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マ
炎は、音よりも速く人の景色を奪う。
最初は、遠くで何かが燃えているだけだった。
松の木の下。
小さな山あい。
赤い光が揺れている。
『〇〇が燃えている。』
その光景を見て、ほんの少しだけ胸が高鳴った。
初めて見る炎だった。
人は知らないものほど、美しいと思ってしまう。
けれど、その美しさは長く続かない。
炎は静かに大きくなり、
風を食べ、
木々をのみ込み、
景色そのものを赤く染めていく。
『怖い。』
そう気づいた頃には、もう遅かった。
『助けなきゃ。』
誰かの叫び。
崩れ落ちる〇〇。
積み木のように形を失っていく。
『……ちょっと、これはやばいな。』
誰かがそう呟いた。
だが、炎は返事をしない。
ただ燃え続けるだけだ。
山は、やがて一面の炎に包まれた。
静かになったあとには、風の音だけが残る。
私は、その景色を見届けていた。
炎は憎しみも慈悲も持たない。
すべてを同じ色に変えてしまう。
だから最後に聞こえた「ばいばい」は、
誰に向けられた言葉だったのか。
それを知っている者は、もう誰もいない。




