第13話 実技試験1
「第1次試験通過した受験生は受験票を持ってこちらにお集まりください」
筆記試験の合格発表を確認して、しばらく経った後。
王立魔法学園の教員っぽい人が僕達に向かって呼び掛けた。
そこには何人かの先生達が並んでいた。
その中には昨日、試験監督だったフリード・ファウラー先生や受付にいた女の先生もいた。
「早速ですが、これから第2次試験——実技試験を開始します。
受験番号を見せてからここを通過してください」
その指示に従って、受験生はぞろぞろと先生達に受験票を見せに行った。
すぐに実技試験が始まるのか。
確かに要項にも実技試験が今日だと書かれていたけど、こんなに早く始まるとは思わなかった。
ポケットに入っている受験票を握りしめて、僕もファウラー先生の元に向かった。
「あの……」
「お、よう。天才坊主!」
ファウラー先生は僕を見るや否や、ニヤリと笑みを浮かべた。
「天才……? あ、いや。あのちょっと聞いてもいいですか?」
「どうした?」
「あの掲示板に僕の点数が載っていないんですけど……」
「あぁ? お前、そんな細かいこと気にするのか?」
ファウラー先生は訝しげな顔で僕を睨む。
「そりゃ気になりますよ。試験なんですから。おまけに僕だけ『????』だし」
他の人も点数が書かれていなければ、ここまで気にしなかったかもしれない。
けど自分だけ点数が書かれていなければ、嫌でも気になってしまう。
「はぁ。そうか?」
ファウラー先生は何故かつまらなさそうにため息を吐く。
「もしかして僕、名前とか書き忘れました?」
「ぷっ……はっはっはっ! そんなんじゃねぇよ!」
心配になってそう聞くと、ファウラー先生は口を大きく開けて大笑いする。
「坊主の名前は解答用紙にちゃんと書かれていた。点数なんて細かいもの気にしても仕方ないんだ。
とにかく坊主は合格だ。ほら。さっさと行け」
ファウラー先生はシッシと手を振った。
なんだか前にも似たようにあしらわれたな。
ファウラー先生に抗議の視線を送るが、もう彼は別の受験生の対応を始めていた。
仕方がない。
僕はふぅと息を吐くと、実技試験の会場へと足を進めた。
★★★
実技試験は、闘技場のような会場で行われるようだった。
会場に向かう途中の案内では、受験番号の前半と後半で行き先が違っていた。
おそらくここと同じくらいの大きさの会場がもうひとつあるのだろう。
見渡すと、だいたい300人くらいいる。
ってことは合格者は600~700人前後かな?
僕ら受験生は観客席に集められた。
闘技場の中央を見ると、似たような魔法陣が10個、並んで設置されていた。
「……チッ。今年はハズレか……」
後ろの方でファンタジアのローブを着た少年が舌打ちをしたのが聞こえた。
——ハズレ?
「あぁ。そのようだな。確か10年で1回出たきりだろ?」
「対策なんてほとんどしてねぇよ。しかもあれ、1回勝負な上、得点も全然稼げないらしい。あれじゃ差がつかねぇよ」
どうやらファンタジア生はもうこの試験の内容を把握しているようだ。
さすがは名門塾。
しかし得点が稼げないのか。じゃあ一体、学園はどうやって合格点を決めるつもりなんだろう。
「——お前らはな」
そこで舌打ちをした少年が鼻で笑った。
「俺がハズレと言ったのは、どう頑張っても満点を取れないからだ。どうせ1番は俺だからな」
「さすがファンタジアのエース。期待してるぜ」
なるほど。得点は稼げなくても順位は決められるのか。
それなら上位何名かが合格、ってことになるのかな。
というよりもファンタジアのエースか。
それとなく後ろを覗くと、ファンタジアのローブを着た、身なりの良い少年がいた。
不敵な笑みを浮かべて、会場を見下ろしていた。
あの子が今年の首席候補。たぶんすごい実力なんだろうな。
それからしばらくして、受験生が全員集まった頃。
「——皆様! 静粛に!!」
中央に試験監督と思しき教員と銀髪の女の子が立った。
ってあれ、もしかして……。
「マギー!?」
マルギット・ウィグナーだった。
どうしてこんなところに?
と思っていると、マギーが僕に気が付いたようで手を振ってくれた。
僕も軽く会釈しておいた。
「ふん……マルギットか」
すると、後ろのファンタジア生達がまたひそひそと話し始めた。
「去年の次席だっけ? 塾のやり方を全部無視して首席を取り逃がした、ファンタジアの裏切り者だろ?」
「おかげで講師陣の面目は丸潰れ。俺達までとばっちりを食らったな」
「よりによって、なんであいつがここにいるんだよ……」
「ハズレの試験に、あいつまで。今年の俺達ファンタジア生にとっては、とんだ疫病神だな」
「ま、当然俺はあいつを超えるけどな」
なんと。マギーはファンタジア生だったのか。
しかも去年の次席というと、ひとつ上か。
しかし随分な嫌われようだな。
首席じゃないにしろ次席を取ったのなら、ファンタジアとしては喜ばしいはずなのに。
「今回の実技試験の内容を説明します! この試験は私——アーネスト・トムソンが務めます!」
試験監督——トムソン先生が叫んだ。
「マルギットさん、準備を」
「はい」
こくりと頷くとマギーはひとつの魔法陣の端に手を触れる。
すると、魔法陣が青白く光り始め、次の瞬間、中心から一気に冷気が迸り——巨大な氷山が出現した。
……で、でかい。
観客席の高さにまで届きそうなほどの氷の塊を、僕はただ唖然と見つめていた。




