業おじさんの愚痴を聞かされる
12時になったので、休憩しようと考えた。
周囲に敵がいないことを確認し、壁に背を預け座る。
水分補給とコンビニで買ったパンで軽食をとると、通路の奥から1人の探索者が歩いてくる。
安価な防具と安価な武器を持った、鈴木と同い年ぐらいの男であった。
顔が丸っこく、お腹が少し出ている。
絵にかいたような、中年男といった雰囲気である。
「お疲れ様です」
「え、ああ、お疲れ様です」
声をかけられたので、少し驚いて鈴木は座ったままあいさつを返す。
探索者同士がすれ違った時、あいさつをすることはあまりない。
なんなら、すれ違わないように、わざわざ進路を変える者もいるくらいだ。
トラブル防止のためか、探索者同士はあまり干渉し合わない、というのが暗黙の了解としてある。
だが、結局のところ、それは探索者それぞれのさじ加減だ。
「失礼。年が近いだろう人を見かけると、つい、話かけてしまうんですよねぇ」
「そ、そうですか」
失礼なので口には出さないが、ちょっとショックであった。
実を言うと、まだ40代ということを、受け入れきれていないところが、鈴木にはあった。
まだ40ジャスト。
実質30代(?)というマインドが、まだまだ残っていた。
しかし残念ながら、外見は順調に年をとっているようだ。
雰囲気で、40代が早くも滲み出ているのだろう。
話しかけてきた男は、隣に座ってきた。
「ご時世もあって、もっと稼がないと嫁子供共々、食っていけなくなりそうでして。渋々、休日にこういうことを始めたんですよ」
「そうですか」
「全く、嫁はもっと稼げ稼げとうるさくて。お前も働いて稼ぎにいけと言ったら、家のことも子供のこともなんも知らない、鈍いお前には言われたくないと、怒鳴られまして。それで昨日は大ゲンカですよ~」
(うわぁ。なんか始まった……)
自分語りし始めてから雲行きが怪しいと思ったが、案の定、家の愚痴をクドクドと吐き出し始めた。
しかもSNSとかでたまに見かけるような、典型的な内容の夫婦喧嘩である。
夫婦の形なんて人それぞれなので、聞かされた方は「お、そうだな」としか言いようがない。
そんな話が5分ほど続いた。
気がすんだのか、男は立ち上がった。
「それじゃあ、お互い頑張りましょう。いや、勝手にしゃべってすいませんね。失礼します」
男はその場を去った。
正直、鈴木はホッとする。
「やれやれ……」
大きなため息が、思わず出た。




