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ろ
老婆は、誰にも看取られることなく病室で静かに息を引き取った。
心電図の音が止まり、部屋は静寂に包まれる。
看護師が白い布を掛け、部屋を後にした。
深夜。
誰もいない病室から、
「カタン……」
と、点滴台が揺れる音がした。
続いて、
「コツ……コツ……」
裸足で床を歩くような足音。
警備員が扉を開けると、ベッドには誰もいない。
白い布だけが床に落ちていた。
廊下の奥から、
「コツ……コツ……」
足音はゆっくり遠ざかっていく。
翌朝、病院の入口には泥だらけの足跡が一列だけ残っていた。
その足跡は、外へ向かうものではなく、
病院の中へ続いていた。




