第9話 筆記試験3
第6問からは記述問題だ。
パッと見、長い文章だし大問の中で問題数もそれなりにあった。
だから重そうな問題ばかりなんだろうな、と思っていた。
大問6は水魔法の魔力消費量に関する問題だった。
基本的な水魔法を使う時の魔力消費量を答えさせて、そこから上級水魔法『積乱豪雨』を維持することで、どのくらいの魔力を消費すれば、王都周辺を冠水させることができるか。
それを概算させる問題だった。
物騒な設定だし、概算するには6ページにもわたる魔力消費量の表を使う必要があった。
——有効数字6桁くらいあるな……これを手計算でしなきゃいけないのは無理がある。
どう計算するか、と表を眺めているとふとあることに気が付いた。
「……これ、ある関数に収束するな」
試しに表から隣り合う値の差をいくつか計算してみる。するとその差から法則性が見えてきた。
「それなら師匠に教わった微分方程式を使えるな……」
その表から魔力消費量に関する方程式を書き下した。
これを使えば、魔力消費量を簡単に求めることができる。
僕はさっそく解答用紙に記入し始める。
「……思ったよりも綺麗な数値が出たな」
ものの数分で解くことができた。
一応表を使って検算してみるが、合っていそうだ。
「なら次の問題だ」
このペースでやれば見直しを含めても試験終了までかなり余裕がありそうだ。
僕はさっそく次の問題にとりかかった。
大問7は上級火魔法と上級氷魔法を同じ条件で発動した結果をそれぞれ求めさせる問題だった。
これも一見難しそうに見えた。
だが、よくよく考えてみると、単純なカルノーサイクルの問題だ。
熱力学の法則を駆使すれば、全然問題なく計算できる。
「なんだ。どれも基本の組み合わせじゃないか」
師匠が言っていたことは本当だった。
基礎的な事項さえ押さえておけば、決して太刀打ちできない問題じゃない。
蓋を開ければ僕がただビビっていただけだ。
大問8も同じようにマクスウェル方程式から導ける電撃魔法の問題。
大問9は10ページにもわたる詠唱が書かれていて、この詠唱がどのような効果を発動させる魔法か答えさせる問題だったが、これも詠唱を分解していけば基本の組み合わせだった。
確か師匠も言っていたっけ?
詠唱はぷろぐらみんぐ? みたいなものだって。
「よし。とりあえず大問9までは解けたぞ」
会場にある時計を見ると、昼休憩明けから再開してまだ2時間も経っていなかった。
難関だとは聞いていたが、案外、簡単だったな。
いや、うぬぼれてはいけない。
僕が解けるんだ。
塾に通っているような人達は皆、簡単に解けているに違いない。
気合を入れ直して、僕は冊子の最後のページを捲り大問10を見た。
『最上級火炎魔法——獄炎の天柱の魔法陣を描け』
………………覚えてねー。
僕は机に突っ伏した。




