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ラ
楽に終われる話など、ほとんどない。
終わりが見えたと思った瞬間こそ、人はいちばん油断する。
学校の非常階段。
下りても。
下りても。
一階には着かない。
ただ、同じ景色だけが繰り返される。
『コツ……』
一段上から聞こえる足音。
振り返る。
誰もいない。
見えないからといって、いないとは限らない。
彼は無視して下り続けた。
一周。
二周。
三周。
五周目。
壁に赤い文字が浮かぶ。
『らすと』
終わる。
助かる。
そう思った。
その瞬間だった。
『コツ。』
『コツ。』
『コツ。』
今度は止まらない。
一段。
また一段。
確実に距離が縮まってくる。
彼は階段を駆け下りた。
出口の扉。
勢いよく開け放つ。
外の光を期待していた。
だが、その先にあったのは。
また同じ階段。
静まり返った、終わらない階段。
壁の文字だけが、ゆっくりと姿を変えていく。
『らすとじゃなかったね。』
私は、その文字を見て笑った。
人は「最後」という言葉を信じたがる。
だからこそ、
終わりが来ないことが、
いちばん残酷なのだから。




