子供部屋おじさん、5年ぶりの収入
スライムは群れで行動せず、単独行動だ。
それも狩りやすい要素であった。
とってくる行動としては、1対1による単調な体当たりのみ。
1撃で倒せないので体力の消耗はあるものの、危機的な状況に陥ることはなかった。
気がつくと時刻は17時すぎ。
12時から狩りを始めたので、5時間ほどずっと戦っていた。
(そろそろ帰るか……)
母親が19時にはごはんの準備を終えるので、もう帰ろうと考えた。
「そういえば、魔法を使ってなかった」
ダメージを負っていないので回復魔法は仕方ないが、肝心の攻撃魔法を使っていない。
はあ、とため息をついた。
「全く、しっかりしないとな……」
なんにせよ、試すのは次回だ。
魔石は軽めとはいえ、リュックサックも中々に重い。
地図を見ながら、鈴木は出口まで進んだ。
途中、他の探索者が淡々とスライムを倒しているのを見かけた。
同じように初心者だろう。
人の狩りを見るのは、マナーが悪いかもしれないが、見学する。
5回ほど剣を振るって、ようやくスライムを撃破していた。
(実感は湧かないが、俺が高ステータス持ちなのは本当なんだな)
鈴木はたった2回の攻撃でスライムを撃破している。
購入したやや高品質の棍棒によるサポートもあるだろうが、やはりステータスの高さが影響しているのだろうと考えた。
(さて……お待ちかねの会計だ。楽しみだ)
☆
「――合計、8100円となります」
魔石は1個100円で、採取した魔石は合計81個。
ここから、本来ならば手数料が10%引かれるのだが、探索を始めて最初の3日間はそれが免除されるらしい。
なので、この8100円はそのまま鈴木の口座へ振り込まれる。
(久々の感覚だ)
働いて、金を稼ぐ。
ほとんどの者が一度は辞めたいと思う、社会において過酷なその行為は、しかし大きな充足感をもたらしてくれる。
社会の一員慣れたような。
体の疲れすらも心地良い。
そして査定をしていた若い女性の受付が、明細を渡したあとに褒めてくれた。
「初日からこのペースは、早いですね。探索者は本業になさるご予定で? それとも、副業でしょうか」
鈴木の年齢的に、副業は十分にありえる線だ。
そして実際、副業として探索者を始める者は珍しくない。
「いえ、本業にしようと思っています」
「そうなんですね。今後ともよろしくお願いいたします」
(もしかして、変な人に思われていないだろうか……まあ、そうだとしても、仕方ないことだが……)
40歳で探索者へ転職は、かなり思い切ったキャリアだろう。
だが、実際のところは転職ですらないから、おかしくもなんともない。
鈴木は無職から、社会復帰のために探索者を始めたのだ。
(40歳はもっと、落ち着いてないといけないからなぁ……)
久々の労働と初探索は楽しかったが、まだまだ社会復帰したとはいえない状況。
ましてや、もういい年なのだ。
親をまだまだ安心させられない。
鈴木は喜んだのも束の間、もっと頑張らないといけないな、と心を入れ変えながら、帰路に就いたのであった。




