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ム

人は、『返事をするな』と言われるほど、返事をしたくなる。


だから忠告は、いつも遅い。


夜中の二時二十二分。


挿絵(By みてみん)


世界が最も静かになる時間。


どこからともなく、小さな声が聞こえる。


『……ねぇ。』


彼は布団をかぶる。


聞こえなかったことにした。


『ねぇ。』


『ねぇ。』


『ねぇ。』


声は一歩ずつ近づいてくる。


逃げ場を失ったように。


やがて耳元で止まり、


『聞こえてるよね?』


囁く。


彼は何も答えなかった。


それが正しいと教えられていたからだ。


長い沈黙。


そして、静寂。


助かった。


そう思った。


その瞬間。


スマートフォンが震える。


着信。


番号はない。


名前だけが表示されている。


『無視してくれて、ありがとう。』


その言葉を見た彼は、ようやく理解した。


返事をしなかったから助かったのではない。


返事をしなかったから、「こちら側」に選ばれなかっただけなのだと。


私は、その着信を知っている。


恐ろしいのは、名前を呼ぶ声ではない。


返事を待っている相手が、


最後には礼まで言ってくることなのだから。


挿絵(By みてみん)

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