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人は、自分の名前を呼ばれると振り向く。
それが誰の声なのか、確かめるより先に。
夜の学校。
誰も使っていない放送室。
午前零時。
沈黙を裂くように校内放送が流れ始める。
『──よび出します。』
雑音の奥。
確かに、自分の名前が呼ばれた。
気味が悪くなり廊下へ出る。
教室はすべて真っ暗。
誰もいない。
それでも放送だけは続いている。
『……放送室まで来てください。』
『キィ……』
マイクをこする不快な音。
まるで誰かが、こちらの返事を待っているようだった。
彼は逃げた。
階段を駆け下りる。
その瞬間、放送は途切れた。
静寂。
助かった。
そう思って振り返る。
そこにあるはずのない放送室の扉。
赤いランプだけが静かに灯っている。
中から聞こえる声。
『遅かったね。』
その声は、他人ではない。
彼自身の声だった。
私は、その放送を最後まで聞いていた。
人は名前を呼ばれるから振り向くのではない。
「自分の声」で呼ばれたときだけ、
本当に逃げられなくなるのだから。




