第8話 筆記試験2
試験問題は全部で10問。
パッと全体を見た感じ、大問1~5が小問集合で、残りが記述問題だ。
小問集合の方は、受付で聞いた通り、1~3が歴史や文化などの教養問題。4と5が魔法に関する基礎知識という感じだった。
どれも師匠に、一番初めに叩きこまれた基礎的な知識ばかりで、解くのに苦労することはない。
ただ量が多すぎる。
おそらくこの5問だけで昼までかかってしまうだろう。
記述問題の方は、これまた骨がありそうな問題ばかり。
1問1問、かなり重そうだ。
とりあえず午前中は大問1~5に集中することにしよう。
そう考えて、僕は午前いっぱい小問集合に取り組んだ。
「——だいたい埋まったかな……」
見直しも含めて大問5の最後まで答えが埋まった。
周りを見渡すと、まだガリガリとペンが動いている音が聞こえる。
正午にはなっていないが、キリが良いのでお昼を取ろうかな。
試験時間中はお昼休憩として1時間だけ席を立っていいことになっている。
どの時間に離れていいかは決まっていない。
自由に会場を離れていいのだ。
合格しようと意気込んでいる人は皆、正午までギリギリ問題を解くつもりなのだろう。
大問6とか7とかに差し掛かっている人もいるに違いない。
午後に解く問題をできるだけ少なくしたいと思っているはずだ。
だったら今、お昼を取った方が食堂が混まなくて済むかもしれない。
そういうわけで、僕は手を挙げた。
「どうした?」
すぐにファウラー先生が来た。
「お昼休憩を取ろうと思いまして」
「……もう取るのか?」
「え? あ、はい。とりあえず大問5まではできましたので」
「! この時間で? ふん。なるほどな。やっぱり俺の勘は当たるかもしれないな」
ファウラー先生は驚いて目を丸くするが、すぐにニヤリと不敵な笑みを見せた。
「いいぞ。1時間だ」
そう言うとファウラー先生は僕の冊子に手を触れた。
すると冊子はひとりでに閉じて、また開かなくなってしまった。
「一応言っておくが、1時間以内に戻らなかった場合、冊子は燃えるからな。その時点でお前の試験は終了。解答用紙だけ回収する」
「はい。わかりました」
これも要項に書かれていた通りだ。
「行ってこい」
ファウラー先生がそう言うのと同時に僕は席を立った。
★★★
1時間後。
お昼ご飯を済ませて、試験会場に戻ると、席はまばらにしか埋まっていなかった。
だいたいの人が今ちょうどお昼を取っているのだろう。
僕が食堂を出たタイミングで人で溢れかえっていたもんな。
狙い通り、空いている時間にゆっくりご飯を食べられてよかった。
自分の席に戻り、冊子に手を触れると魔法が解除されたような感覚を覚えた。
これで急に燃え出すことはないだろう。
と考えていると、前のほうでいきなり冊子が燃え出した。
「あぁ……!」
会場の後ろにある入り口から悲鳴が聞こえた。
ファンタジアのローブを着た少年が、慌てて前方に走り出しているのが見えた。
「消えろ……! 消えろ……!」
ローブを脱ぎ、それで冊子についた火を消そうとしていたが、なかなか消えない。
なす術なく冊子は燃え尽きてしまった。
「……あぁ……そんな……」
「残念だが、君の第1次試験は以上だ。解答用紙を回収する」
ファウラー先生が近づいて、そう言った。
「そんな……なんとかなりませんか!? 食堂から出る時に人に押されて、ちょっと遅れただけなんです……! まだ大問3までしか解けていないんです!」
「残念だが、例外は認められない」
少年は床に膝をついて項垂れてしまった。
その少年の肩を別の先生が優しく抱き、会場の外へと連れていってしまった。
可哀想に。僕のあとに食堂を出たのかな。
もしそうなら受験生で、特に入口が溢れかえっていたから、出るのに時間がかかっただろう。
僕もタイミングが悪かったら、あの少年のようになっていたかもしれない。
僕は記念受験だから出来るなら代わってあげたいが、ルール上、そういうことも許されないだろう。
気を取り直して、冊子を開いた。
大問6からだ。問題文に集中する。
だが——。
「——ん? なんだこれ?」




