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40歳子供部屋おじさん、社会復帰のためにダンジョンへ入る  作者: 音有五角


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子供部屋おじさん、昔を思い出す

 会社がつぶれて、職を失ってからの、最初の一か月は特にひどかった。

 起きることすらも億劫で、一日の大半をベッドの上で寝て過ごした。

 元彼女――九条 真由美からの連絡量は、当初凄まじかった。


『亮太さんなら、すぐになんとかなるよ! 大丈夫だからね!』


「ああ……」


 電話やショートメッセージで、基本的に励まされていた。

 真由美はというと、すぐに再就職を決めていた。

 うつ状態の鈴木としては、そんな彼女が眩しくてしょうがなかった。

 もうあんな風に、エネルギッシュにはなれないと思った。

 励ましのメッセージも、寄せられる期待や信頼も、つい、重いとプレッシャーを感じるようにもなった。

 それがどんなに残酷で、ひどいことかもわかった上で、真由美と距離を置いた。

 それでも真由美は、ずっと優しかった。

 一度だって、鈴木を悪く言うことはなかったのだ。


『――ずっと待ってるからね、亮太さん』



☆



(我ながらひどいな……なんで真由美のような彼女が出来たのか、不思議なくらいだ)


 朝。夢で真由美のことを思い出し、改めて自己嫌悪に陥った。

 起き上がり、携帯を手に取る。

 とはいっても、被害者は真由美だ。

 鈴木もいつまでも未練がましく、別れようだとか、そういった話は一切していなかった。

 無論、そうは言っても自然消滅ではあるのだろうが、とは考えている。


(今までのこと、ちゃんと謝った方がいいのだろう……だが、なんて言って切り出せばいいのか。そもそも、謝りたいだなんて、それもまた俺の勝手なエゴだしな)


 携帯を手にベッドに腰かけ、意味もなく画面をグルグルといじりまわす。

 自分から連絡を送ることは、5年もやっていない。

 やっぱり変に思われても、きちんと謝って、少し前を向き始めたことを、報告しようと考えた。


『――久しぶり。最近、探索者を始めて、やっと少しずつ社会復帰をし始めたんだ。心配かけて、ごめん。あと、ありがとう』


 そんなメッセージを送った。

 送ってからすぐに、鈴木は落ち着かなくなった。

 自分から距離をずっと置いておいて、いざコミュニケーションをとろうとすると、全身に鳥肌が立つ。


(いや、なにをやっているんだ、俺は……)


 今更彼氏面出来る立場でもない。

 それなのに、どこか期待をしている自分がいた。

 一方で、自分のような人間じゃ不相応だと葛藤する心や、都合が良すぎるだろと葛藤するところもある。

 その心境は複雑であった。


(いかん。良い年して、なにをしているんだ。真由美のことばかり考えている……体を動かそう)


 鈴木はダンジョンへ出かける準備を始めた。

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