第11話 筆記試験終了
筆記試験が終了し、宿に戻ってすぐ。
僕は自分のベッドに倒れ込んだ。
正直、撃沈だ。
さすがは王立魔法学園。国内一の難関校だ。
解答は全て埋められたが、最後の魔法陣の問題のせいで、残りの時間を全てそこに費やしてしまった。
午前中の小問集合は午前のうちに見直しをしたから問題ないだろう。
けれど午後からの問題——大問6以降は見直しができなかった。
もしかしたら全て間違えているかもしれない。
それに朝から午後まで問題を解き続けるのはさすがに体力を使う。
なんとなく頭が熱を帯びている気がするし、もう何も考えたくない。
——それなのに。あの魔法陣め……。
目を瞑ると試験で描いた魔法陣が浮かび上がってしまう。
きっとあれが最適解ではあるんだけど、想定解とは全く違うものになっているだろうから間違っていると思う。
確か明日は第2次試験の実技試験だ。
筆記試験に合格した人のみが実技試験に挑める。
残念だけど、僕は落ちただろうな。
僕の試験はここまでだ。
そこまで考えたところで、扉が急に開いた。
「あら。おかえりなさい。ポール。帰ってたの?」
母さんだった。
「おぉ。帰ってたか。ポール!」
母さんの後ろからは酒の臭いをプンプンさせた父さんが顔を出した。
二日酔いはどこへやら。
もうすっかり出来上がっている。
「ただいま~母さん、父さん……」
「どうしたのよ? そんな倒れて……は! まさか……試験の出来が?」
「んん……まぁ撃沈」
「あぁ……ほら。だから言ったじゃないの!」
「イッテェ!」
父さんの背中に母さんの平手が一発。
「あんな不相応な難関校の試験なんて無理に受けさせて。やっぱりポール、落ち込んじゃったじゃないの!」
「いや。でも仕方ないだろう! ラルフさんの提案なんだから」
「ハーゼン先生もハーゼン先生よ! ポールのことなんだと思ってるのか!」
なんだかよくわからないけれど、母さん、ご立腹みたいだ。
「ほら。あんた、何か言ってあげな!」
「えぇ……? 俺ぇ? 俺も試験なんてよくわからないんだけど……」
父さんは後頭部の髪をガシガシと掻いて、僕の方に近づいた。
「あぁ……なんだ。受かりそうか?」
「たぶん全然。落ちたと思う」
「バカ! そんなのこの子の態度を見てたらわかるでしょ!」
母さんがまた父さんを叱る。
いや。でも母さんもちょっと失礼じゃないか?
「いやぁ。だってぇ……」
父さんも気まずそうにしばらく頭を掻いていた。
だがやがて僕の様子に何か気付き、ポンと優しく頭に手を置いた。
「でも……楽しかったんだろ?」
「もちろん! 楽しかったよ!」
僕はバッと起き上がって父さんを見た。
「師匠が言うように全部基本の組み合わせだったんだ。でも全て論理的に組み立てないとダメで、ほんとパズルみたいでさ!
あんな刺激的な問題があるなんて今まで知らなかったや。
それで最後の魔法陣の問題も——!」
僕は捲し立てるように試験の内容を父さん達に話した。
「ははは! そうかそうか。俺は何ひとつわからないけど、ポールが楽しそうでよかったよ。さすがラルフさんの愛弟子だ」
父さんも満足そうに笑った。
母さんも呆れたように、けれどほっと安心したような顔で笑っていた。
「まぁこういう時はぱーっと遊ぶに限る! 収穫祭もまだ続くんだ」
「あ! そうだった……」
そうだ。収穫祭があったんだった。
試験問題のことで頭がいっぱいになっていたからすっかり忘れていた。
師匠にもお土産を買わなきゃいけないし。
「もう夜だけど今からでも遊びに行くか?」
「! うん!」
父さんの提案に僕は大きく頷いた。




