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40歳子供部屋おじさん、社会復帰のためにダンジョンへ入る  作者: 音有五角


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子供部屋おじさん、カニを狩る

 赤い甲羅に8本の脚。

 左右から伸びる両腕には、鋭いハサミが光る。

 地上のカニをそのままデカくしたような見た目だ。

 しかし油断をしたら、大ケガどころか欠損もありえるモンスターだ。

 それほどまでに、このカニのハサミは鋭くパワーがある。

 腕が切り取られる地獄絵図を、配信で晒すなど色々と最悪すぎる事態だろう。


「ごぽぽぽぉ」


 地球のカニには声帯がないが、こちらのカニにはあるようだ。

 口から発せられたのは、泡が弾けるような音。

 そして8つの脚を器用に回し、前進した。


『カニのくせに前進しやがって』


『意外と早い』


『大丈夫、おじさんならいける』


「まずはこれをくらってもらおうかな」


 魔力を操作し、炎魔法を発動。

 鈴木が伸ばした左腕の先に、魔法陣が展開した。

 そこから勢いよく解き放たれる、2つの炎の玉。

 カニは足を止め、口から水を吐き出した。

 ぶしゃああああ! という音共に勢いのある水鉄砲を放ち、1つの炎の玉を打ち消す。

 勢いよく蒸発して、爆発音が目の前で弾けた。

 しかしもう1つの炎の玉が、カニへ被弾。

 ごおおおおっ! という大きな音共に、カニが火に包まれた。


「ごぽぽぽぉ!?」


 火だるまになったカニが、その場で悶える。

 もがき苦しんでいたが、やがてばたりと床に倒れ、美味しく出来上がる――わけではなく、魔力となって消えていった。


『カニを一撃!?』


『マジかよ』


『魔法つんよ』


『おじさん大型新人すぎぃ』


『金の卵』


『魔法戦士かっこいい』


『ファイヤー! ファイヤー!』


『カニさん食べられないのね』


『残念ながら、ダンジョン産の食材は存在しないんだよなぁ』


『あんなにも美味しそうな見た目なのにね』


『カニ食いてぇ』


「……一撃で倒せた。よし」


 残ったカニの魔石を、拾い上げる。

 水鉄砲は実質水魔法のようなものなので、炎魔法はてっきり通用しないかと思っていた。

 だが、思っていた以上にこちらの魔力が高いようだ。


(それにしても、カニか……)


 両親へ旅行でもプレゼントする時は、カニが美味しいホテルでも予約すればいいかもしれない。

 最高の思い出になるだろう。


「先へ行けそうなので、進みます」


 ともあれ、親孝行にも自立にも金は必要。

 鈴木はテンポよく、歩みを進めていった。

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