子供部屋おじさん、若い勢いにやりづらさを感じる
第三階層の巡回が始まる。
ゴブリンと遭遇すると、例の若者2人が真っ先に前へ出た。
「俺達が先陣を切りますよ!」
「ゴブリンなんて楽勝だぜ」
この場にいる誰よりも張り切っていて、ゴブリンを率先して倒していく。
声もものすごく大きい。
目はギラギラとしていた。
実際、実力自体はそこそこある。ゴブリンとのレベル差はあるようで、鈴木と海野の出番はほとんどない。
若者の2人の武器は斧と剣であった。
2人とも前衛タイプで、とにかく突っ込んで、全力で攻撃するファイトスタイルだ。
一旦距離をとる、などの防衛行動はほとんどとらない。
攻めあるのみ。
こんな絵にかいたような若手は、逆に珍しいだろう。
むしろ鈴木は、昨今の若者は効率を重視する合理的なイメージがある。
しかしこの2人は、ものすごい脳筋だ。
ステータス保持者は、力がつき始めた時に、己の強い力に酔ってしまう現象があるという。
科学的根拠はなにもなく、単なるそういう噂話なのだが、彼らを見ているとその説が本当の話のように思われてしまうだろう。
「やる気満々の2人ですねぇ。落ち着いた雰囲気の海野さんと鈴木さんとは、対照的ですね」
移動中。佐藤がそんなことを、鈴木に言った。
どことなく呑気な声音。
鈴木としては、とてもヒヤヒヤする事態だ。
ダンジョンは命のかかっている戦場だ。
データ化や配信、整備などによって安全性は高まっているが、死ぬ可能性が常にあるのは変わりない。
それをこんな不安定なメンバーで迎えることが、怖くてしょうがなかった。
「ええ……ロマンを求める探索者らしいといえば、らしいですが……」
「ははは、わかりますよ。扱いづらいですよね。現に戦闘も、あの子達2人が仕切っているような状態ですし」
しかも仕切るというよりは、奪っていくという感じだ。
とても周りや全体を見られるような器ではない。
パッションは良いことだが、無鉄砲と紙一重である。
「あんまり、社会へ出たことがある雰囲気ではなさそうですねぇ」
佐藤の言葉に、鈴木はちょっと同意した。
もちろん勝手な推測だし偏見だが、社会を経験したことのない者特有の、モラルの低さが滲み出ているのだ。
挫折や苦労を超えてきた気配はない。
厳しい部活なども経験していないのではないだろうか。
(だとするなら、一度社会へ出た方がいいのでは……いや、引きこもっていた俺が言うのは、ちょっとアレだが)
このメンバーでトラブルが起きないように、と祈り続けた。
☆
「ふう。やっと終わりましたね」
「佐藤さん、これで全部です」
作業員の方の若手は、普通の雰囲気である。
指示体系もよく出来ていて、佐藤を中心とした現場だ。
報告を受けた佐藤は工具をアイテムボックスへしまいつつ、よし、と声を上げる。
「今日は定時でいけそうだな。帰るぞ~」
と、佐藤は鈴木達へ軽く頭を下げる。
「では、探索者チームのみなさん、帰りもよろしくお願いします」
若手2人がこくりと頷く。
「任せてください! 俺とこいつで一番前歩くので、海野さんは後からついてきてください」
「……はい」
海野は言われるがまま、若手2人の後をついていく。
遠まわしに手を出すな、と言っているようにも聞こえる。
悪気がなさそうなのが、かえって救えない。
念のため、最後尾には鈴木がいる形だ。
海野がいるので大丈夫だとは思うが、鈴木としては前が心配である。
ゴブリンと遭遇すると、斧と剣持ちの若手2人が奮闘。
打ち漏らしたモンスターを、海野が処理した。
鈴木は後ろで、作業員の護衛だ。
「いやあ、若い子達が張り切ってますねぇ。ははは、なんだか昔を思い出してしまいますよ。成長するぞ! みたいな感じですかねぇ」
佐藤はニコニコだが、鈴木は内心でヒヤヒヤである。
「え、ええ……」
しかしそんな不安とは裏腹に、なんとか3日目はトラブルなく終わった。
誰もケガはなく、残すところは第四階層と第五階層だ。




