↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
84/97

リ

鈴の音ほど、記憶を呼び起こすものはない。


『りん。』


風鈴が鳴るたび、彼は彼女を思い出す。


名前は、凛。


誰にでも優しくて、


少し不器用で、


夏の日差しが、誰よりも似合う人だった。


『また来年も、この音を一緒に聞こうね。』


何気ない約束。


人はそんな一言を、永遠の約束だと思い込む。


夏は巡る。


風は吹く。


風鈴は今年も変わらず鳴いている。


『りん……』


澄んだ音だけが、青い空へ溶けていく。


彼は目を閉じ、小さく笑う。


『また来年も。』


その言葉を口にするたび、


自分でも分かっていた。


もう、その約束は叶わないと。


『辛いな。』


『ほんと辛いな。』


『また会いたいな。』


『会えないな。』


その独り言を聞く者は、もう誰もいない。


私は、その風鈴の音を覚えている。


人は、大切な人を失っても季節は止まらない。


夏はまた来る。


風もまた吹く。


けれど、その音を一緒に聞くはずだった人だけは、


二度と隣へ戻ってこない。


だから風鈴は、今日も変わらず鳴り続ける。


約束だけを、この世界へ置き去りにしたまま。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。