子供部屋おじさん、初めての戦闘
中は遺跡のような、ゴツゴツとした岩肌の床と壁、天井が広々と広がる空間であった。
不思議と山中にいるような空気感で、地下の室内だというのにジメジメした感じはない。
そしてダンジョン内にはいくつか、先駆者が設置し、そして職員や探索者が維持・管理するウォールライトが辺りを照らしていた。
このウォールライトのバッテリー交換や、点検をする仕事もある。
そういった仕事を協会から受注し、お金を稼ぐのも良いだろう。
だが、ダンジョンの維持管理に携わるには、現場での実績が必要。
なにはともあれ、ここで強くなり、前へ進むことが大前提だ。
鈴木がステータスオープン、と念じると鑑定結果と同じステータスが表示された。
「戦える……」
緊張しながら、携帯のアプリを起動。
先駆者がマッピングした地図を、協会のアプリによって確認することが出来る。
これで道に迷うことはない。
そしてAIを搭載したドローンを飛ばし、配信開始。
接続数は“0”の数字が表示されている。
「緊張してきたな……」
心臓が高鳴る。
5年間、子供部屋おじさんだった社会のゴミだったのだ。
自信は無くなり、なにをするにしても不安がよぎる。
そうして歩いていると――進行方向から、ずるずる、と地面を這う青いゼリー状のモンスターが現れた。
プニプニとしたボディ。
全長は1メートル。
第一階層に現れる初心者向けモンスター、スライムだ。
講座を思い出す。
スライムは跳ねて攻撃してくるが、それほど危険ではないという。
きちんと見て動けば回避できるし、当たったとしても、ステータス持ちならば耐えられるという。
とはいえ、油断はするなとも、言われている。
実際、今まで生きていて敵から攻撃される、なんてシチュエーションになったことがない。
例え弱くても、目の前の生き物が敵対しているというだけで、恐怖心が湧く。
「うわっ、きた」
スライムが跳ねて、体当たりをしてくる。
ボールが突然バウンドしたかのような、中々の勢いだ。
両者の距離はまだ開いていたが、一気に詰めてくる速度。
(子供の頃のドッチボールを思い出すな)
想定よりもずっと遅く見えて、冷静になってきた。
しっかりと動きを見て、左へ飛んで回避。
べちゃ、とスライムが地面へ着地した。
その隙をついて、鈴木が前へ出て棍棒を振り下ろす。
どすん、と重たい一撃がスライムへ命中した。
しかし見た目とは裏腹に、水面を感じさせる硬い感触。
スライムはくじけず、もう一度飛んできた。
「っ、高ステータスでそこそこの武器でも、さすがに一発は無理か」
楽な狩りを望んでいたが、そう簡単な話ではないらしい。
もう一発棍棒を振り下ろすと、今度こそスライムが倒され、ぐて~~~とゼリー状の体が地面に伸びる。
そしてその体が消えていくと、紫色の魔石が残った。
これが人類の新エネルギーとなり、人類を豊にした。
お金になる魔石を拾い上げて、リュックの中へと入れる。
「ふぅ……倒せたか」
一安心した鈴木は、ゆっくりと息を吐いた。
5年ぶりの労働による達成感は、彼の体に深く染みた。




