子供部屋おじさん、元カノと約束する
話をしていて、そして距離を置いてくれたとはいえ、連絡をくれた真由美の行動などで、まだ好意を抱いてくれている、という可能性は脳裏をよぎってはいた。
ただ、実際、信じられないという思いもある。
なにせ5年という歳月だ。
それにどう考えても、鈴木と真由美では釣り合っていない。
真由美は若く、美人で仕事も話を聞く限りではもう将来は安定している。
未来の明るい会社員だ。
年齢が30を超えたとはいえ、結婚相手は探せばいるだろう。
対して、鈴木は社会復帰したての40歳男性。
仕事は、成果が出始めているとはいえ、駆け出しで将来の見えづらい仕事、探索者だ。
お世辞にも、優良物件とは言い難い。
むしろ誰が相手をしてくれるんだ、というレベルである。
貯金だって400万程度。資産なんてものもない。
正直、自信がなかった。
「本当に良いのか? 他に良い人とか、いないのか」
「……ふーん。私が他の人と付き合っても、いいんだ」
ぷいっ、と真由美はそっぽを向いてしまう。
良くはない。良くはないが、起きている出来事に対して、己という存在があまりにも見合っていないのだ。
真由美に対しての好意は残っているし、自分にはもったいないくらいの人だと思っている。
だからこそ、すぐに前向きな返事というのは、出来なかった。
真由美ははあ、とため息をついた。
「それと。もしもなにか疑っているなら、久しぶりの私の部屋に来てよ。そうしたらわかるでしょ? ちょっと心外だけど……」
「いや、そういうわけじゃないが……今の俺じゃ、真由美と釣り合っていないからな。だから、もう少し待ってくれないか」
「えー。また待つのー?」
「うぐっ。まあ、そういうことになる」
「もう~。しょうがないなぁ。亮太さん、また連絡ちょうだいよね」
「ああ。また一緒に、ごはんを食べにいこう」
「うん!」
真由美は上機嫌そうに、笑みを浮かべてくれた。
(ふう。社会復帰だけじゃなく、真由美のためにも頑張らないとな……)
ハードルは高くなってしまったが、不思議と気分は良くなった。
なにもしないで子供部屋に引きこもっていた時とは、比べ物にならないくらいに、未来に対してワクワクしている。
「ふふふ、亮太さん、なんだかんだ変わってないよ」
「? そうか?」
「視線。私の胸をちらちら見ている。おっきいの好きだもんね~」
「っ!? な、なにを」
「ちゃんと私、サイズ維持出来ているよ~。カップ数覚えているでしょ?」
「ばばばば、バカなことを言うな。俺はもう40なんだ。そんなことでいちいち盛り上がらないぞ。こんな年にもなって、おっぱいがどうのなんて、情けない。落ち着く年齢なんだ」
「へ~。そうなんだ~。じゃ、もう興味ないんだね~。巨乳好き卒業したんだね~」
「そ、そうだ」
不安そうだった先ほどとは違い、動揺する鈴木を見て、真由美は徐々に自信を取り戻したようだ。
使えるものは、使っていきそうな姿勢である。




