子供部屋おじさん、元カノと再会する
カフェで待ち合わせをすることになった。
木の床に木のテーブルと、落ち着いた雰囲気のお店だ。
先に席へ座っていた真由美は、鈴木の姿を見るなり立ち上がった。
「りょ、亮太さん……!」
「や、やあ、久しぶり」
真由美はスーツ姿で、バリバリのOLといった雰囲気である。
肩の辺りまで伸びた黒髪。白い肌。耳には真珠のピアス。モデルのようなスタイルの良さに、大人な雰囲気がありながらも、その顔立ちは可愛らしい。
(まだ真由美は、32歳か……)
まだまだ美しく可愛らしい真由美の姿に、年の差を感じた。
対面の席へ鈴木が座り、真由美も座る。
そして真由美は、ううう、と涙を流した。
「よ、よかったよぉ。五年ぶりにやっと会えたぁ。ぐすっ、うわああああんっ」
「っ!?」
まさか泣かれるとは思わなかったので、鈴木はあたふたした。
水を置きに来た、若い女の子の店員がちらりと見てくる。
端から見たら、若い女の子を泣かせたおっさんに見えているのかもしれない。
(なんだか、これでは俺が悪い男のようだ。いや、悪いことをしたのは事実だが、これは少し誤解を生む……)
しかし上手くなだめる方法も見つからず、謝って、時が過ぎるのを待つしかなかった。
「ぐすっ……ごめんなさい、つい、泣いちゃいました。嬉しくって……」
「そ、そうか。それは光栄だ。こんな俺と、会って嬉しいだなんてなぁ」
「こんな俺、だなんて言わないでよ……私はずっと待ってたんだから……」
「ごめんな……って、俺はさっきから謝ってばかりだな……」
「えへへ、亮太さんはダメ男だね~。私が側にいてあげないと~」
「お、おう」
「なにか頼もうよ。お腹空いてない?」
ここへ来る前に実家へ連絡したところ、外で食べても大丈夫と言われたので、鈴木はこくりと頷いた。
「ああ。なにか食べよう」
メニューを見ると、真由美はハヤシライスがおススメだと言ったので、それを頼むことにした。
店員を呼び出し、ハヤシライスとデザートにコーヒーゼリーを頼んだ。真由美も全く同じものを注文していた。
そうして、注文通りにメニューが2人の元へ運ばれてくる。
ハヤシライスはデミグラスソース特有の濃厚で深みのある香りがし、コーヒーゼリーはブロック状にカットされた黒いゼリーに、たっぷりの白いミルクと、中央に丸いバニラアイスとシロップがかけられている。
どちらも美味しかったが、なによりも真由美と久々に過ごす夕食の時間というのが、嬉しかった。
近況を報告しあうだけの会話だったのに、どれもが特別な言葉のように思えた。
昔、付き合っていた時とはさすがに関係性が違うものの、幸せという点においては変わらない。
食事を終えて、そろそろ会計しようかという頃に、真由美はじっと鈴木を見つめた。
「な、なんだ?」
「えっと、その……」
真由美はなにかを言いたそうに、顔を赤くした。
そして――意を決して、その口を開く。
「私と……また、付き合ってくれないかなって。ダメ?」




