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77/97

ヨ

人は、自分の名前を呼ばれると振り向く。


それが誰の声なのか、確かめるより先に。


夜の学校。


誰も使っていない放送室。


午前零時。


沈黙を裂くように校内放送が流れ始める。


『──よび出します。』


雑音の奥。


確かに、自分の名前が呼ばれた。


気味が悪くなり廊下へ出る。


教室はすべて真っ暗。


誰もいない。


それでも放送だけは続いている。


『……放送室まで来てください。』


『キィ……』


マイクをこする不快な音。


まるで誰かが、こちらの返事を待っているようだった。


彼は逃げた。


階段を駆け下りる。


その瞬間、放送は途切れた。


静寂。


助かった。


そう思って振り返る。


そこにあるはずのない放送室の扉。


挿絵(By みてみん)


赤いランプだけが静かに灯っている。


中から聞こえる声。


『遅かったね。』


その声は、他人ではない。


彼自身の声だった。


私は、その放送を最後まで聞いていた。


人は名前を呼ばれるから振り向くのではない。


「自分の声」で呼ばれたときだけ、


本当に逃げられなくなるのだから。

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