子供部屋おじさん、カニを狩る
赤い甲羅に8本の脚。
左右から伸びる両腕には、鋭いハサミが光る。
地上のカニをそのままデカくしたような見た目だ。
しかし油断をしたら、大ケガどころか欠損もありえるモンスターだ。
それほどまでに、このカニのハサミは鋭くパワーがある。
腕が切り取られる地獄絵図を、配信で晒すなど色々と最悪すぎる事態だろう。
「ごぽぽぽぉ」
地球のカニには声帯がないが、こちらのカニにはあるようだ。
口から発せられたのは、泡が弾けるような音。
そして8つの脚を器用に回し、前進した。
『カニのくせに前進しやがって』
『意外と早い』
『大丈夫、おじさんならいける』
「まずはこれをくらってもらおうかな」
魔力を操作し、炎魔法を発動。
鈴木が伸ばした左腕の先に、魔法陣が展開した。
そこから勢いよく解き放たれる、2つの炎の玉。
カニは足を止め、口から水を吐き出した。
ぶしゃああああ! という音共に勢いのある水鉄砲を放ち、1つの炎の玉を打ち消す。
勢いよく蒸発して、爆発音が目の前で弾けた。
しかしもう1つの炎の玉が、カニへ被弾。
ごおおおおっ! という大きな音共に、カニが火に包まれた。
「ごぽぽぽぉ!?」
火だるまになったカニが、その場で悶える。
もがき苦しんでいたが、やがてばたりと床に倒れ、美味しく出来上がる――わけではなく、魔力となって消えていった。
『カニを一撃!?』
『マジかよ』
『魔法つんよ』
『おじさん大型新人すぎぃ』
『金の卵』
『魔法戦士かっこいい』
『ファイヤー! ファイヤー!』
『カニさん食べられないのね』
『残念ながら、ダンジョン産の食材は存在しないんだよなぁ』
『あんなにも美味しそうな見た目なのにね』
『カニ食いてぇ』
「……一撃で倒せた。よし」
残ったカニの魔石を、拾い上げる。
水鉄砲は実質水魔法のようなものなので、炎魔法はてっきり通用しないかと思っていた。
だが、思っていた以上にこちらの魔力が高いようだ。
(それにしても、カニか……)
両親へ旅行でもプレゼントする時は、カニが美味しいホテルでも予約すればいいかもしれない。
最高の思い出になるだろう。
「先へ行けそうなので、進みます」
ともあれ、親孝行にも自立にも金は必要。
鈴木はテンポよく、歩みを進めていった。




