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67/97

マ

炎は、音よりも速く人の景色を奪う。


最初は、遠くで何かが燃えているだけだった。


松の木の下。


小さな山あい。


赤い光が揺れている。


『〇〇が燃えている。』


その光景を見て、ほんの少しだけ胸が高鳴った。


初めて見る炎だった。


人は知らないものほど、美しいと思ってしまう。


けれど、その美しさは長く続かない。


炎は静かに大きくなり、


風を食べ、


木々をのみ込み、


景色そのものを赤く染めていく。


『怖い。』


そう気づいた頃には、もう遅かった。


『助けなきゃ。』


誰かの叫び。


挿絵(By みてみん)


崩れ落ちる〇〇。


積み木のように形を失っていく。


『……ちょっと、これはやばいな。』


誰かがそう呟いた。


だが、炎は返事をしない。


ただ燃え続けるだけだ。


山は、やがて一面の炎に包まれた。


挿絵(By みてみん)


静かになったあとには、風の音だけが残る。


私は、その景色を見届けていた。


炎は憎しみも慈悲も持たない。


すべてを同じ色に変えてしまう。


だから最後に聞こえた「ばいばい」は、


誰に向けられた言葉だったのか。


それを知っている者は、もう誰もいない。

挿絵(By みてみん)


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