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82/97

ろ

老婆は、誰にも看取られることなく病室で静かに息を引き取った。


心電図の音が止まり、部屋は静寂に包まれる。


看護師が白い布を掛け、部屋を後にした。


深夜。


誰もいない病室から、


「カタン……」


と、点滴台が揺れる音がした。


続いて、


「コツ……コツ……」


裸足で床を歩くような足音。


警備員が扉を開けると、ベッドには誰もいない。


白い布だけが床に落ちていた。


廊下の奥から、


「コツ……コツ……」


足音はゆっくり遠ざかっていく。


翌朝、病院の入口には泥だらけの足跡が一列だけ残っていた。


その足跡は、外へ向かうものではなく、


病院の中へ続いていた。

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